キミの次に愛してる

Motoki

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 ――ひやり。



 額の冷たい感触に、目が覚める。

 開いた視界の中へ、ひょっこりと義兄の顔が入ってきた。

「あ、起きた?」

「おはよう……ございます」

 状況を把握するのに、数分かかった。

「すみません、僕、寝込んでしまってたみたいで……」

 明るくなっている窓の外に目を向けて、「昨日は晩御飯食べれましたか?」と義兄に訊く。

「うん。大丈夫大丈夫」

 にっこり笑う裕文さんが、とっても怪しい。

 枕元に置いたスマホで、時間を確認した。



 ――まだ、5時半。



 今から用意したら、裕文さんに普段よりは栄養のある朝食が作れるだろう。

「ダメダメ。今日はゆっくり寝とかないと。俺だってお粥くらいなら作れるんだから」

 起き上がろうとした僕の両肩を掴んで、裕文さんがベッドに寝かしつけてくる。

 まるで子供みたいだ、と思った。

 そうして、裕文さんの手の感触に、眉を寄せる。



「どうしたの?」



 訊いてきた裕文さんの顔が、まともに見れない。

「いえ。あの……変な夢、見たみたいで……」

「……へぇ。どんな夢?」



 ――……言える訳がない。



 視線を逸らした僕に、裕文さんがベッドに肘を乗せて頬杖を付く。

 そうして、にっこりと笑った。

「ごめんね。――たぶんそれ、夢じゃないよ」

 目を見開いて固まった僕に、クスクスと笑う。



「じゃあ。お粥作ってくるから待ってて」

 立ち上がった裕文さんの口から、こほっ、と小さく咳が出た。

 目を剥いて見上げた僕に、口を押さえる。

「大丈夫大丈夫。俺って頑丈だから」

 それに風邪ひいたら看病してもらえるし、と笑って、部屋から出て行った。

 1度閉まったドアが開いて、裕文さんが顔を覗かせる。

「風邪ひかなかったら、ご褒美に呼んでくれるかなぁ。『裕文さん』って」

 悪戯っぽく笑って、出て行った。



「あぁ、僕……」

 どうしようー……と頭を抱える。



 姉さんごめんなさい――。



 心の中で謝る僕に、「ばかね」と笑う声が聞こえた気がした。




 都合が、いいだろうか。

 姉さんが、許してくれてると思うのは――。



 けれど。如月先輩の声と重なって、耳には優しい声が、聞こえていたんだ。



 ――ねぇ、姉さん。我儘で、勝手な、甘えた弟だけど。



 信じても、いいかな?

 これは、姉さんの声だって……。





             ――浩次。幸せになれ……。




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