65 / 70
第六十五話 今日は我慢しよう
しおりを挟む
「ありがとう、ピィーちゃん。それとバードストライクは身体を回転させながら撃った方が威力は上がるよ。ついでに捕まりにくくなる」
『分かった。練習する』
それが出来れば苦労しない。
使った後に目が回って、上手く飛べなくなる。
使うならもうどうなってもいい時だけだ。
「それともう一つ。一人で出来ないことは仲間や友達に頼るといい。きっと助けてくれるはずだよ」
『仲間……』
お父さんに言われたけど、今度は分かったとは言えなかった。
もう一度ボス修行するつもりはないし、仲間呼んでも大した奴来ない。
薬草を補充すると危険な家から飛び立った。
レナスを溺愛するママに本当のこと報告したら僕の命が危ない。
レナスは良い子だと嘘の報告しないと、僕の方が嘘つき鳥として怒られそうだ。
『ヤァッ、ヤァッ』
とりあえず回転しながら街に向かって飛んでいこう。
超加速超回転であの盾ごと身体を貫いてやる。
♢♢♢
『火の始末よし!』
森の中でたき火は危ないから、しっかり消えたのを確認した。
これで街に唐揚げの材料を買いに行ける。
『う~~ん、ピィーちゃん、帰って来ないね』
一応待ったけど、ピィーちゃんが逃げたまま戻ってこない。
多分、僕に負けたショックで木の上で悔し涙でも流しているんだろう。
その気持ちは分かるから、今はソッとしておこう。
回復した黒い翼を出して飛び立った。目指すは街だ。
『邪魔するよ』
扉を優しく開けて、冒険者ギルドに入った。
Eダンジョンから鳥肉、蛇皮、狐皮。
Dダンジョンから鳥肉、鳥羽根、猫皮、果物と売れそうな物を取ってきた。
これだけあれば欲しい物は全部買えるはずだ。
「……おい、おじ様が来たぞ」
「……ああ、手筈通りにやるぞ」
なんか企んでいるみたいだ。
おじさん冒険者達が僕をチラチラ見て小声で話している。
何するつもりか知らないけど、気にせずに受付に向かった。
『買取りしてくれ。今度は急いでくれよ』
これぞ、おじ様対応だ。
下から見上げているけど、受付のお姉さんに上から目線で頼んだ。
「……悪いけど、買取りできないわ」
『何だと?』
だけど、気に入らなかったのか買取り拒否してきた。
でも、ピィーちゃんに頼むぐらいだ。
ドラゴンフルーツを見せれば、床に頭をつけて、「買取らさせてください!」と頼むはずだ。
『フッ。これを見てもそう言えるかな』
収納袋に右手を入れて掴むと、受付の上に一個だけドラゴンフルーツを置いた。
「分かってないわね。あなた、レナス君でしょ?」
『‼︎』
「捜索願いが出ているわ。大人しくしてもらいましょうか」
お姉さんの口から僕の名前が出て驚いた。
さらにガタガタと音を立てて、おじさんやお兄さんがテーブルから立ち上がっている。
何するつもりか分かったけど……
もしかして、この少人数で僕を取り押さえるつもりなの?
『レナスだって? 悪いな、人違いだ』
だけど、ここで暴れるとお金が貰えない。
無関係で貫き通すしかない。
「それを決めるのはあなたじゃなくて、私達よ。そのフードを取りなさい」
『嫌だと言ったらどうするんだ?』
「それはおかしいわね。やましいところがないなら取れるはずよ」
なるほど、どうしても僕の顔を見たいらしい。
だったら僕も容赦しない。どんな方法を使ってもフードは取らない。
『やましいところか……だったら、まずはその厚化粧を取ったらどうだ』
「はぁ? 何ですって?」
『やましいところはないんだろ?』
「ふっ、ふふっ、こ、これは素っぴんよ」
なんか顔が引き攣っている。
笑っているけど、キレる寸前だ。
トドメの一撃で終わらせてやる。
『フッ。どおりでそんな顔しているわけだ』
「どういう意味だ、クソガキィー!」
あっ、やり過ぎたみたいだ。
お姉さんが短剣を持って、受付を飛び越えて向かってきた。
「やべえ! フローラちゃん、キレたぞ!」
「誰でもいいから早く止めろ! あのガキ、死ぬぞ!」
あっ、心配しなくてもいいですよ。
だって……
「なぁっ‼︎」
『”クリスタルシールド”』
突き立てられた短剣は僕の見えない盾が防いでいる。
切っ先が数ミリだけ突き刺さっただけで止まっている。
驚くお姉さんには悪いけど、これで終わりじゃない。
『吹き荒れろ”アイスストーム”』
「きゃあっ!」
「うおおおおお!」
僕に近づく奴らをまとめて氷の嵐で吹き飛ばした。
嵐が収まると部屋全体が薄っすらと凍りついていた。
「くそぉ、身体が凍って動けねぇ……」
「寒いぃ、寒いぃ、よぉ……」
ちょっとやり過ぎちゃったみたいだ。
震える歯をガチガチ鳴らして床に倒れているおじさん達には悪いことした。
『手加減はしておいた。次はドラゴンを持ってくる。それまでに唐揚げに必要なものと、よく切れる包丁を用意しておけ。買取なしはなしだ』
短剣持って倒れているお姉さんに言うと、凍って開きにくくなっている扉を開けて外に出た。
今日はパサパサのパンだけで我慢しよう。あれなら残りの所持金でも買える。
『分かった。練習する』
それが出来れば苦労しない。
使った後に目が回って、上手く飛べなくなる。
使うならもうどうなってもいい時だけだ。
「それともう一つ。一人で出来ないことは仲間や友達に頼るといい。きっと助けてくれるはずだよ」
『仲間……』
お父さんに言われたけど、今度は分かったとは言えなかった。
もう一度ボス修行するつもりはないし、仲間呼んでも大した奴来ない。
薬草を補充すると危険な家から飛び立った。
レナスを溺愛するママに本当のこと報告したら僕の命が危ない。
レナスは良い子だと嘘の報告しないと、僕の方が嘘つき鳥として怒られそうだ。
『ヤァッ、ヤァッ』
とりあえず回転しながら街に向かって飛んでいこう。
超加速超回転であの盾ごと身体を貫いてやる。
♢♢♢
『火の始末よし!』
森の中でたき火は危ないから、しっかり消えたのを確認した。
これで街に唐揚げの材料を買いに行ける。
『う~~ん、ピィーちゃん、帰って来ないね』
一応待ったけど、ピィーちゃんが逃げたまま戻ってこない。
多分、僕に負けたショックで木の上で悔し涙でも流しているんだろう。
その気持ちは分かるから、今はソッとしておこう。
回復した黒い翼を出して飛び立った。目指すは街だ。
『邪魔するよ』
扉を優しく開けて、冒険者ギルドに入った。
Eダンジョンから鳥肉、蛇皮、狐皮。
Dダンジョンから鳥肉、鳥羽根、猫皮、果物と売れそうな物を取ってきた。
これだけあれば欲しい物は全部買えるはずだ。
「……おい、おじ様が来たぞ」
「……ああ、手筈通りにやるぞ」
なんか企んでいるみたいだ。
おじさん冒険者達が僕をチラチラ見て小声で話している。
何するつもりか知らないけど、気にせずに受付に向かった。
『買取りしてくれ。今度は急いでくれよ』
これぞ、おじ様対応だ。
下から見上げているけど、受付のお姉さんに上から目線で頼んだ。
「……悪いけど、買取りできないわ」
『何だと?』
だけど、気に入らなかったのか買取り拒否してきた。
でも、ピィーちゃんに頼むぐらいだ。
ドラゴンフルーツを見せれば、床に頭をつけて、「買取らさせてください!」と頼むはずだ。
『フッ。これを見てもそう言えるかな』
収納袋に右手を入れて掴むと、受付の上に一個だけドラゴンフルーツを置いた。
「分かってないわね。あなた、レナス君でしょ?」
『‼︎』
「捜索願いが出ているわ。大人しくしてもらいましょうか」
お姉さんの口から僕の名前が出て驚いた。
さらにガタガタと音を立てて、おじさんやお兄さんがテーブルから立ち上がっている。
何するつもりか分かったけど……
もしかして、この少人数で僕を取り押さえるつもりなの?
『レナスだって? 悪いな、人違いだ』
だけど、ここで暴れるとお金が貰えない。
無関係で貫き通すしかない。
「それを決めるのはあなたじゃなくて、私達よ。そのフードを取りなさい」
『嫌だと言ったらどうするんだ?』
「それはおかしいわね。やましいところがないなら取れるはずよ」
なるほど、どうしても僕の顔を見たいらしい。
だったら僕も容赦しない。どんな方法を使ってもフードは取らない。
『やましいところか……だったら、まずはその厚化粧を取ったらどうだ』
「はぁ? 何ですって?」
『やましいところはないんだろ?』
「ふっ、ふふっ、こ、これは素っぴんよ」
なんか顔が引き攣っている。
笑っているけど、キレる寸前だ。
トドメの一撃で終わらせてやる。
『フッ。どおりでそんな顔しているわけだ』
「どういう意味だ、クソガキィー!」
あっ、やり過ぎたみたいだ。
お姉さんが短剣を持って、受付を飛び越えて向かってきた。
「やべえ! フローラちゃん、キレたぞ!」
「誰でもいいから早く止めろ! あのガキ、死ぬぞ!」
あっ、心配しなくてもいいですよ。
だって……
「なぁっ‼︎」
『”クリスタルシールド”』
突き立てられた短剣は僕の見えない盾が防いでいる。
切っ先が数ミリだけ突き刺さっただけで止まっている。
驚くお姉さんには悪いけど、これで終わりじゃない。
『吹き荒れろ”アイスストーム”』
「きゃあっ!」
「うおおおおお!」
僕に近づく奴らをまとめて氷の嵐で吹き飛ばした。
嵐が収まると部屋全体が薄っすらと凍りついていた。
「くそぉ、身体が凍って動けねぇ……」
「寒いぃ、寒いぃ、よぉ……」
ちょっとやり過ぎちゃったみたいだ。
震える歯をガチガチ鳴らして床に倒れているおじさん達には悪いことした。
『手加減はしておいた。次はドラゴンを持ってくる。それまでに唐揚げに必要なものと、よく切れる包丁を用意しておけ。買取なしはなしだ』
短剣持って倒れているお姉さんに言うと、凍って開きにくくなっている扉を開けて外に出た。
今日はパサパサのパンだけで我慢しよう。あれなら残りの所持金でも買える。
89
お気に入りに追加
1,330
あなたにおすすめの小説
家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長
ハーーナ殿下
ファンタジー
貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。
しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。
これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
大賢者の弟子ステファニー
楠ノ木雫
ファンタジー
この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。
その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。
そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。
※他の投稿サイトにも掲載しています。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる