ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
33 / 172
第一章:人間編

第33話 オヤジの紹介

しおりを挟む
「今日は休みにするか……」

 目標を全て達成して町に帰ってきたのが、月曜日の午前一時だった。
 疲れた身体で宿屋に向かって歩いていく。

 メルの筋力上昇LV2と体力上昇LV2の神器を強化したら、今日はスライムでも倒させよう。
 そろそろ一人でも倒せるだろうし、冒険者登録させておけば魔石の換金も出来る。
 ついでにスライムを倒している間は、俺も休めるからちょうどいい。

「すまない。娘を起こしたくないから、部屋を開けてくれないか?」
「申し訳ありません、お客様。お手数ですが、お子様を起こして扉を開けてもらってください」
「あっそ……」

 宿屋に到着すると、受付カウンターにいた男に頼んで、スペアキーで部屋の扉を開けてもらった。
 最初は断ってきたが、「夜中に扉を大声で叫んで叩きまくったら、他のお客さんに迷惑になるんじゃないのかな?」と教えたら、素直に開けてくれた。
 こっちは疲れているんだから、余計な労力を使わせないで欲しいもんだ。

「寝ているな……」

 部屋に入ると、メルは奥の方のベッドで寝ていた。ババアの家には帰らなかったようだ。
 部屋に置いてある鞄から着替えの服を取り出して、起こさないように静かにシャワー室に入った。
 さっさと身体から疲れと汚れを落として寝るとしよう。

 ♢

「隊長、隊長……」
「うっ……くっ……」

 ベッドで熟睡しているのに、頭を手で揺さぶられて起こされる。
 昼頃に俺が起きるまで待つという優しさは無いらしい。
 面倒くさいけど、一回だけ起きる事にした。
 神器を強化して、スライムを倒しに行かせよう。

「ふわぁー……メル、俺は今日は疲れているから休む。お前には日頃の修行の成果を見る為に、スライムを二十匹倒してもらう。二十匹倒したらここに戻ってこい。いいな?」

 手で欠伸を隠して、今日の訓練メニューを教えた。
 あとは神器を強化して、借りていた素早さ上昇の靴を返して、部屋から追い出すだけだ。
 その予定だったのに、メルが予想外の事を言ってきた。

「それならもう大丈夫です。土曜日と日曜日にスライムを百匹以上も倒しました」
「何?」

 嘘だと思ったが、証拠だと言わんばかりに綺麗な冒険者カードを見せてきた。
 俺の言いつけを守らずに、一人でダンジョンに行ったようだ。
 だが、怒るよりも反省の意味も込めて、このままやらせた方が都合が良い。

「……そうか、だったら今日も百匹倒してこい。指輪と手袋を強化するから楽勝だろ?」

 百匹なら五時間ぐらいはかかるはずだ。ぐっすりと二度寝が出来る。
 そう思ったんだが、まだ俺の二度寝の邪魔をしたいようだ。

「それは無理です。隊長が帰ってきたら、換金所に連れてくるように言われたんです」
「換金所? 一体誰に何の用で俺が行かないといけないんだ?」
「換金所のおじさんがパーティを紹介してくれたんです。私一人でダンジョンに入るのは危ないからって」
「ふーん、なるほどね……」

 メルの話を聞いて事情はだいたい分かった。
 メルが一人でスライムを倒しているのを見つけた冒険者パーティがいて、換金所に連れていたんだろう。
 それで保護者の俺を、どこかの雑魚新人冒険者パーティが説教したいらしい。

 俺は親でもなければ、行くなとキチンと注意していた。
 説教される筋合いはないが、会いたいのなら会ってやる。
 十階までの宝箱発掘作業員としてこき使ってやる。
 それぐらいの役にも立たない奴に文句は言わせない。
 
 ♢

「あのおじさんです」
「何だ、赤毛オヤジかよ」

 待ち合わせ時間を聞いたら、昼頃までに来て欲しいという事だったので、ギリギリまで寝てから向かった。
 メルの言う換金所のおじさんが、赤毛猿オヤジだったのが気になるが、まあいい。
 コイツが人を選んで仕事しているのがよく分かった。

「おい、オヤジ。来てやったぞ。俺にパーティを紹介したいんだろう?」
「おお! よく来てくれたな、カナン! こんな小さな女の子と二人だけで、ダンジョンに入っていると知っていれば、仕事なんて放り出して、もっと早く紹介できたのにすまなかった!」

 カウンターまで行って声をかけると、オヤジが頭を下げて謝ってきた。
 何か言い訳しているけど、俺には仕事を放り出す価値がないと言っているだけだ。
 さっさと雑魚冒険者を紹介してもらおう。

「そんなのはどうでもいい。紹介する奴は十階ぐらいまでは潜れるんだろうな?」
「もちろんだ! Dランクパーティの三人組で二十六階まで行った事がある」
「へぇー、それは凄いな」

 Dランクで三人組なら、俺が最後にパーティを組んでいた奴らとほとんど同じ実力だ。
 オヤジのくせに本当に良いパーティを見つけたみたいだ。

 パーティメンバーを聞くと、斧使いの重戦士、索敵担当の狩人、炎の魔術師だと答えた。
 三人全員が上位職だから、かなりの戦力だ。十階なんかで宝箱を探していたら、鼻で笑われてしまう。

 つまり、オヤジの本当の狙いは、メルの前で凄い冒険者達の実力を見せて、俺に恥をかかせる事だ。
 良いオヤジ面して、あとでメルに「あんな雑魚魔法使いよりも、この三人組のパーティに入りなさい」とか言うのだろう。
 性格の捻じ曲がったクソオヤジは、職場で俺に恥をかかされたから、嫌がらせをしたいらしい。
 そんな時間があるなら、かけ算でも覚えて、もっと早く換金できるようになればいい。
 
「どうだ、カナン? 物は試しだと言うだろう。コイツらとパーティを組んでみないか?」
「ああ、実力は悪くないな。あとは人柄だな。そっちも良いのか?」

 オヤジが気持ち悪い猫撫で声で聞いてきたが、顔面を殴らずに興味があると答えた。

「当たり前だ。タチの悪い連中を女の子連れのお前に紹介なんてしない。人柄は俺が保証する」
「分かった。そういう事なら一回会ってみるか。いま会えるのか?」

 このオヤジの保証はほとんどないようなものだ。
 実際に会って、俺の審査基準で実力と人柄は再評価させてもらう。
 そうしないと、安心して背中は任せられない。

「それは良かった。家の住所を教えるから行ってみてくれ。三人一緒に住んでいるらしい。家が気に入ったら、お前達も一緒に住んでいいと思うぞ」
「野郎臭い家に住めるか。ほら、仕事だ。魔石と素材があるから換金してくれ」
「分かった。大至急終わらせるから、ちょっと待ってくれよ……」

 住所が書かれた紙を受け取ると、代わりに魔石と素材が入った鞄をカウンターに置いた。
 これで金は手に入るけど、手土産とかはいらないだろう。
 それだと俺がパーティに入れてもらうみたいに見える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

処理中です...