病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第六十四話 ママに教えてやる

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『うぅぅ、もう許してください、薬草ありません』

 土下座して泣きながら大鳥達に頼んだ。
 これ以上やられると死んでしまう。

【種族:ブルーバード レベル50 筋力34 耐久36 敏捷MAX 器用26 知力15 魔力53 運14 残りポイント0 『バードストライク習得』『超加速習得』『仲間を呼ぶ習得』『硬質化習得』】

『おお、なんて情けない奴じゃ。ピィー助よ、お主にはガッカリじゃ』

 長老が翼で頭を押さえて、嘆き悲しんでいる。
 それが百羽組み手という暴力で僕を痛ぶった奴の台詞なの。
 魔力にポイント使って、50超えたのに属性覚えてない。
 逆に殴られすぎて、耐久上げる【硬質化】の技覚えちゃった。
 これ、人間だったらお金取れるヤツだからね。

『俺は最初から無理だと思っていたんだよ。時間の無駄だったな』
『なんで長老様はあんなよそ者に期待したのかしら?』
『今からでもトンネルを木で塞ごうぜ。そっちの方がマシだ』

 僕のことを救世主だと言ってたくせに、才能がないと分かった途端にこれだ、
 そう思っていたんなら、組み手始めるにやれよ。
 しかも、文句言ってる奴、組み手に参加してた。アイツら絶対に許さない。
 僕を鍛えずに痛ぶって遊んでいただけだ。

『ピィー助よ、お主にはボスの座はまだ早かったようじゃ。儂の見込み違いじゃった。何処へなりとも立ち去るがよい』
『ピィ。長老様、ご期待に応えられず申し訳ありませんでした』

 やったぁー、やったぁー、帰れるぞ!
 めちゃくちゃ嬉しいけど、残念そうに頭を下げて、長老様に謝罪した。

『うむ。ピィー助よ、死ぬんじゃないぞ』

 お前がな。むしろ今すぐ死ね。全員死ね。
 死ねないなら、僕が殺してやろうか!

『はい、長老様。皆さんもありがとうございました』
『くっ、さっさと行きやがれ馬鹿野郎が』
『なんだか寂しくなるわね』

 もちろんそんなこと言わない。
 皆んなのお陰でフリが得意になった。
 本当は嬉し涙だけど、感謝の涙を流して飛び立った。

 ♢♢♢

 ダンジョンから出るとレナスの家を目指した。
 まずは薬草で回復して、お母さんにレナスのことを報告する。
 帰ってきたら、たっぷり怒られればいい。

『……よし、いないな』

 花壇の薬草を食べると窓から部屋の中を覗いた。
 カーテンがないから丸見えだ。レナスはいないみたいだ。
 だったら、仕返しにベッドを泥だらけにしてやる。
 これでもっと怒られる。

『……ピィーちゃん?』
『ピィ~~~~‼︎』

 窓を持ち上げているところで、突然後ろから名前を呼ばれて死ぬほど驚いた。
 そのせいで窓からクチバシを離して、窓が窓枠にガンと落ちてきた。

『ご、ごめんなさい! 焼き鳥は許してください!』

 だけど、驚いている暇はない。
 急いで窓枠から地面に降りて土下座した。

『ハハッ。美味しそうだけど、ピィーちゃんは焼き鳥には出来ないよ』
『……あっ、レナスじゃなかった』

 声が違うから恐る恐る顔を上げて見てみると、風呂覗きお父さんだった。
 土下座して損した。すぐに立ち上がって、胸についた土を翼で払い落とした。

『それにしてもボロボロだけど、どうしたんだい?』
『はぁ?』

 温厚な僕でもピキィときた。
 僕の苦労も知らずにのんきに旅しやがって。
 お前の息子のせいで僕がどんな目に遭ったのか教えてやる。
 翼を真っ直ぐ伸ばすと、隙だらけの腹を狙った。

『親なら責任取れ。”バードストライク”』

 怒りの体当たりだ。地面の味を思い知れ。

『おっと』
『な、なにぃー‼︎』

 受け止められた。それも人差し指一本で!
 激しいボス修行で疲れてボロボロだとしても、あり得ない。

『この野朗ぉ~~! だったらこれならどうだ!』

 親のくせになんて無責任な奴だ。一発で許してやろうと思ったのに。
 だったら僕が責任を持って、もの凄く痛い責任を取らせてやる。
 僕が痛い思いしたんだ。お前も思い知れ。

「へぇー、速いね、ピィーちゃん」

 後ろに飛んで指から離れると、超加速で周囲を飛び回りながら、修行で習得した技を使った。

【硬質化】——『耐久』を短時間だけ三倍に出来る。

 耐久三倍、敏捷三倍によって、僕のバードストライクの威力は通常の九倍だ。
 指一本で受け止めるつもりなら、骨折ぐらい覚悟しろ。

『”ボスストライク”』

 金属に匹敵する身体で覗き魔の無防備な背中を狙った。
 への字に曲げてやる。

「ピィーちゃん、強くなったみたいだね。でもね——」

 何か言ったと思ったら、覗き魔が信じらない速さで振り返った。
 それも振り返りながら左手を僕に伸ばしてきた。
 ボスストライクと左手が激突して、僕が地面にねじ伏せられた。

『クピィ……!』
「強いだけじゃ守れないものもあるんだよ」

 信じられない。覗き魔なのにめちゃくちゃ強い。

『ご、ごめんなさい、調子に乗りましたぁ……』

 強い相手には素直に謝るのが僕の生き方だ。
 地面に押さえつけられたまま謝罪した。

「それでいいんだよ、ピィーちゃん。強いだけじゃ守れないものもあるけど、強くなければ何も守れないんだから」
『う、うん、僕もそう思う……』

 身体から手を離して、押さえつけるのをやめてくれた。
 身体に付いた土は翼で叩き落とさずに、ゆっくり立ち上がった。

「ママから話は聞いているよ。レナスが何日も家に帰っていないって」

 僕が立ち上がるとお父さんが悲しそうに言ってきた。
 悪いけど、お宅の息子さんはもっと酷いことしている。

『レナスになら昨日会った。この身体の傷はレナスにやられた』

 もうどの傷がそうなのか分からないけど、とりあえず身体を指して言った。

「それは本当かい?」
『僕、嘘つかない。アイツに思いっきりぶん殴られた』
「それはすまなかったね。どうやら血の衝動が抑えられないみたいだ。早くコレを飲ませないと……」
『なに、それ?』
 
 被害を訴えていたら、お父さんが収納袋から壺を取り出した。
 中身が何なのか聞いてみた。

「これは【聖竜の血】だよ。昔の仲間に無理を言って手に入れてもらったんだ。これを飲めばレナスの中の悪い血を浄化することが出来るはずだ。これをピィーちゃんに託したい」
『えぇー、自分でやりなよ。強いんだから』

 なんか壺渡してきたけど、受け取るわけない。
 受け取ったらレナスとまた会わないといけない。
 お父さんはしないって言ってるけど、お宅の息子さんは焼き鳥好きだ。
 壺の血をタレ代わりに僕が食べられちゃう。

「すまない、ピィーちゃん。僕は行けない。いや、正確には動けないんだ」
『——何その大怪我‼︎』

 お父さんがシャツをめくって、お腹を見せた。
 縫われているけど切り傷のようなものが斜めに大きく走って、血が滲んでいる。

「ママにやられた」
『マ、マ、マ、ママにやられたの⁉︎』

 てっきり聖竜にやられたと思ったのに、犯人はママだった。

「ピィーちゃん、時間がないんだ。ママは僕の百倍は強い。もしもこのままレナスが帰って来ないなら、僕とピィーちゃんの命はない。どこに逃げても必ずママはやってくる。だから、頼む、ピィーちゃん。レナスを連れ帰ってくれ」
『ぐぅ、や、やるしかねえじゃねえか』

 そんな傷見せられて、頭下げられたらやるしかない。
 必ずやって来るならやるしかない。
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