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アナザールート その25 敗北

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僕は、鞭打ちによって、激痛、それと同じだけの快感を限界まで与えられえ続けて昏倒していた。

「ぅ・・・ぁ・・・」

吐息とともに、僅かな呻き声を漏らして、意識を取り戻した後も、しばらくはただぼんやりと視線を空中に漂わせていた。

虚な視線がゆっくりと焦点を結びはじめ、それと共に身体の感覚が•••鞭で打たれた肌の痛みと、媚薬のせいで泡立つ様に過敏になっている肌の感覚が段々と戻ってくる。

少しずつ戻ってくる身体と精神のピントが合い始めると、さっきから耳に入っているノイズ、何か聴き覚えのある音に意識が向いた。

そして、それが夕立の絶叫だということを認識した瞬間、僕は、僕たちがまだ地獄の責め苦から解放されていないことをわからせられた。

「ひぎィいいいいいい!!!ぁあああ゛あ゛あ゛あ゛がぁあああああああ!!!!!」

手足を鎖で拘束され、“X”字のポーズで空中磔にされた夕立が絶叫していた。

限界まで引き伸ばされた手足は、不規則なダンスを踊る様に無惨な痙攣を繰り返している。
華奢な腰から背中までのラインを折れそうになるまで反り返らせ、細い首がもげそうになるほど頭を左右に激しく振りたくると、腰まである金髪のウィッグの先端がワンテンポ遅れて空中に舞っていた。

僕が昏倒している間にどれ程の苦痛•••もしくは拷問に等しいほどの快楽を与えられていたのだろう。

夕立の大きな瞳からは大粒の涙をボロボロと流し続け、絶叫し続けて閉じることができない口元からは涎が溢れていた。

夕立は、男の子の部分を細い棒•••金属製の“尿道プラグ”で貫かれ、お尻にはバイブを捩じ込まれている。

その尿道プラグとバイブからは細い電気コードが伸びている。
それを一眼見れば夕立が何をされているのかを理解できた。
かつて、ミカさんに同じことをされたことがあったから・・・。

尿道側から尿道プラグで、お尻の中からはバイブで挟まれた前立腺の中心部を貫く様に電気を流されていのだろう。

アレをされると、スイッチ一つでメスイキするだけの電気仕掛けの絶頂人形になることを強要される。
何百回でも、何時間でも•••イきっぱなしのイき地獄だ。
ただしそれは夕立の心臓がそれに耐えられずに止まるまでの間だ。

「っっ、や……ぁ゛っ!? ま、ってぇ────ッ、じぬぅ!! は、ぇ、はひ、っぐぅぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っっ!!死んじゃうぅうう!!!」

黒い仮面の男が手元で何かリモコンのようなものを操作している、その指の動きに合わせて、夕立の鳴き声のトーンと身体の痙攣が変わる。

こうまでしないと大人達は満足しないのだろうか・・・、その醜悪さ、残酷さに背筋が凍りつく。

“処刑”“断末魔”そんなイメージが脳裡に点滅する。
このままでは夕立が殺される!

僕は、寝かされていたソファーから立ち上がり、夕立に駆け寄ろうとして一歩踏み出し出そうとしたけれど、身体に力が入らずに床に倒れこんだ。

僕の体力も限界だった、もう自力で立つことさえ出来ないほど弱っている。
僕は床に這いつくばったまま夕立に手をのばそうとしたその時。

「もうごんなの無理ぃ!・・・まっまげを・・・負けを認めまずゥ、ひぁ、ぁががあああぁあ!!!、ごべんなさいぃ・・・ぅあっ!!ごめなさい、僕の負けですぅ、ひぁああん、ゆるじてぇ・・・もうゆるじてぇぇ!!!!」

夕立がその瞳から大粒の涙をボロボロとこぼしながら、血を吐く様にして敗北宣言を口にした。

“負けを認めます。ごめんなさい”
それは大人達に強要され続けた、僕らの敗北宣言の言葉。

これを口にしたら、自分がこのステージでの生贄から解放される代わりに、相手を身代わりに差し出すことになる。

僕が何があっても、それだけは拒み続けたその敗北宣言を・・・夕立は遂に口にした。

「あっ・・・あぁあ・・・夕立・・・」

僕は床に倒れ込んだまま呆然と夕立を見つめ、嗚咽を漏らす。

僕は夕立を裏切り者だなんて思わない。
ただ、夕立がそこまで追い込まれることから守ってやれなかった自分の無力さに泣いていた。

あんな拷問に、痛みではなく快感だとしても紛れも無い拷問に・・・耐える事なんてできはしない。

ただ僕らの負けは最初から決まっていた。それだけのことだった。

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