魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第五章 ヴェステ王国編

おまけ1 ニュールの戻る場所 1

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過ぎ行く時は刻むと言うのに、永遠に変わらぬ黄白色の光溢れる無限に広がる空間。
その有って無き空間にて、苦渋の決断が下され契約が成立した。

世界を動かす意志持つ記録…無限意識下集合記録によって、望む場所へと一気に移動させられる。そこは薄暗い一室であり、今までいた煌めく光溢れる場所との落差で視界奪われた上に、その他の感覚も狂わされている状態になっていた。

「ここはどこだ…」

思わず声に出し呟いていた。
望む場所へ辿り着く…と言われたが、自身が望む願いなど思い及ばなかった。

「きゃっ…」

部屋の主と思われる者が、闇の中にある人の気配に驚き小さく叫ぶ。
その者は吃驚した後、今聞こえた声の主が待ち望んでいた思い寄せる者であると気付く。ゆっくりと目を見開き、自身の口を両手で塞ぎ…更なる驚きの…喜びの…叫びを圧し殺す。
満面の笑顔の花が開き…声の主の名を優しく甘く思いを込めて呼ぶ。

「ニュール…」

ニュールも其の声で自分の辿り着いた場所を把握する。
無限意識下集合記録の管理する領域から、選択の時を終えたニュールが飛ばされた場所。そこは数刻前に塔の地下に降りる前、最後にニュールが訪れた…モモハルムアがプラーデラの王城で滞在する部屋だった。

モモハルムアは薄暗い闇の中で気配ある方向を見極め、瞳潤ませつつ愛しい者を探し出す。そして薄ぼんやりと浮かぶ影を、煌めき入る眼差しでジッと見定めると素早く立ち上がる。
先刻のニュールの治療で、一気にモモハルムアの傷の回復は進んだようだった。

「こんな時間にすまない。強制的に転移させられ出てきたのが…」

ニュールが暗闇の中で視覚取り戻した時には、いつの間にか近付き目の前に立つモモハルムアに抱きつかれていた。
モモハルムアの熱い思いが…高ぶる魔力と共に送らる。ニュールも正面から思い込められた魔力を受け止め、2人の間に綺麗に巡る魔力の環が出来上がり煌めく。

「無事で…無事にお戻りになられて…本当に…本当に良かった…」

涙し、ひしと抱きつきながら何度も呟き、モモハルムアはニュールの無事を確かめる。


王都への大魔力による直接の攻撃から、避難してきた民達、臣下、城壁内に在る全てのモノをニュールは守りきった。
地下で蠢いていた大地創造魔法陣エザフォスマギエンが引き起こす大地への強大な破壊的魔力も大賢者達で協力して止め、その後起こった揺り戻しによる被害もある程度防いだ。

城の内はひっそりとし、戸外の方が人の気配が濃いようである。
ニュールが出立する前に出していた指示に従い、王宮広間前の広場では難を逃れるために集まった何も知らぬ民達のための炊き出しが行なわれ、未だ続いているのであろう。
惨事の後の混乱する状況下、少しでも人手が必要な時である。モモハルムアは助け手になりたくて、始めは自ら手伝うと申し出ていた。
一昨日ニュールの代わりに受けた金剛魔石の攻撃で瀕死の状態となっていた事は周知の事実であり、申し出に許可を与えるような者は流石に居なかった。

「今は獣の手だって借りたいぐらい忙しいはずよ、私だってその場に行けば何かしら役に立つはずです!」

モモハルムアは散々主張するが、誰に聞いても安静にしているように説得されるだけだった。しかも、フィーデスが激しく反対する。

「お願いですからモモハルムア様は此方で療養していてください。彼の者の治療受け劇的に改善したとは言え、つい先日に生死の境から戻ったばかりなのです!」

強い口調だが泣きそうな表情で留めようとする。
それでも此の混迷の中、何も出来ないことに憤りを感じるモモハルムアは頑なに主張し続ける。

「座ったまま出来る手伝いだってあるはずよ」

「なりません!! 其れならば私が剣で野菜切る方がましです」

「……」

モモハルムアは呆気にとられ、フィーデスの言葉に異議申し立てることが出来なかった。
お嬢様暮らしはしていたが、モモハルムアは趣味として料理をするため、厨房に出入りすることもあった。だが、フィーデスは純粋に武を極める道を選んでいたため、狩りは出来たとしても調理などの家事全般に手を出したことはなかった…と言うか、拒否するぐらい苦手なようであった。
更に守護者ではあるが騎士でもあるフィーデスは、剣を大切にしている。少し感性がズレている気もするが…剣を引き換えにしてでも止めたいと言う、決死の覚悟から出る言葉なのだった。

「…御免なさい、無茶を言いすぎました。だから貴女も無茶な遣り方での手伝いはしないでね」

モモハルムアは自身の焦りがある事にも気付き、引き下がった。
結局フィーデスに諫められ、安静に過ごすことを約束させられた。だが、フィーデスにも約束してもらうことにした。

「私は一人でも大丈夫だから、代わりに手伝いには出て頂戴ね」

そしてフィーデスは言葉通り実行し、悪戦苦闘しながら今も現場で立ち働く。
仕方なく、滞在する部屋で休むことを受け入れたモモハルムア。
そんな状態だったため、ニュールは短い時間とは言え穏やかにモモハルムアとの時間をゆったりと持つことが出来た。
再度同じ場所を訪れたニュールが咎められなかったのも、食料や寝具などの支給の手伝いを未だフィーデスが行っているためである。

もしフィーデスがモモハルムアの側に留まっていたならば、闇の支配する刻限…いきなりモモハルムアが休む部屋に現れ、小さく…とは言え叫び声を上げさせる不届き者を発見したのならどうなっていたか…。
厳しめの守護者フィーデスの剣が有無を言わさず侵入者に裁きを下し、一刀両断で排除したであろう。


ニュールは転移する前に更なる危機に対処するため、賢者の塔である黄の塔へ赴く…と周囲の協力者達に一応伝えてはいる。
様々な大事に備えるための指示を出していたが、何の危機に対してなのか…共に進んできた者達以外には詳しく知らせなかった。
知ることで予想外の行動起こし危険に陥るより、この場所が安全であると言う安心感ある中で留まらせたかったのだ。

モモハルムアには出立直前に治療がてら? …偶々?…会う機会有ったからなのか、緊密な仲間同様に直接ニュールから理由を聞かされることになった。
勿論それは偶々では無い。
ニュールは黄の塔に赴く前にわざわざモモハルムアの部屋へと立ち寄ったのだ。

「なぜ立ち寄るのか」 …今誰かに理由を尋ねられたら、「分からない」 とか 「何となく」 …としか答えようがないとニュールは思った。

" 本能 " …とでも言えそうな、衝動による決断だった。

『治療…必要なのは治療だ』

心残りのある気持ち… 「何となく」 …の理由を、ニュールが無理やり考え辿り着いた答えだった。

これからニュールは淡黄の間へ赴き、塔と繋がり地下へ降りる。
それは白の塔で散々拒んだ接続である。
白の塔で散々準備させられたので明確な手順も理解している。刻々と時が迫るのも分かっているのに、此の場所へ立ち寄らなければいけない理由…強制力ある思いの根拠を探す。だが、思いついたのは取って付けた様な単純な理由しか思い浮かばなかったのだ。
モモハルムアの部屋の前に立ち、扉叩く。

「地下で大地を動かし破壊する魔法陣が巡り始めている。ただし、止めるためには塔に繋がらねばならない…その前に一応最後の治療を…」

部屋に赴いたニュールがざっくりと説明すると、モモハルムアは心配そうに語りかける。

「ニュールは大丈夫なのですか?」

元々ニュールは、心配したりされたりする様な者がいる場所から連れ出され、力だけが我が身を救う…と言うような場所に叩き込まれたり…命繋ぐだけに費やす時間が長かった。
あの場所から逃亡し一般の人々の中に入るまで、危険な場所への立ち入りで心配されるようなことは皆無だった。常識外れな力持つニュールには、それが当然の事になっていたのだ。

その後も立場は変われど強い力持つニュールは、他者の安全に心配る事は多かったが自身の身を心配されるようなことは少なかった。
故に、モモハルムアに心配される事は、身の置き場のない…っと言った感じのムズ痒さを感じさせた。
それでも、寄せられる心配す心心が嬉しかった。

『人を思いやれる強さ持つ者…だからこそ守りたかったのかもしれない』

ニュールが金剛魔石の攻撃を受けたとき、自身でそのまま攻撃を受けていたのなら…全てを消し去るか…自身を消し去るか…の2択になっていた気がする。

『ここに今存在し、守りたいと思う者が居るのは…』

余計な事を考えると遣るべきことを放置してしまいそうなので、ニュールは一旦心に鍵をかけ保留する。
問いかけには答えず、此処に来た理由を告げ実行する。

「最後の治療を…」

そう言って、癒えきっていない傷を抱えて寝具の上で起き上がっているモモハルムアへ近づく。
ニュールの体内にある特別な魔物魔石の治癒の力高める魔力引き出す。血液を杯に注ぎ飲ませても効果はあると思われるが、一番効果的で単純な口付けにて魔力を注ぎ込む。
その癒しの力は体内を巡り、治癒を促す。癒される場所は魔力で身体を輝かせ、患部を活性化し再生を促しながら傷を完治へと導いていく。
そのお伽噺の様な口付けによる治癒魔力は、若干の副作用を生む。治癒の力と共に人を魅了する力を持っているため…治療施された者を惑わせ釘付けにする。
治療を受けたモモハルムアの本能は活性化され、離れていく唇が惜しくてたまらない気持ちになる。心蕩けさせ逆上せるような眼差しになり、横に座わるニュールへと思わず糸繋がるかの様ににじり寄り懇願する。

「もっと…」

一瞬たじろぐが珍しくニュールはその言葉に応じ、もう一度…治療以外の気持ちまで入ってそうな熱い口付けをモモハルムアへ捧げる。
絵面だけなら…通常より年齢域が低めな者が好みの、立派な犯罪者の出来上がり…と言った風に見られてしまいそうだ。
ニュールがいくら20代後半とは言え…見た目は40代半ば過ぎの年齢である上に、飾り気の無いモモハルムアは余りにも幼げで儚い感じだった。
まだモーイぐらいの立年の儀…成人前後の年齢層を相手にする…っと言う方が理解できる者は多いだろう。
本来のニュールの好みは、それさえも幼いと感じるぐらいだ。出るとこ出て引っ込む所引っ込むメリハリある大人な肢体や雰囲気が大本命であり、ニュールの趣味が変化したというわけでもない。
魔物の本能で考えても、生物として相手を選ぶなら成熟した者を選択するのが妥当である。
数年を経てから迎え入れねばならない様な者を、待ってまで受け入れる必要性を感じない…それにも関わらずニュールの心は強く動く。

『この者で無ければ要らない…』

ニュールは心からの思い…衝動のような思いが湧き上がるを感じた。
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