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十九話 騎士団員視点
しおりを挟む「殿下の命令により、王国騎士団および王国魔導師団から精鋭を選出し赤いオーガのための討伐部隊を結成することになった!」
王都にいるほとんどの騎士は王都にある騎士団本部に集められていた。
「赤いオーガ、か」
騎士が集まっているところより高い場所で話している副団長の言葉を聞いて、俺は数日前の出来事を思い出した。
騎士団長を無傷で殺した化け物。
不幸なことに俺はその化け物と遭遇してしまった。襲われることはなかったけど、俺の頭の中には恐怖が刻み込まれた。
あれから数日経つが、王都周辺の警戒や見回りは怯えながらやっている。
あんな化け物に襲われたら生きて帰ることは不可能だ。それは俺が新米だからじゃなく、ここにいる騎士団員全員に言えることだろう。
それなのに自分達から討伐隊を結成して、討伐しに行くなんて馬鹿げている。殿下の命令だから逆らえないのかもしれないが、こっちから手を出して王都にでも向かってきたりしたら終わりだぞ。
「副団長さんも、もうすぐ騎士団長任命式があるってのに可哀想だよなぁ」
「この討伐で命を落とす可能性の方が高いからな……」
俺は隣にいるルデウスの言葉に同意した。
騎士団長が殺されたため、副団長が騎士団長へと繰り上がる。
騎士団長が不在では騎士団の指揮に乱れが出ることもあるそうで、騎士団長任命式はもう目前だった。
「討伐隊は騎士団から三十名! 魔導師団から二十名! を選出した合計五十人の討伐隊だ!」
五十人、妥当な人数だ。
一体の魔物に対しての数としては相当多いが、今回の討伐対象は規格外の化け物だからこのくらいは必要だ。
これ以上多くすると連携が乱れたりして余計死人が増えるだけだろう。それに、半端な実力じゃ足手まといだ。
「その五十人で討伐隊を結成するが、プラスで十人ほど討伐隊の支援をしてくれる者を募りたい!」
討伐隊の支援をする人間を連れて行くことはそう珍しいことじゃない。
討伐対象との戦闘まで少しでも体力を温存するために、支援部隊が道中の魔物を討伐し、予備の剣や食料などを運搬する。
戦闘では足手まといなので後ろで隠れていればいいらしい。
俺はやったことがないけど聞いた話ではこんな感じだった。
何時もなら支援部隊は上から指名が入るのだが今回はそうではないらしい。
指名されてしまったら仕方なく行かなければならないが、ただでさえ危険な討伐なのにわざわざ自分から支援部隊に入りたいなんて人間はいないだろう。
最悪の場合、討伐隊と支援部隊は一人も帰れないだろうから。
「……」
それから数分、静かな時が流れる。
俺の予想通り支援部隊に名乗り出るような人間はいなかった。
騎士は国民を守るのが仕事。騎士になる理由は色々だが、どんな理由で騎士になったにしろほとんどの人間は少なからず国民を守りたいという意思を持っている。
実際、国民を守るために魔物と戦って死んだ騎士など山程いる。守るべき国民をおいて逃げた騎士なんてほとんどいない。
だからこれが少し強い程度の魔物なら国民のためにと名乗り出る人間はいただろう。
だが、今回だけは例外だ。
騎士団長を無傷で殺した。この情報だけで赤いオーガがどれだけ異常なのか説明するには十分だ。
ここにいる俺を含めた数千人の騎士は誰一人として勝てる未来が見えていない。
いくら国民を守ることにやりがいを覚えていても、義務だと感じていても死ぬと決まっている場所に向かいたい人間などいるはずがない。
「分かった。こうなる事は予想していたし、そうだろうと思ったからこちらで支援部隊を選ばなかったわけだ。
支援部隊がなくても討伐に行けない事はない。
討伐隊は明日の朝、ネケラスに向けて王都を出る。それまでに支援部隊に名乗りを上げてくれるような者がいたなら私のところまで来てくれ。以上だ」
「なっ……」
心臓が跳ね上がった。
心拍数がどんどん上がっていく。
今ネケラスって言ったか?
他の街の方へ移動していて、その街の近くにある村を襲ったと推測される事から街を襲う可能性も高い。だから今回の討伐隊が結成される、そう聞いていたけど。
まさか、その街がネケラスなのか……
……無事でいてくれ、エレナ。
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