ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第二章:ゾンビ編

第54話 水中遺跡の罠

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 二十一階の水上遺跡を冒険者を探して進んでいく。
 水上遺跡は湖の上に白い岩で作られた美しい古代神殿で、水面よりも少しだけ床が高くなっている。
 建物は少なく、湖面に突き出た広い通路と飛び石のような通路を進んでいく。
 たまに鈍臭い奴が飛び石を失敗して、水の中に落ちてしまうが泳げれば問題ない。

「魔石は要らないが、素材を捨てるのは勿体ないな」

 襲ってきた青い大亀を岩杭で楽々倒したが、荷物はあまり持ちたくない。
 外に出られるか分からないから、今は手ぶらでパパッと進んで、俺の進化素材だけを集めたい。
 魔石と素材を床に放置して、階段を目指した。

「それにしても、Dクラスは雑魚だったな。Cも雑魚だろうな」

 別に強くなって油断しているわけじゃない。事実を言っているだけだ。
 何だろうか、これが頂点に近い人間の気分なのだろうか。

 犬のように素早く突進して来たブルータートルも、岩杭で硬い甲羅を下から上まで貫通させた。
 ゾンビになる前の俺なら、腹下の甲羅に当たっただけでポキィと岩杭は折れていた。
 今の俺なら余裕で三十階まで行けそうな気がする。

「それにしても……何で誰もいないんだ?」

 さっきから冒険者を探しているのに、一人も見つからない。
 ちょっと不自然だ。この辺もゾンビと同じで魔石を稼ぎやすい場所だ。
 前に来た時は湖に裸で飛び込んで、風呂代わりにしている冒険者を何人も見かけた。
 となると考えられるのは、奇襲と逃亡の二つしかない。

「なるほど。太陽石を準備していた時に、下の階に逃げた奴がいたんだな」

 おそらく貴重品を奪われたくない奴らが下の階に逃げたのだろう。
 そして、出会った冒険者に奪われたくないなら逃げようと警告している。
 面倒な事をしてくれるが、どこまでも逃げられるわけがない。

 だが、まあいい。隠れている雑魚をわざわざ見つける必要はない。
 逃げ回るような雑魚は大した物は持っていない。
 
「んっ?」

 白い石柱で支えられている遺跡の中を順調に進んでいく。
 だけど、進むたびに突き刺さるような視線が増えている。
 二十二階への階段がある大広間まではあと少しだが、明らかに罠の臭いがプンプンする。
 
「一人、二人じゃないな……フッ。まだ、やられ足りない奴らがいるようだ」

 階段のある大広間に到着した。壁に開いた階段口から無数の足音が聞こえてくる。
 五十、七十人ぐらいはいる。俺の為に頑張って獲物を集めてくれたようだ。
 階段を上ってくるのを待つつもりはないので、早速階段に向かって、両手で岩塊を発射していく。

「ぐがぁぁ!」
「盾を構えろ! このまま突撃するぞ!」
「おお!」

 階段の中からやる気のある声が聞こえてくる。
 でも、岩塊は階段の壁や天井に打つかって軌道が変化する。
 簡単に防ぐ事は出来ない。

「フッ、愚か者共め。俺に逆らった事を後悔しろ」

 階段口からアリのように冒険者が出てくるが、蓋さえすれば関係ない。
 両足から床に魔力を流して、丸太のような岩柱を作っていく。
 蹴り飛ばして発射すれば、階段下まで綺麗に滑り落ちてくれるはずだ。
 せいぜい轢かれないように注意しろ。
 
 ヒューン、ドススッ——

「ぐっ、何だ⁉︎」

 岩丸太を右足を乗せて発射しようとすると、両手足を衝撃が襲った。
 何が起きたか確かめて見ると、腕や足に何本もの白い骨矢が突き刺さっていた。
 誰がやったか犯人を探そうとしたが、犯人の方から現れた。

「効いているぞ! どんどん射ってやれ!」
「全身ハリネズミにしてやるぜ!」
「お前達か‼︎」

 大広間の通路口に二十人以上の弓使いが横二列に並んで、俺に向かって矢を向けている。
 階段口の冒険者と一緒になって、俺を見事に挟み撃ちしたみたいだが、詰めが甘い。

「不意打ちが何度も効くか!」

 足裏から魔力を床に流して、俺の背後に分厚い岩壁を一枚作った。
 痛みを感じない俺に降伏の二文字はない。手足に矢が突き刺さろうと普通に動ける。

「情報通り岩壁が現れたぞ! 予定通りに打ち壊すぞ!」
「「「おお!」」」

 背後から足音が迫ってくるが、とりあえず後ろは一時的に防いだ。次は急いで前を塞ぐ。
 床にある岩丸太を階段口に向かって蹴って発射して、さらに縦横一メートル越えの四角い岩塊を両手で作って、次々に発射していく。

「気を付けろ! デカいのが飛んでくるぞ!」
「いや、他にも来るぞ!」

 百人近くの冒険者と真っ向勝負する馬鹿はいない。
 階段口を四角い岩塊で塞いで、階段の中にいる冒険者を閉じ込める。
 戦力を分断させた後は、背後の弓矢隊を血祭りにして、湖に放り込んで青ガメの餌にしてやる。

「次は俺を発射する番だな」

 階段口近くに大きな岩塊が十二個ぐらい転がっている。
 両手と両足を使って、全身を素早く岩塊で覆って、四角い岩塊の中に俺を閉じ込めた。
 あとは階段口に向かって、俺を発射するだけだ。

 ドーン……

「ぐっ!」

 ガン! 発射された衝撃と壁に打つかったような衝撃を感じた。多分、発射成功だと思う。
 今頃は岩壁の裏に隠れているはずの俺が居ないと、連中が騒いでいるはずだ。

「フッフッ。覚悟しろよ」

 岩塊に魔力を流して、内部だけをボロボロに崩していく。
 ゾンビは呼吸する必要がないから、この中で永遠に隠れていられるが、俺は腰抜けではない。
 何とか動ける広さになったので、表面に小さな覗き穴を作った。これで外の状況が分かる。

「くそ! どこに消えやがった!」
「仮面を取って、俺達の中に紛れ込んでいるんじゃないのか?」
「いや、それよりもアイツの仲間が何人かいるんじゃ」
「確かに一人でこんな事するわけないよな。協力者がいる方が自然だ」

 覗き穴の外には壊された岩壁と、階段組と合流した弓矢隊が言い争っているのが見える。
 乱闘が始まってから参戦してもいいが、そんなつもりはさらさらない。
 床の位置を確認すると、岩塊に隠れたままで攻撃を開始した。
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