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わくわくwack×2フラーグ学院 箱庭 編
相18・円1
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「企画仕様書に『わくわくフラーグ学院』の登場キャラクター達の全項目ステータス値を、あらかじめ定めて記載した理由を教えてください。」
円城寺博士から『わくフラ』の名称が出て、私は姿勢を正した。
「あ、はい。秀島氏の要望で、誕生日を持つ攻略キャラクターの生年を秀島氏の生年にして、占星術によるステータス値の増減をする事になったんですが・・・それだとゲームのキャラクターとは隔たりが出てしまうので、占星術で導きだした増減と合わせ手動で全項目ステータス値を操作して、ゲームのキャラクターに近づけたんです。」
「ゲームのキャラクターとは、『アイ』とフラーグ学院に通う王侯貴族だね。」
「はい、あ、あと平民にも何名かいます。」
「そのようですね。魔力の大きさについては、どう考えましたか。」
「魔力は・・そもそも魔石に属性を付与する力なので、重要視してなかったです。・・私が攻略キャラクター達に求めたのは秀でた魔力ではなく、ゲームに登場したままのキャラクター像でした。なので、攻略キャラクター達の魔力の大きさは標準を上回る位に定めて、彼ら以外の魔力は、自動設定に任せました。」
「・・・王侯貴族についての特有の性質は『わくわくフラーグ学院』の設定資料集や攻略サイトには明記されていないが、どうやって決めましたか。」
「攻略キャラクターのプロフィールに基づいています。・・えっと、ジェネラス・ケーナインだと誠実な性格で、帯刀して王太子を警護する側近だったので、それを拡大解釈して、ケーナイン一族は正義感が強く、身体能力が高いので武術に秀でているとか・・・。チェリン・サウザンドは一番背が高くてスタイルが良く、平民の主人公にも初対面から友好的で気軽に話すことから、サウザンド一族は、すらりとしたモデル体型の者が多く子供や女性に優しくて、男性はレディファーストが習慣・・と、しました・・・。」
「・・・・・・。」
(あれ?説明、足りないかな・・キュリテグロースの男性のアホ毛については、絶対言いたくないけど・・どうしよう。)
円城寺博士が黙ったので、私は焦ってぐるぐると考えていた。
「今日、箱庭の発表数が少なかったでしょう。」
「・・そうで・・。」
「特定のキャラクターに突出した能力を与えるなど、圧倒的な力を持つ中心人物を作り、その者に都合の良い設定をしたゲームや、アニメ、漫画の『箱庭』は、ほぼ塵と化したのですよ。」
私の相槌を待たず、淀みなく円城寺博士は語りだした。
「そんな特定の者へ施した歪が100年も経たずに、早ければ3.40年で顕著となり、全ての生物は死滅し最終的には箱庭内の物質が分子レベルに分解され、ただ塵が舞う世界になり果ててしまった。」
「・・・・・。」
「あなたの箱庭は王侯貴族に特殊な魔力を持たせているが、限られた資源を枯渇させずに上手く循環させていて、陸地面積に対しての人口比率が残存する箱庭の中で一番高い。これは素晴らしい事です。」
「・・・ありがとうございます。」
「忌憚なく話して欲しいのですが、現実世界で天体が作用した過去の社会事象が、どうして『箱庭』で起こったと思いますか?」
私の発表は現実世界と『箱庭』の類似を列挙し、西洋占星術の解釈を照らし合わせたが、考察は入れていなかった。
・・・円城寺博士の声は耳に心地よく、私は内に秘めていた考えを言いたくなった。
「想像でしかないのですが・・・、占星術で造ったステータスの増減は、キャラクター達の深層意識より深い・・・阿頼耶識で占星術のメッセージへ還ったかもしれないと思いました。」
「!!ほう!!」
「・・まっったく根拠の無い話ですけど、10万人のキャラクター達の阿頼耶識は『箱庭』の集合的無意識となって、過去データの天体にフィードバックして重力波をもたらし、天体の本来の意味を取り戻して『箱庭』世界にリアルと同じような天体の軌跡からの影響が生じたかも・・・とか考えたら、浪漫があって楽しいと言うかなんと言うか・・・。」
円城寺博士の感嘆に、絶対人には言えない脳内で繰り広げていたオカルト思考を、続けて喋ってしまっていた。後日、私は想い出すたびに恥ずかしさでのたうち回る事になる。
「実に面白い発想ですね。次回の発表も楽しみにしています。」
「え?・・がんばります・・。」
「お疲れのところ、お時間いただきありがとうございました。」
「・・は、はい、いえ、大丈夫です。ありがとうございました。失礼します。」
急に質問が終わり、締めの挨拶を言い渡されて、驚きつつ席を立った。
会議室の出入り口で振り返って一礼しながら気付いたのだが、博士は私が来た時と体勢が全く変わってなかった。
会議室を出ると、硝子張りの壁の向こうの青空に濃灰色の雲塊を見つけ、私は夫の元へと急いだ。
するとエントランスまでの短い道のりで、私は黄色いシャツの美青年とすれ違った。黒曜の瞳を僅かに細めて微笑む彼は、日本人離れした美しさだった。
(・・眼福だ・・。彼も博士に呼ばれたのかな?)
日常からかけ離れた邂逅の連続で、イコリス・プラントリーの環境に配慮した設定は思考から欠落していて、正確に博士の質問へ答えてなかったことには気付かなかった。
― 円1 ―
耳を裂くような雷鳴で目覚めた私は、両目を見開いた。なぜか左目の高機能人工眼球が機能しておらず、視界が霞む。
激しい雨音を紡ぎだす黒い雲は、会議室を青黒く染めていた。
「ようやく、眠りから覚めましたか。円城寺博士。」
声がした方へ体を向けると、私の横に見知らぬ青年が立っていた。
彼は手に持っているスマートフォンを私に掲げた。右手にスマートフォン、左手には取り外した電池パックを、美しい顔を歪めながら私に見せつける。
私は着ているシャツの胸ポケットをまさぐった。あるはずのスマートフォンはポケットになかった。
「な、何をしているんだ?返してくれっ。それがないと左目が見えないんだっ。」
美しい青年は口角を歪めたまま首を振り、私のしゃがれた声の訴えは、拒否された。
どうやら彼は、ずっと微笑んでいるらしい。
「こうでもしないと、会話を盗み聞きされてしまう。そのパソコンもこの会議室の監視カメラも、完全にオフにしました。覗き見が出来ないようにね。」
そう言われて、長机の上のパソコンを見ると、裏返されてバッテリーが抜かれていた。
落雷による停電なのか、会議室には明かりがついていない。天井の隅に備え付けられた監視カメラは、黒い布が掛けられていた。
「・・なぜ・・こんなことを・・。」
「円城寺博士。あなたは15分程前にこの会議室で、ある女性と会っていた。覚えていますか?」
「・・・?・・・。」
私には彼の言っている意味が、分からなかった。
円城寺博士から『わくフラ』の名称が出て、私は姿勢を正した。
「あ、はい。秀島氏の要望で、誕生日を持つ攻略キャラクターの生年を秀島氏の生年にして、占星術によるステータス値の増減をする事になったんですが・・・それだとゲームのキャラクターとは隔たりが出てしまうので、占星術で導きだした増減と合わせ手動で全項目ステータス値を操作して、ゲームのキャラクターに近づけたんです。」
「ゲームのキャラクターとは、『アイ』とフラーグ学院に通う王侯貴族だね。」
「はい、あ、あと平民にも何名かいます。」
「そのようですね。魔力の大きさについては、どう考えましたか。」
「魔力は・・そもそも魔石に属性を付与する力なので、重要視してなかったです。・・私が攻略キャラクター達に求めたのは秀でた魔力ではなく、ゲームに登場したままのキャラクター像でした。なので、攻略キャラクター達の魔力の大きさは標準を上回る位に定めて、彼ら以外の魔力は、自動設定に任せました。」
「・・・王侯貴族についての特有の性質は『わくわくフラーグ学院』の設定資料集や攻略サイトには明記されていないが、どうやって決めましたか。」
「攻略キャラクターのプロフィールに基づいています。・・えっと、ジェネラス・ケーナインだと誠実な性格で、帯刀して王太子を警護する側近だったので、それを拡大解釈して、ケーナイン一族は正義感が強く、身体能力が高いので武術に秀でているとか・・・。チェリン・サウザンドは一番背が高くてスタイルが良く、平民の主人公にも初対面から友好的で気軽に話すことから、サウザンド一族は、すらりとしたモデル体型の者が多く子供や女性に優しくて、男性はレディファーストが習慣・・と、しました・・・。」
「・・・・・・。」
(あれ?説明、足りないかな・・キュリテグロースの男性のアホ毛については、絶対言いたくないけど・・どうしよう。)
円城寺博士が黙ったので、私は焦ってぐるぐると考えていた。
「今日、箱庭の発表数が少なかったでしょう。」
「・・そうで・・。」
「特定のキャラクターに突出した能力を与えるなど、圧倒的な力を持つ中心人物を作り、その者に都合の良い設定をしたゲームや、アニメ、漫画の『箱庭』は、ほぼ塵と化したのですよ。」
私の相槌を待たず、淀みなく円城寺博士は語りだした。
「そんな特定の者へ施した歪が100年も経たずに、早ければ3.40年で顕著となり、全ての生物は死滅し最終的には箱庭内の物質が分子レベルに分解され、ただ塵が舞う世界になり果ててしまった。」
「・・・・・。」
「あなたの箱庭は王侯貴族に特殊な魔力を持たせているが、限られた資源を枯渇させずに上手く循環させていて、陸地面積に対しての人口比率が残存する箱庭の中で一番高い。これは素晴らしい事です。」
「・・・ありがとうございます。」
「忌憚なく話して欲しいのですが、現実世界で天体が作用した過去の社会事象が、どうして『箱庭』で起こったと思いますか?」
私の発表は現実世界と『箱庭』の類似を列挙し、西洋占星術の解釈を照らし合わせたが、考察は入れていなかった。
・・・円城寺博士の声は耳に心地よく、私は内に秘めていた考えを言いたくなった。
「想像でしかないのですが・・・、占星術で造ったステータスの増減は、キャラクター達の深層意識より深い・・・阿頼耶識で占星術のメッセージへ還ったかもしれないと思いました。」
「!!ほう!!」
「・・まっったく根拠の無い話ですけど、10万人のキャラクター達の阿頼耶識は『箱庭』の集合的無意識となって、過去データの天体にフィードバックして重力波をもたらし、天体の本来の意味を取り戻して『箱庭』世界にリアルと同じような天体の軌跡からの影響が生じたかも・・・とか考えたら、浪漫があって楽しいと言うかなんと言うか・・・。」
円城寺博士の感嘆に、絶対人には言えない脳内で繰り広げていたオカルト思考を、続けて喋ってしまっていた。後日、私は想い出すたびに恥ずかしさでのたうち回る事になる。
「実に面白い発想ですね。次回の発表も楽しみにしています。」
「え?・・がんばります・・。」
「お疲れのところ、お時間いただきありがとうございました。」
「・・は、はい、いえ、大丈夫です。ありがとうございました。失礼します。」
急に質問が終わり、締めの挨拶を言い渡されて、驚きつつ席を立った。
会議室の出入り口で振り返って一礼しながら気付いたのだが、博士は私が来た時と体勢が全く変わってなかった。
会議室を出ると、硝子張りの壁の向こうの青空に濃灰色の雲塊を見つけ、私は夫の元へと急いだ。
するとエントランスまでの短い道のりで、私は黄色いシャツの美青年とすれ違った。黒曜の瞳を僅かに細めて微笑む彼は、日本人離れした美しさだった。
(・・眼福だ・・。彼も博士に呼ばれたのかな?)
日常からかけ離れた邂逅の連続で、イコリス・プラントリーの環境に配慮した設定は思考から欠落していて、正確に博士の質問へ答えてなかったことには気付かなかった。
― 円1 ―
耳を裂くような雷鳴で目覚めた私は、両目を見開いた。なぜか左目の高機能人工眼球が機能しておらず、視界が霞む。
激しい雨音を紡ぎだす黒い雲は、会議室を青黒く染めていた。
「ようやく、眠りから覚めましたか。円城寺博士。」
声がした方へ体を向けると、私の横に見知らぬ青年が立っていた。
彼は手に持っているスマートフォンを私に掲げた。右手にスマートフォン、左手には取り外した電池パックを、美しい顔を歪めながら私に見せつける。
私は着ているシャツの胸ポケットをまさぐった。あるはずのスマートフォンはポケットになかった。
「な、何をしているんだ?返してくれっ。それがないと左目が見えないんだっ。」
美しい青年は口角を歪めたまま首を振り、私のしゃがれた声の訴えは、拒否された。
どうやら彼は、ずっと微笑んでいるらしい。
「こうでもしないと、会話を盗み聞きされてしまう。そのパソコンもこの会議室の監視カメラも、完全にオフにしました。覗き見が出来ないようにね。」
そう言われて、長机の上のパソコンを見ると、裏返されてバッテリーが抜かれていた。
落雷による停電なのか、会議室には明かりがついていない。天井の隅に備え付けられた監視カメラは、黒い布が掛けられていた。
「・・なぜ・・こんなことを・・。」
「円城寺博士。あなたは15分程前にこの会議室で、ある女性と会っていた。覚えていますか?」
「・・・?・・・。」
私には彼の言っている意味が、分からなかった。
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