ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第四章:商人編

第141話 間話:メル

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「全然眠れない……」

 布団に入って寝ようとするのに、眠気がやってこない。
 家に帰ってきたのに、もう何日も眠れていない。
 隊長にゾンビにされた所為だ。お腹も空かないし、疲れもしない。
 ご飯を食べるのは、習慣で食べないと落ち着かないからだ。

「うぅぅ、人間に戻りたい」

 ゾンビ魔人の治療方法はないから、自分で調べるしかないらしい。
 隊長はAランクダンジョンに行く準備で忙しいからと言って、全然調べてくれない。
 多分、暇でも調べるつもりはないと思う。24時間働けると喜んでいる。

 最近は二日に一回帰ってきて、ミノタウロスの角を使った高級包丁を大量に作っている。
 赤い魔石とBランク素材を使うと、武器製造のアビリティLVが早く上がるそうだ。
 家の庭に黒岩でお店まで作って、一本五千ギルで販売している。

 店員には私の替え玉のターニャちゃんを雇っている。
 店員が子供の方が売り上げが良いそうだ。やり口が汚い。

「私もダンジョンに行こうかな?」

 隊長がAランクダンジョンなら、治療方法があるかもしれないと言っていた。
 このまま眠れない日々をイライラ過ごすよりは、そっちの方が良いと思う。
 というよりも、普通の人は正気じゃいられない。隊長が異常なのだ。

 翌朝……

「おば様、おはようございます」
「はい、おはよう。今日もダンジョンに行くのかい?」
「はい、ちょっとだけ」

 弓矢と剣を持って部屋を出ると、台所にいたおば様に外出する事を伝えた。

「子供なんだから遊んでいてもいいんだよ」

 こんな大きな子供と遊んでくれる子供はいない。
 近所の人達には隊長の従妹という事にされている。
 見た目年齢は十五歳もある。一気に老けてしまった。隊長の所為だ。

「そういうわけにはいかないです。お昼ご飯は外で食べてきます」
「はいはい、怪我しないように気をつけるんだよ」
「はぁーい!」

 同じぐらいの身長になったおば様に許可をもらうと、家から庭のお店を目指した。
 隊長には生活費は自分で稼ぐように言われている。
 私はすでに百人前らしいから、もう子供じゃないから世話しないそうだ。
 意味が分からないけど、分かったら終わりだと思って諦めている。

「おはよう。隊長いる?」

 縦横六メートル程の店内に入ると、カウンターで暇そうにしているターニャちゃんに聞いた。
 今日は雷蛇の皮で作った黄と黒の水玉服を着ている。
 品揃えがミノタウロスの白包丁と革服だけだから、お客さんが全然いない。
 もしくは隊長のお店だから人気がない。

「はい、新商品の開発中です。奥にいますよ」
「じゃあ、お邪魔するね」

 品揃えも悪く、内装も黒岩一色の地味な店内を通り抜けて、二階建ての作業場に入った。
 床に置かれた大量の岩箱の中に、赤い魔石や角や皮が入っている。
 隊長は二階の方で作業中のようだ。階段を上っていくと、山積みの包丁と隊長が見えた。
 
「隊長、Aランクダンジョンには、いつ行くんですか?」
「んっ? いつかは行くが今ではないな。ほら、新商品の開発に成功したぞ! 今量産中だ」
「そうですか……」

 出発予定日を聞いてみたけど、まだ決めてないようだ。
 黒光りする刃に赤い鱗の刀身の片刃剣を、自信満々で見せてきた。
 白包丁のように山積みになってないから、数時間前に作り始めたみたいだ。
 一本だけ手に取ってみた。

【炎竜黒剣:長剣ランクX】——刀身に炎属性を有する。
【使用素材:極地魔法の黒剣、炎竜の牙、炎竜の鱗、赤魔石】
【必要アビリティ:極地魔法LV8、炎魔法LV2、武器製造LV4】

「……」

 凄そうな剣なのは分かったけど、私が驚いたのは武器製造がLV4になっている事だ。
 ミノタウロス包丁はLV2で作っていた。多分一秒も休まずに包丁を作り続けている。
 ここまで来るとただの馬鹿です。

「隊長は眠れなくても平気なんですか? 私は眠れないのはキツイです」
「慣れれば平気になる。そんなに眠りたいなら、強力な睡眠薬でも作るんだな」
「睡眠薬ですか?」
「ああ、ウッドエルフの睡眠矢を凝縮すれば作れるかもな」

 睡眠不足を隊長に相談すると、睡眠薬を作ればいいと教えてくれた。
 出来ればAランクダンジョンに連れて行ってほしいけど、武器作りに飽きるまで無理そうだ。
 素材回収に付いていって、自分で睡眠薬を作るしかない。

 ♢

 地下40階……

 冷んやりと涼しい円形闘技場に到着した。凍ったミノタウロスの中に氷竜がいる。
 隊長が苦労して使役して、ミノタウロス狩りを任せているそうだ。
 アレンさんやブレルさんのように利用されるだけ利用されて、捨てられる可哀想な存在だ。

「メル! ボッとしてないで、さっさと回収しろ。遊びに来たんじゃないぞぉー!」
「……」

 客席の魔石を回収している隊長が注意してきた。魔石だけでも五千個はありそうだ。
 大量の魔石を何度も持ち込んだ結果、最近、換金所を出入り禁止になったそうだ。
「赤毛ジジイめ! この俺を敵に回した事を後悔させてやる!」と言っていた。

 多分、換金所で隊長が半笑いで言った、「この町に俺以外の冒険者いる?」が原因だと思う。
 完全に調子に乗っているし、町の冒険者を全員敵に回してしまった。
 だから、お店にも人が来ない。このままだと私も出禁になるかもしれない。

「さて、帰るぞ」
「まだ何も終わってないです」

 魔石と素材の回収を終わらせると、普通に帰ろうとする隊長を引き止めた。
 ただで魔石拾いは手伝わない。予定通りに睡眠薬作りを手伝ってもらう。

「強力過ぎると売れないし、薬品系は販売の許可を取るのが難しいんだよなぁー」

 小船で45階を目指す隊長は、売れない物には興味はないようだ。
 私も毒矢から毒薬を作るつもりはない。

「自分用だから大丈夫です。他の人には使わないです」
「それならいいけど、使う前に生物実験はした方がいいぞ。20階のゾンビで試してみるんだな」

 出来れば隊長に協力してほしい。ゾンビだと効いているのか分からない。
 そもそも私の薬品製造LV7は、無理矢理に進化させられた結果だ。
 隊長が責任を持って、協力するのが常識だと思う。

「炎、氷、雷の三属性の剣を作った後は、竜鱗と蛇皮で属性防具を作ろうと思っている。コイツは絶対に売れるぞ。間違いない」
「そうなるといいですね」

 隊長の新商品アイデアを聞かされながら、やっと45階に到着した。
 絶対に売れないと思う。新商品じゃなくて、盗作商品です。

「ああ、疲れた。一匹捕まえて使役して、睡眠矢だけ出させるか」
「青い宝箱があるみたいですけど、どうしますか?」

 宝箱の数は八個あるから、青い宝箱も復活しているみたいだ。
 絶対疲れてないだろう隊長に報告した。

「そうだな。矢を出させる間に見つけるか。魔術の指輪なら試したい事があるからな」
「分かりました。一番近くのモンスターはあっちで、宝箱はあっちです」
「じゃあ、宝箱の方を案内してくれ。モンスターは後でもいい」
「はぁーい」

 やっぱり睡眠薬作りは後回しみたいだ。
 隊長の優先度は私よりも自分で固定されている。宝箱を指差した方に真っ直ぐに歩き出した。
 仕方ないので、私も綺麗な花が咲き乱れる森を宝箱を目指して歩き出した。

「植物系は使役するのに時間がかかるんだよな」

 岩塊で拘束したウッドエルフを岩箱に押し込むと、隊長は腕を切って、岩箱を血で満たしていく。
『何十リットル出るんだよ』と突っ込みたいけど、そこまで興味がないから無視しよう。
 岩箱の蓋を閉めると、あとは数時間後に使役完了らしい。隊長の汚い血で溺れるなんて可哀想だ。

「この辺にあります」

 ウッドエルフの血漬けが完成する前に、宝箱を全部見つける事になった。
 パパッと案内して、パパッと隊長が見つけて、魔力で操るスコップで地面を掘っていく。
 もう自分の手で掘るつもりはないようだ。堕落した悪い大人の見本が目の前にいる。
 
「おっ、当たりだ!」
「良かったですね。早く睡眠矢を集めて帰りましょう」

 五個目で青い宝箱が見つかった。中身は隊長が欲しかった魔術の指輪だった。
 今度は隊長が私を手伝う番だ。だけど、私の考えは甘かった。

「何言ってるんだ? 試したい事があると言っただろ。ウッドエルフの魔石が二百五十個必要になった。さあ、集めるぞ」
「……」

 二度と隊長の手伝いはしないと決めた。
 炎竜黒剣を渡された。これの試し斬りも必要らしい。
 予備で二本あると思ったのに、私に最初から使わせる為に用意したみたいだ。
 結局、家に帰れたのは、追加で21階のブルータートルを二百五十体倒した後だった。
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