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始まった食事会?は終始和やかに進む。
なんて事は絶対に無く和やかなのは表面上だけ。
何も知らない天使のような妹はにこやかに微笑んで、同じく微笑んでいるはずの王子は冷や汗が凄い、そんな王子を笑いを堪えながら見ている側近、そして無表情のその裏で王子が豆に悶えるのをほくそ笑む私。
「お姉様このパンとっても美味しいです!」
「そお?良かった!妹も美味しいと言ってくれていますからどんどん食べて下さいね、王子」
豆パンが入った籠を籠ごと王子に渡す。
「お2人(主に王子に対する嫌がらせ)の為に沢山作ったのでまだまだありますから」
「王子良かったですねぇ、いやーそれにしてもこのパン本当に美味しいですよ!」
「お城の美味しい食事を食べている方にお世辞でもそんな事言って貰えたら嬉しいですわ」
「いやいや、お世辞なんて!本当に美味しいですよ!この、豆が沢山入っている所がまたなんとも言えず美味しいですよ!ね、王子」
「あ、ああ……………」
豆パンをちぎってお上品に食べる王子…………ふっ分かっているわよ………少しでも豆の入っていない所を探しているんでしょう…………甘いわ!私が作った豆パンはどこを食べても豆に行き当たる全方位豆でカバーされた豆パンなのよ!
「このスープも美味しいですねぇ」
このスープも豆こそ見えないようにすり潰されているが緑が鮮やかな一目で豆のスープだと分かる逸品。
「ええ、枝豆をすり潰してミルクでのばしたポタージュなんですよ」
豆パンをスープで流し込もうとしていた王子は口の前でスプーンを止めた。
おいおい、まさか豆スープだと気付いていなかったの?
ふっ、残念だったわね。私に抜かりはないわスープだけ豆を使わないなんてそんな中途半端な事を私がするはずないでしょう。やるならとことん、これが私のモットーです。
王子はそっとスープの皿を遠ざけると次はオムライスに手を掛けた。
「…それは今日1番のおすすめですわ」
私は王子がスプーンで卵を破ったその瞬間にそう言った。
卵の黄色にトマトソースで赤く色付いたご飯とグリンピースの緑のコントラストが美しい。
しかしながら王子は中身を見るやスプーンを置いて立ち上がった。
「どうなさいました?王子」
私はさり気なく王子に近付くと私の可愛い妹に聞こえないぐらいの小さい声で囁く。
「大変不本意ながら…私の妹である可愛い可愛いマーガレットはいつもの猫を被った王子が憧れらしいのです………お優しい王子は妹の憧れを壊すような事……なさいませんよね?」
「どうなさったのですか?お姉様」
立ち上がった私達を見て妹が不思議そうにそう訪ねて来る。
「なんでも無いわ、王子は大好きな豆のフルコースにいたく感動なさって我が家のシェフに気持ちを伝えたいと仰って下さったのよ。本当にお優しい王子で私まで感動してしまったわ、ね?マーガレット」
「はい!本当に王子はお優しいです!」
そう言ったマーガレットの純新無垢な笑顔に王子は再び席に着き大人しく豆のフルコースを食べたのだった。
なんて事は絶対に無く和やかなのは表面上だけ。
何も知らない天使のような妹はにこやかに微笑んで、同じく微笑んでいるはずの王子は冷や汗が凄い、そんな王子を笑いを堪えながら見ている側近、そして無表情のその裏で王子が豆に悶えるのをほくそ笑む私。
「お姉様このパンとっても美味しいです!」
「そお?良かった!妹も美味しいと言ってくれていますからどんどん食べて下さいね、王子」
豆パンが入った籠を籠ごと王子に渡す。
「お2人(主に王子に対する嫌がらせ)の為に沢山作ったのでまだまだありますから」
「王子良かったですねぇ、いやーそれにしてもこのパン本当に美味しいですよ!」
「お城の美味しい食事を食べている方にお世辞でもそんな事言って貰えたら嬉しいですわ」
「いやいや、お世辞なんて!本当に美味しいですよ!この、豆が沢山入っている所がまたなんとも言えず美味しいですよ!ね、王子」
「あ、ああ……………」
豆パンをちぎってお上品に食べる王子…………ふっ分かっているわよ………少しでも豆の入っていない所を探しているんでしょう…………甘いわ!私が作った豆パンはどこを食べても豆に行き当たる全方位豆でカバーされた豆パンなのよ!
「このスープも美味しいですねぇ」
このスープも豆こそ見えないようにすり潰されているが緑が鮮やかな一目で豆のスープだと分かる逸品。
「ええ、枝豆をすり潰してミルクでのばしたポタージュなんですよ」
豆パンをスープで流し込もうとしていた王子は口の前でスプーンを止めた。
おいおい、まさか豆スープだと気付いていなかったの?
ふっ、残念だったわね。私に抜かりはないわスープだけ豆を使わないなんてそんな中途半端な事を私がするはずないでしょう。やるならとことん、これが私のモットーです。
王子はそっとスープの皿を遠ざけると次はオムライスに手を掛けた。
「…それは今日1番のおすすめですわ」
私は王子がスプーンで卵を破ったその瞬間にそう言った。
卵の黄色にトマトソースで赤く色付いたご飯とグリンピースの緑のコントラストが美しい。
しかしながら王子は中身を見るやスプーンを置いて立ち上がった。
「どうなさいました?王子」
私はさり気なく王子に近付くと私の可愛い妹に聞こえないぐらいの小さい声で囁く。
「大変不本意ながら…私の妹である可愛い可愛いマーガレットはいつもの猫を被った王子が憧れらしいのです………お優しい王子は妹の憧れを壊すような事……なさいませんよね?」
「どうなさったのですか?お姉様」
立ち上がった私達を見て妹が不思議そうにそう訪ねて来る。
「なんでも無いわ、王子は大好きな豆のフルコースにいたく感動なさって我が家のシェフに気持ちを伝えたいと仰って下さったのよ。本当にお優しい王子で私まで感動してしまったわ、ね?マーガレット」
「はい!本当に王子はお優しいです!」
そう言ったマーガレットの純新無垢な笑顔に王子は再び席に着き大人しく豆のフルコースを食べたのだった。
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