ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?

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第一章:人間編

第5話 間話:剣闘士アレン(昇格祝い)

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 午後二時……

 ダンジョンから出ると、モンスターから取れた魔石と素材を換金所で売却した。
 その帰り道にお祝いという事で、ダンジョン近くの馴染みの酒場に向かった。
 ついにパーティランクがCからBに上がった。残りは最高ランクのAだけだ。

「ご注文は?」
「蜂蜜酒を四人分。大至急よろしくねぇー!」
「はい、蜂四ですね。少々お待ちください」

 丸テーブルに四人で座ると、早速酒だけ注文した。
 すぐに普通の顔の女給が分厚い円形グラスに注がれた、黄金色の蜂蜜酒を持ってきた。
 それを受け取ると、「乾杯!」と元気にグラスを持ち上げて、一気に冷えた酒を飲み干した。
 
「ぷはぁー! このまま一気にAランクですね!」
「調子が良い時は調子に乗らない方がいい。運が良かっただけだ。ここからは仲間を増やして安全に行こう」
「そんなのAランクになった後でも出来ますよ! 優秀なパーティには優秀な人間が自然に集まりますよ!」

 何事も勢いが大切だ。
 同じ剣士系なのに、隊長のヴァンはそれが分かっていない。
 地下43階まで潜れる冒険者はほとんどいない。
 競争相手の少ない深い階層で、青色宝箱から強力なアビリティ装備を手に入れる。
 危険な方法だが、それが一番早く強くなれる方法だ。
 
「優秀な人間か。ククッ、カナンと同じ考え方だな」
「なっ⁉︎ ちょっとちょっとやめてくださいよ。あれと一緒にしないでくださいよ」

 短髪緑髪の槍戦士ガイが笑って言ってきた。流石にあれと比べるのだけは勘弁してほしい。
 カナンは半年前まで、このパーティの隊長だった男だ。
 口だけの臆病者の腰抜けで、地下25階までしか潜れなかった雑魚冒険者だ。
 あれの言う事を二週間も聞いてしまったのは、人生最大の汚点だと言ってもいい。
 それぐらいに酷かった。

「確かにそうですね。まだ家に引きこもっているそうですよ」
「マジですか⁉︎ もう半年でしょ。冒険者どころか、人生辞めるんじゃないですか?」
「いや、それはないな。顔を隠していたが、夜中に走っているのを見た事がある」

 副隊長のロビンが、カナンの現在こ状況を教えてくれた。
 正直どうでもいいけど、ガイがそれを否定して、目撃情報を話してきた。
 どちらかと言うと、そんな夜中にお前が何をしていたのか気になる。

「えー、それ人違いですよ。今度捕まえてみましょうか?」
「やめておけ。本人だろうと、人違いだろうと面倒事になりそうだ」
「そうですよ。手負いの人間は獣と同じです。背後から刺されないように気をつけましょう」
「はーい」

 面白そうだと思ったのに、隊長と副隊長の二人が反対してきた。
 確かに闇討ちされそうで怖い。それにいなくなって本当に助かっている。
 今更、関わり合いになりたくない。

「カナンの話は終わりだ。しばらくは戦力強化する。焦ったところで失敗するだけだ。失った命は取り戻せない」
「そうですね。最深部までは残り七階ですが、油断せずに行きましょう」
「だったら強い冒険者を三人は欲しいな。40階以降は食糧補給がないと厳しい」

 隊長がカナンの話を終わらせると、今後の予定を話し出した。
 副隊長は賛成みたいだけど、ゆっくり慎重は疲れるから嫌だ。
 ガイが言うように強い冒険者を集めて、一気に50階を目指した方が早くて楽だ。

「確かに食糧と回復、あとは魔法使いも足りないですね」
「回復と魔法使いなら、魔剣士の所と手を組めばいいんじゃないのか?」
「同盟ですか。確かに同じBランクならば、可能性はありますね」

 誰も蜂蜜酒を飲まない。そろそろ料理を注文したい。でも、今は我慢しよう。
 この流れならば、新しい仲間を入れてくれそうだ。是非とも入れて欲しい人がいる。
 隊長と副隊長の会話に緊急参加した。

「だったら、女子も入れましょう。男だけだとバランスが悪いです。可愛い娘がいるん——」
「女は必要ない!」
「ひぃっ‼︎」
「お前がその女と付き合いたいなら好きにしろ! だが、俺達を巻き込むな!」
「その通りです。女子は気が散るだけで、戦力低下のお荷物にしかなりません」

 女子の話をした途端、ガイが大声で怒鳴って、テーブルを手の平で激しく叩いた。
 ビクッと俺だけ驚いていると、副隊長も急に不機嫌になって反対してきた。
 まだ話の途中だから最後まで聞いてほしい。

「いやいや、町のケーキ屋で働いているから料理も——」
「アレン、ケーキ屋で働きたいなら剣を置いて出ていけ」
「そんなぁー‼︎」

 食糧係を紹介したいだけなのに、恐ろしく冷たい声で隊長が脅してきた。
 前にも女性冒険者を仲間に入れようと提案したら、全員に反対された。
 新しい仲間三人も全員男だったら最悪だ。40階まで片道五日ぐらいはかかる。
 二週間も男だらけの生活なんて精神が死んでしまう。

「会うだけでいいです! お願いします!」
「女は駄目だ。嫌ならお前がパーティを抜けて、好きにやればいい」
「苺のショートケーキだけでいいです! 食べてから決めてください!」
「食べる必要もない。ケーキは男を惑わす毒薬だ」
 
 意味が分からない。ケーキ屋が駄目なのか?
 額をテーブルにくっ付けて、必死にお願いしているのに、元隊長と同じように聞く耳を持たない。
 昔、女子と何があったのか知らないけど、ケーキ屋のエスカちゃんはマジ天使だ。
 隊長達の心の傷も生クリームできっと隠してくれる。
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