35 / 172
第一章:人間編
第35話 間話:狩人ジェイ
しおりを挟む
「何だよ、これは?」
しっかり睡眠を六時間取ると、おっさんと娘は十五階の森林地帯の宝箱探しを始めた。
この辺がモヤモヤすると娘が言うと、おっさんに岩の槍を渡された。
これから地面を槍で突き刺しながら、木の上と地面の中に宝箱がないか探すそうだ。
父娘で頭がイカれている。
「娘が虐待されているんじゃなかったのかよ?」
適当に柔らかい濃茶色の地面に、槍を突き刺しながら歩いていく。
換金所のオヤジに「娘を虐待している冒険者がいるから、証拠を押さえて捕まえてくれ!」と頼まれたのに、話が全然違う。
おっさんの方が娘に飼い犬のように支配されている感じがする。
どう見ても日常的に暴力を振るったり、食事を抜きにしているようには見えない。
身体に虐待されている痣も見当たらないし、もう無実のようなものだ。
さっさと護衛じゃないと話して、こんな槍は投げ捨てたい。
だけど、まだ一日目だ。
おっさんが我慢している可能性や上手く隠している可能性もある。
もうしばらく監視を続けるしかなさそうだ。
「はぁ……俺もモンスター狩りの方が良かった。こっちの方が重労働だ」
「おーい! もっとテキパキやれ! 一宝箱二時間が基本だぞ!」
「何だよ、それ? 無理に決まっている。普通五時間はかかる」
一緒に始めたのに、遠くの方におっさんと娘がいる。
おっさんが怒鳴り声を上げているが、こっちは宝箱探し業者じゃない。
テメェらプロ業者がいつも通りに二人で二時間で見つければいい。
ドォス、ドォス、コン……
「んっ? 木でも埋まっているのか?」
四等分された捜索範囲の二等分目を調べていると、槍の先端が何か硬い物に当たった。
地面に四十センチ程埋まっている槍を掘り起こしていく。
柔らかい土を退けていくと、地面から赤い宝箱が見えてきた。
「……やべぇな。本当に見つかったよ」
イカれた父娘に適当に付き合っていたら、本当に地面から宝箱が出てきた。
とりあえず宝箱を見つけたから、言われた通りに二人を呼んでみた。
「おーい! 見つけたぞぉー!」
「何! 本当か!」
少し遠くにいる父娘に向かって、槍を振って大声で呼びかける。
宝箱を見つけたら、絶対に開けずに娘に開けさせるように注意されている。
「赤と青のどっちだ?」
「赤だよ」
「やっぱり赤だったな」
すぐに二人が走ってきて、おっさんの方が色を聞いてきたけど、そんなのは見れば分かる。
娘の方はおっさんを気にせずに宝箱を開けている。
二人とも宝箱を見つけて開けるのに、異常な興奮でも感じているんじゃないだろうか。
「隊長、これが『竜水銀』ですか?」
「ああ、残り二個見つければいい。あとは次の階でジェイがデスアウルの爪を三本手に入れるだけだ」
「……」
俺かよ? 自分の娘なんだから自分で手に入れろよ。
換金所のオヤジの言う通り、おっさんは口だけで実力は大してないようだ。
十五階まで娘と一緒にほとんど見ているだけだった。
襲ってきたワイルドボアも俺が一人で倒している。
「よし、次を探すぞ。まだこの階にはありそうだ」
「はい!」
透明な雫の形をした竜水銀を娘の短剣に吸収させると、父娘は次を探そうと動き出そうとした。
流石に十五階全部を調べて回るのは頭がおかしい。
「ちょっと待て。一個でいいだろう? 足りない分は帰りに五人で探せばいい」
ダリル達が二十四階に行って、二十階に引き返すのが今日の夜ぐらいだ。
一個二時間の宝箱を一階ずつ丁寧に探している時間はない。
そう思って、父娘を止めた。けれども……
「いや、駄目だ。青い宝箱を探しているし、十七階は砂漠地帯だ。暑いし、毒サソリに砂サメがいるから危険だ。念入りに探すなら十五と十六階しかあり得るない。時間が足りないなら、砂漠は素通りすればいい」
「まぁ、それだったら問題ないか……」
おっさんの方がそれらしい事を言って、続行すると言い出した。
本当に砂漠を素通りするなら問題ないが、青い宝箱が十五、十六階で見つからなかったら探すだろう。
砂漠でも探すと言い出したら、娘を担いで二十階を目指せばいい。
あのおっさん一人じゃ、宝箱探しもモンスター狩りも出来ないからな。
しっかり睡眠を六時間取ると、おっさんと娘は十五階の森林地帯の宝箱探しを始めた。
この辺がモヤモヤすると娘が言うと、おっさんに岩の槍を渡された。
これから地面を槍で突き刺しながら、木の上と地面の中に宝箱がないか探すそうだ。
父娘で頭がイカれている。
「娘が虐待されているんじゃなかったのかよ?」
適当に柔らかい濃茶色の地面に、槍を突き刺しながら歩いていく。
換金所のオヤジに「娘を虐待している冒険者がいるから、証拠を押さえて捕まえてくれ!」と頼まれたのに、話が全然違う。
おっさんの方が娘に飼い犬のように支配されている感じがする。
どう見ても日常的に暴力を振るったり、食事を抜きにしているようには見えない。
身体に虐待されている痣も見当たらないし、もう無実のようなものだ。
さっさと護衛じゃないと話して、こんな槍は投げ捨てたい。
だけど、まだ一日目だ。
おっさんが我慢している可能性や上手く隠している可能性もある。
もうしばらく監視を続けるしかなさそうだ。
「はぁ……俺もモンスター狩りの方が良かった。こっちの方が重労働だ」
「おーい! もっとテキパキやれ! 一宝箱二時間が基本だぞ!」
「何だよ、それ? 無理に決まっている。普通五時間はかかる」
一緒に始めたのに、遠くの方におっさんと娘がいる。
おっさんが怒鳴り声を上げているが、こっちは宝箱探し業者じゃない。
テメェらプロ業者がいつも通りに二人で二時間で見つければいい。
ドォス、ドォス、コン……
「んっ? 木でも埋まっているのか?」
四等分された捜索範囲の二等分目を調べていると、槍の先端が何か硬い物に当たった。
地面に四十センチ程埋まっている槍を掘り起こしていく。
柔らかい土を退けていくと、地面から赤い宝箱が見えてきた。
「……やべぇな。本当に見つかったよ」
イカれた父娘に適当に付き合っていたら、本当に地面から宝箱が出てきた。
とりあえず宝箱を見つけたから、言われた通りに二人を呼んでみた。
「おーい! 見つけたぞぉー!」
「何! 本当か!」
少し遠くにいる父娘に向かって、槍を振って大声で呼びかける。
宝箱を見つけたら、絶対に開けずに娘に開けさせるように注意されている。
「赤と青のどっちだ?」
「赤だよ」
「やっぱり赤だったな」
すぐに二人が走ってきて、おっさんの方が色を聞いてきたけど、そんなのは見れば分かる。
娘の方はおっさんを気にせずに宝箱を開けている。
二人とも宝箱を見つけて開けるのに、異常な興奮でも感じているんじゃないだろうか。
「隊長、これが『竜水銀』ですか?」
「ああ、残り二個見つければいい。あとは次の階でジェイがデスアウルの爪を三本手に入れるだけだ」
「……」
俺かよ? 自分の娘なんだから自分で手に入れろよ。
換金所のオヤジの言う通り、おっさんは口だけで実力は大してないようだ。
十五階まで娘と一緒にほとんど見ているだけだった。
襲ってきたワイルドボアも俺が一人で倒している。
「よし、次を探すぞ。まだこの階にはありそうだ」
「はい!」
透明な雫の形をした竜水銀を娘の短剣に吸収させると、父娘は次を探そうと動き出そうとした。
流石に十五階全部を調べて回るのは頭がおかしい。
「ちょっと待て。一個でいいだろう? 足りない分は帰りに五人で探せばいい」
ダリル達が二十四階に行って、二十階に引き返すのが今日の夜ぐらいだ。
一個二時間の宝箱を一階ずつ丁寧に探している時間はない。
そう思って、父娘を止めた。けれども……
「いや、駄目だ。青い宝箱を探しているし、十七階は砂漠地帯だ。暑いし、毒サソリに砂サメがいるから危険だ。念入りに探すなら十五と十六階しかあり得るない。時間が足りないなら、砂漠は素通りすればいい」
「まぁ、それだったら問題ないか……」
おっさんの方がそれらしい事を言って、続行すると言い出した。
本当に砂漠を素通りするなら問題ないが、青い宝箱が十五、十六階で見つからなかったら探すだろう。
砂漠でも探すと言い出したら、娘を担いで二十階を目指せばいい。
あのおっさん一人じゃ、宝箱探しもモンスター狩りも出来ないからな。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
やがて神Sランクとなる無能召喚士の黙示録~追放された僕は唯一無二の最強スキルを覚醒。つきましては、反撃ついでに世界も救えたらいいなと~
きょろ
ファンタジー
♢簡単あらすじ
追放された召喚士が唯一無二の最強スキルでざまぁ、無双、青春、成り上がりをして全てを手に入れる物語。
♢長めあらすじ
100年前、突如出現した“ダンジョンとアーティファクト”によってこの世界は一変する。
ダンジョンはモンスターが溢れ返る危険な場所であると同時に、人々は天まで聳えるダンジョンへの探求心とダンジョンで得られる装備…アーティファクトに未知なる夢を見たのだ。
ダンジョン攻略は何時しか人々の当たり前となり、更にそれを生業とする「ハンター」という職業が誕生した。
主人公のアーサーもそんなハンターに憧れる少年。
しかし彼が授かった『召喚士』スキルは最弱のスライムすら召喚出来ない無能スキル。そしてそのスキルのせいで彼はギルドを追放された。
しかし。その無能スキルは無能スキルではない。
それは誰も知る事のない、アーサーだけが世界で唯一“アーティファクトを召喚出来る”という最強の召喚スキルであった。
ここから覚醒したアーサーの無双反撃が始まる――。
異世界でもプログラム
北きつね
ファンタジー
俺は、元プログラマ・・・違うな。社内の便利屋。火消し部隊を率いていた。
とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。
火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。
転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。
魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる!
---
こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。
彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。
注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。
実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。
第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる