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二十話
しおりを挟む朝日が昇った頃に起きた私はもう一眠りしようと目を閉じた。
カーテンの間から入る微かな光で目を覚ましてしまうなんて眠りが浅いのかもしれない。最近はころころと寝る場所が変わるのでそのせいなのかな?
私の仕事はアティスのサポートですが、帝国騎士団の手に負えない魔物なんてそうそう出るものじゃないですし、仕事なんて無いと思うので今日は一日ゴロゴロすることにします。
今日一日の方針を固めたところで扉がノックされました。
朝食でしょうか?
扉を開けて入ってきたのは朝食を持ったメイドさんではなく、アティスでした。
「マリア、早速ですまないが今手の空いている騎士ではどうにもならない魔物が出てしまったみたいでね。
昨日帝都に着いたばかりで申し訳ないけど一時間後に出発できるようにしてもらえるかな?」
そ、そんなッ……
「……分かりました」
今日一日の方針を早々に変更しなければいけないようです。
あぁ、一日中ゴロゴロして過ごしたかったです……
アティスから話を聞いた後、メイドさんがすぐに朝食を運んできた。
それを食べて、準備をしてアティスの元へ行く。
準備といっても私の私物なんて無いし、服とかも用意してくれてあるようなので特に準備に焦ることはなかった。
「それじゃ、行こうか」
用意してあった馬車に乗り込むと、すぐに動き出す。
「アティスさん、今日の仕事の内容は?」
馬車の中でまだ聞いていなかった仕事内容を聞いてみることにする。
「今回の仕事は王国国境近くにある村が目的地です。
その村の付近で数日前にミノタウロスが現れました」
ミノタウロス?
ミノタウロスってB級冒険者が倒せる程度の魔物ですよね?
「ミノタウロスってそんなに強かったですか?」
「いいえ、ミノタウロス自体は弱くはありませんが冒険者ギルドに依頼を出せばすぐに討伐してもらえるはずです。
現に数日前にミノタウロスはしっかりと討伐されました」
「なら、どうしてその村に?」
「倒したはずのミノタウロスが、二日前に目撃されました」
「生き返ったってことですか?」
「はい。1度目に冒険者が与えた致命傷の跡が薄っすらと残っていたそうです。それと、生き返ったミノタウロスは影を操る能力を覚えてしまったようで手の空いていた騎士には手に負えないと」
一度死んだ魔物が蘇る。
しかも新しい能力まで持って。
そんなこと数年に一度あれば多いくらい滅多にない事だ。
これも私が聖女を辞めた影響……?
でも、私の結界って王国にしか張ってなかったよね?
「それに、全体的に強くなっているらしいですね。確認に行った騎士からの報告ではSランク冒険者パーティーでも手に負えないだろうとのことです」
「確かにそれは大変ですね。間に合うといいですけど……」
ここから王国国境付近まで行くのに七日か六日ほどかかる。それまでに村が襲われないといいですけど。
「それについては問題ないと思いますよ。ミノタウロスを倒せないにしても騎士に警備はさせてありますし、この後、馬じゃなくて地竜に馬車を引いてもらいますしね」
アティスから説明を受けて少しすると街のある場所で馬車が止まる。
窓から顔を出して見ると確かに地竜がいる。
確か、羽が無い竜だけどとにかく走るのが速い魔物だったはずです。走る速さは馬の三倍以上と言われているくらい速いとか。
地竜を使えば王国国境付近と言えど二日程度で着くはずですが、よくこんなに地竜を教育できますね。
魔物としては人間になつきやすい非常に稀な魔物ですが、それでも言うことを聞かせるのは至難の技です。なつきやすいと言うのも魔物としてはですから相当難しいはずですが……
窓から見る限り十一匹の地竜が大人しくしている。高ランクの魔物ですし、扱うのも難しかったので王国でなんてほとんど見たことなかったはずですけど……帝国って優秀ですねぇ。
止まった馬車の馬と地竜がすぐに交換され、目的地まで走り出す。
まぁ、何はともあれ初お仕事の始まりです!
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