泡沫

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潤side

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何気ない会話を俺は愛結とたくさんした。

「終わったらカラオケ行きたい!」

酔った玲奈ちゃんがそう言って
行くことになった。

まだ、愛結といれることを嬉しく思う。

営業が終わると彼女はまたそわそわし始める。

「あの、伝票…」

そう言ってまた財布を出そうとするから

「要らないよ?貰うつもりない」

と言って彼女の頭に手をのせる

「でも…」

と彼女は聞き分けがなくて。

「来てほしいわけじゃないから。」

そう俺は言った。

来てほしいわけじゃない。金なんていらない。

カラオケに移動しようとしたとき

俺の側で

「潤くん無理しなくても…」

と心配そうにいう。

「え?無理なんてしてないよ?」

俺が無理して行こうとしてると思って
気を遣ったんだろう。

俺は背の小さい愛結の耳までかがんで

「だって、俺が一緒にいたいから」

そう言った。

それは嘘でもなく、偽りもない気持ち。

カラオケについてからも
愛結と俺は沢山お互いのことを話した。

愛結には姉弟がいて2番目だと。

そして、俺の2つ下で。

小学生の時の話とか。

俺にも弟と兄貴がいるけど

それぞれ違う生活だし。

俺だけが兄弟の中で、ポンコツということも
話したんだ。

だけど、過去の恋愛話はやっぱり聞きたくなくて俺も、過去の話をするのはやめた。

そんなこと話てるうちに

彼女が話さなくなったので気になって
見てみるとこくりこくりと寝ていて
俺の肩にもたれかかった。

「あれ?愛結?」

玲奈ちゃんがそれに気がつき起こそうとしたから

「シーッ」

って指を立てて笑った。

「なんか潤も歌え」

そう亜季さんに言われて

仕方なく、歌う。

彼女が俺の肩にもたれかかり寝ていて

それだけでも、凄く幸せな気持ちになった。

なんか、止まった感情が

溢れだそうとしていた。

お開きになり、玲奈ちゃんが
彼女に声をかける。

「ごめん!あたし…」

と、目をパチパチさせてそして
玲奈ちゃんと亜季さんと翔と咲花ちゃんが
立っていることと自分が置かれてる状況にパニックになってるのが面白くて笑ってしまった。

「いや、大丈夫だよ!」

そう言って俺は彼女の鞄を持ち、手を繋いだ。

小さい手を折れてしまいそうなこの手を
折れないようにぎゅっと繋いだ。

タクシーをそれぞれ捕まえ

三方向にわかれて乗ろうとすると

亜季さんに耳打ちで

「潤、愛結に手出すなよ」

そう言われて

凄い勢いで睨み付けておいた。

言われなくてもわかってる。

タクシーに乗ると
繋がれた手を彼女もはぎゅっと強く握り
下を向いていた。

なんか…あったのかな?

携帯みてから元気がない。

聞いていいものだかわからなくて
そのままにした。

タクシーを降りて

「ありがとう。」

と、彼女は言った。

でもなんか気になったから

「なんか疲れちゃった?」

そう言って彼女を覗き込む。

「え?」

「なんか、元気ないから。じゃあ、ゆっくり寝るんだよ…?」

そう言って彼女の頭へと手をやる。

だけど、俺のスーツを彼女は引っ張ってきた。

「ん?どうした?」

俺がそう言うと

「…あたし歌聞いてない…玲奈がうまかったって…。」

といいながら顔を真っ赤にしていた。

俺の心臓はうるさいぐらいに早くなり

ぎゅーっと掴まれる。

あー…もう…無理。

「…っそんなこと言われたらさ…」

そう言いながら彼女を抱き締めていた。

細いその華奢な身体を俺はぎゅっと抱き締めた。

「潤くん…?」

そう言って、彼女は俺を見上げる。

「ごめん、離せなくて。」

きっと、もう離してといいたかったんだろうけど、無理だった。

俺の腰に手をまわしてぎゅっと彼女はしてから

「…っ一緒にいたい…。」

と、俺の胸のなかで言った。


思考が止まる。

今…なんて?

「え?」

思わず声がでてしまった。

「あっ…ごめん!なにいってんだろう。」

そう言って視線をずらして俺から離れた

「か…帰るね。」

「いや、待って。俺も一緒にいたい」

彼女の腕を掴んでそう言った。

いや、もう真っ赤になってるの自分でわかるぐらい恥ずかしくて。

「俺の家くる?」

なんて言葉も、自制が効かないぐらい
すらすらとでてきてしまっていた。

「…っうん…」

彼女はそう言った。

手を繋ぎ、自分の家まで歩く。

頭のなかはもうぐちゃぐちゃで

部屋きたねぇのにどうしようとか、

自分ち呼んでなにする?とか

理性保てねぇただのスケベじゃんとか

落ち着け、俺。

そんなことと格闘しながら歩いていた。

俺は、彼女に既にひかれてて


気持ちは…好きだと自覚した。
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