都合の良いすれ違い

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11:交わる視線と見据える未来

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 慣れていたはずの交わりも、ぎこちなく初々しい。
 愛撫を重ねれば、色付く素肌がベルエムの興奮を煽り立ててくる。スレーブの息遣いに熱が籠り始めると、ベルエムはスレーブの秘部へと指を滑らせた。

「あ……っ、ベルエ……んぅ!」
「……柔らかい」
「い、いうなぁ……ひぅ!」
「可愛い」
「ん……ぁ」

 ベルエムの指使いに、スレーブは翻弄される。
 
「指……滑って、何?」
「ああ、魔法はこういう事も出来る。市販の潤滑油よりスムーズだろ」
「んぁ!」

 中を滑りと共に撫で上げれば、スレーブの爪先に力が入る。

『グチュ、クチュクチュ』
「ベル……やば」
「嫌か?」
「ぁう、ちがぅ……凄く、気持ちいい」

 ベルエムは傷つけないよう、更に魔法をかけ直す。そして指をスレーブの奥へ収める。

『グリュ』
「ぁあ、や、へんになる」

 中を広げるようにもう一本指を加えて、まとめて擦り上げる。
 奥へ進んでグリグリと前立腺を押せば、堪らずスレーブの腰が浮いて手が伸びてくる。

「ベル、もぉいい、から……」
「辛くないか?」
「……なんか、優し過ぎて……逆にもどかしいんだ」
「そうか。無理そうなら言えよ」

 上着を脱ぎ捨て、ズボンの前を寛げたベルエムはそっと取り出した自身の欲望の先端をスレーブの秘部にあてがった。

『グプ』
「……ぅああっ!」

 その質量の大きさに圧迫感はあれど、痛みは無く挿入が成される。異物の存在と熱を感じ取った中がひくりと締め付けた。
 ベルエムも蠢くうねる中の魅惑的な熱さに、静かに息を吐いた。

「痛くはないか?」
「平気……んっ……」

 蕩けてしまいそうな多幸感に二人は腰から下が溶けるような錯覚を覚えていた。
 ゆったりとした慣らし行為が始まり、甘々とした空気に満ちたとろ火がどんどん煽られていく。長年在った隙間、二人の距離は確実に埋まっていく。
 幾度と身体を重ねたとは思えぬ程に、初々しく相手の反応に目を配っている。

「動いて、くれ……私で、気持ち良くなって」
「……っっ!」
「ひう!」

 ドクリと熱量を増す肉茎の鼓動に反応した内側が強く吸い上げながらキュッと動いた。
 ベルエムは声にならない声を上げて、スレーブに覆い被さるように抱き締めて、肩で息をする。

「んぁっ、あ、ぁ……っ」
「はっ……はっ……うぅ」
「べる、べるぅ……」
「はぁ、っ、……すまん。今日は、寝かせてやれない」
「へぁ?」

 まだ日も高い内にそんな宣言をされて、スレーブはねだったことをほんの少し後悔した。

『バチュッ』
「ああ!」
『ドチュッドチュッ、グチュン』

 ベルエムの体とソファに挟まれた足を健気に開脚しながら、スレーブの身体は際限ない快楽を打ち付けられる。

「こんなに、激し、べるえむ……あっ、すぐに」
「いいさ。好きにイけ」

 揺さぶられるスレーブはベルエムを見上げる事しかできない。
 限界が訪れたのは同時だった。

「ハァっ、……はぁ……うっ」
「ひっんん、んッ────!!!」

 最奥へと吐精を受けたスレーブの直腸が激しく脈を打つように引き絞った。

「ぁ……あ……っ」
「お互い、派手に……出たな」

 腹に散った精を指で撫で広げながら、ベルエムはスレーブを労わるように口付けた。

「……ベルえむ……」
「スレーブ」
「ん……っ、んぅ」
「愛してる」
「私も、愛してる」

 ベルエムがゆっくりと自身を引き抜けば、スレーブの中からとろりと白濁が溢れた。

「はぁ……もっと、ゆっくり」
「ああ、もっとゆっくり堪能させてもらおうか」

 腰の抜けたスレーブを抱き上げて、ベッドのあるスレーブの私室へ足を向ける。

「ベッドでするのは初めてだな」
「……言うなよ。緊張する」

 スレーブをベッドに下ろし、軽く口付けると自身もその隣に寝そべる。そして大切な宝のようにスレーブを抱き締める。
 負けじとスレーブがベルエムの首に手を回し、裸の胸同士が隙間なく密着し合う。
 種族違いの心音が同じ速さで脈を打つ。

「スレーブ」
「ん?」
「あー……いや、何でもない」
「なんだ? 気になるだろ」

 ベルエムが言い淀むと、スレーブはベルエムの頬へ口付ける。そしてそのまま額や瞼にも唇で触れていく。ベルエムもお返しとばかりにスレーブの顔中にキスの雨を降らせた後……そっと耳元で囁いた。

「俺の子を産んで欲しい」
「!」
「……嫌か?」

 スレーブの腹筋の筋を撫でながらベルエムは伺う。

「……申し出は嬉しい。凄く。しかし……私は男だ。孕める臓器が無い」
「無いならば……悪魔に願えばいい」
「!?」

 対価を払えば、どんな願いも叶えてくれる悪魔の甘い囁き。

「……私で、いいのか?」
「他でもない、お前がいいんだ」
「…………」

 スレーブがコクっと無言で頷いて、ベルエムの願いを受け入れ、二人はまた口付けた。

「ん……ベル、べる」
「スレーブ……」
『グチュ』
「あ!」
『クチュクチュ』
「ひぅ、ぁッ、ああ!」

 ベルエムは指をスレーブの尻に滑らせて、そのまま中へ押し込んだ。先程中に放った精液をかき混ぜながら、指を増やして肉壁を擦り上げていく。

「挿れ、て……ベルエムの、奥に……」
「……ああ」

 指を抜いて、ベルエムは自身の猛りを再度ゆっくりスレーブの中へ埋めていく。
 突き動かしたくなる衝動を抑えて慎重に腰を進めて最奥まで到達した。

『グリュッ』
「んぁあ……あぅ、はぁ」

 最奥とキスするように先端で小突けば、その度にスレーブの身体がビクッと跳ねる。
 ベルエムの腰に回された足が力みでスレーブの尻が僅かに浮く。
 自らグイグイと腰を押しつけて快楽に耽溺する。

「ぉ、い……そんな、強請られたら、ゆっくりしてやれない」
「あっあぁ、腰止まんな、い……きもちぃ、ベルえむっ」

 淫らに乱れて快楽を貪るスレーブの姿に煽られ、ベルエムがなんとか理性を握り締めて耐えるが、余裕の表情は鳴りを潜め、奥歯を噛み締めた獰猛な獣の顔になる。
 体内で更に質量を増し、腰を打ち付ける音に混じって結合部からグチュリと粘着質な音が響いてくる。
 スレーブはただ只管にベルエムからの愛と熱を甘受して、涙ながらに舌を突き出して口付けを求める。ベルエムはそれに噛みつくように応えて、舌を絡め合う。
 
「ぁ、はぁ……んんっ、べるえむ、すき……好き、好き」

 背に手を回し、ベルエムの全てを受け入れて、スレーブは愛を囁く。

「スレーブ、好きだ。はぁ……やばい」

 ベルエムもそれに応える。
 互いの名を呼び合って、愛の言葉を囁き合い、身体と心を繋げて一つになる喜びに二人は酔いしれる。

『グチュ、ズルル……グパン!』

 スレーブの腹の中でベルエムの肉棒が突き入れられる度、音が奏でられる。そのリズムに合わせて、二人の荒い呼吸も重なっていく。
 限界は近かった。
 スレーブの内部全体が痙攣して、ベルエムを絶頂へと誘う。

「あっ、ああっ、イく、もぉイく!」

 ベルエムに回した腕で力一杯抱き着いた。
 スレーブは嬌声を上げながら、後孔を締め付けてベルエムを締め上げる。

「俺もっ」
「べるえむ、はぁっべるえむ、孕ませて! お願い、ベルえむのいっぱい、奥にっ」
「はぁ……出すぞ!」

 『パンッ!』と肉がぶつかり合う音が木霊し、二人の身体が硬直する。
 互いの体の熱を、存在を強く感じながら二人は高みに上り詰めた。

『ドプ、ビュルルル』
「んぁあ! ……ぁ……あぁ……」
「……っ」

 一回目よりも多い量の精がスレーブの奥底へと流し込まれる。
 その感覚に恍惚の表情を浮かべ、ベルエムの腰に巻き付けた足に力が入った。

「あ……あぁ……ふぅ」
「……はぁ……っ」
「ん……苦し、いっぱい」

 目線を下腹部へ移すと、スレーブには無いはずの臓器を模した紋様が身に刻まれ怪しく光っていた。

「ぁ……」

 腹を撫でる手付きはどこか嬉しそうにも見える。そんなスレーブの姿に、まだ繋がったままの内部でベルエムは硬さを取り戻し始めた。

「……っ、はやぃ」
「すまん」
「コレ、子宮……の?」
「そうだ。不妊の人間がよく願う淫紋の一つ……悪魔式の懐妊術式だ」

 悪魔の万能さがよくわかる魔法技術。
 男女関係なく、子を孕む事が出来るようになる。

「……スレーブ」
「うん?」
「もう一回……いいか」
「…………ん」

 結合部を軽く揺らせば、スレーブは甘い吐息を鼻から漏らした。
 それから二人は日が傾き、昇るまで愛を確かめ合った。
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