魔心を持つ大賢者の周りの子~一度出直して来いって本気?

3・T・Orion

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15.闇の意思に浸り

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穢れた魔力に切っ掛けを与え、ラオブは自身を器にすべく導いた。
其れ自体が1つの意思持つモノであるかの様に、一斉に動きラオブを目指し…その中へと集約し始める。

「私如きでは、呑み込まれるだけかもしれません…それでも可能性と、貴方が引き受けざるを得ないのではないかと言う2つの希望に掛けます。2つとも願いが弾かれるのなら…自分に運が無かったと諦めます」

ラオブの捻じ曲がった信念は周囲を巻き込み、歪んだ希望を叶えるべく賭けに出る。

闇石が持つ魔力は、死者の意思残る穢れた魔力である。
大概は生物の死後、魔力と意思は分かたれる。

但し強い思い抱き逝った者は魔力の中に思いが残る。良き思いも悪しき思いも…絡みつき、分かたれぬ魔力は執着や指向性を生む。
そして生きている者へ関わろうと纏い付き、掻き乱す。

通常、穢れた魔力は空間に漂い続ける事で意思と魔力が薄まり分離拡散するか、往古の機構に取り込まれるかして循環に戻るのが最良の帰結である。
そして、闇石に取り込まれ、永遠に意思残したまま留まるのが最悪の状態である。
魔石が風化して消滅しない限り、純粋な悪影響持つ力として残るであろう。魔力であるのは変わらないので留まる魔力の利用も可能であるが、穢れを分離せず扱う事は難しい。

魔力が貯蔵されて間もない闇石は、賢者であれば多少の危険と不快感伴うが通常の攻撃魔石と同様に扱える。
だが、魔力多く含むものは一部の者しか扱えない。
更に多くの魔力含む、満ちた状態の闇石は大賢者でも扱いは慎重になる。

大賢者は機構の代わりをなし、分離して意思は意識下の奥底へ流し入れ彼方へ送り、魔力は体内魔石である賢者の石に蓄積する事が出来る。
賢者は器となることは可能であるが、扱う事は難しい。
1名の…器となる者の犠牲を覚悟すれば、魔力に宿る意思を切り離し犠牲者の魂と共に見送り、魔力だけ取り出すことは可能である。
内包者や非内包者ならば、跡形もなく呑み込まれるだけであろう。

ラオブは、この場所で仕掛けることを決めていた…そして、巧みに誘導しミーティだけが此の部屋の中に残る瞬間を狙っていたのだ。

「引き受けるって…何でこんなことしてるんだよ!」

ミーティはラオブに向かって叫んでいた。

「貴方に…責任…と言う…ものを、味わって欲…しかったから…です」

言葉切れ切れに語るラオブ。魔力が集まり苦しさが増しているようだ。

「何で此れが責任に繋がるんだ? それに…だからって、此処でこんなことしなくても…」

「意図…して起こした事…ではなくても、導き…起こしたのなら逃げ…るべきではありません。…受け取った…のなら責任果…たすべきです」

「逃げてなんて…」

「逃…れる…のは美し…くないで…す」

「わっけ分んねぇよ!!」

こうしてラオブと会話している間にも、闇石の魔力がラオブに集約していく…それをミーティは見守るしかできなかった。


この異変に周囲の者達は気付いたが、気付いた時には既に手出しすることが出来ない状態だった。
ラオブはこの転移陣繋がる部屋を巧みに利用し、狭間の空間を作り上げた。それを外界と隔てる結界として利用し、周囲の空間と繋がりを絶ち切っていたのだ。

外界と繋がるのは、ラオブの内に繋がる闇石の力のみ。
周囲が目にした時の光景は、ラオブとミーティが閉じ込められた空間に闇石の力が注ぎ込まれ…ラオブにその力が集約されつつある…と言うものだった。
内からも外からも何が起きているか、お互い見えはするが音は漏れぬようだった。
再度周囲に人が集まり叫んでいるように内からは見えた。


ミーティはこんな状態なのに、目に入ってきたモーイの姿に見とれていた。
黒髪ばかりの樹海の民の中で、光の女神のように輝く金髪と透き通る青い瞳が貫くようにミーティを見つめている。
その表情には、不安以上に信頼のようなものが含まれていた。
こんな状況でも打破する機転や根性がミーティにはあると期待する瞳。

「あぁ、やっぱり奇麗だなぁ…しっかりとモーイに告白して…もっと2人で色々と先に進みたいなぁ…」

呑気さ全開のミーティ…ある意味最強である。
流石にモーイに今の状況で、この心の内が知れたならモーイから飛び蹴りの1つや2つぐらい食らうかもしれない。

「あぁ、もっと前に告白して口付けとか…とか…しとけば良かったなぁ。このままじゃ、無念の思い抱えて闇石と一体化しちまいそうだよ」

こんな状況下で余裕なのか現実逃避なのか…ミーティが思わずぼやきまくる。
未だ穢れた魔力に飲み込まれる事無く苦痛に耐え力を溜め込んでいるラオブだったが、耳にしたミーティの呑気な呟きに苛立ち毒を吐く。

「腹立…たしい!! 随分…と余…裕がある…のだ…な。…お前に先がある…とは思え…ないが…な」

「先へ繋げるか決めるのは自分自身。それこそお前が決めることじゃないよ!」

ミーティはキッパリと意思強く言い切る。

「この状況…打破で…きるものならして…みるが良い!! …取り…入れた穢れ…た力に更に私の…憎悪…を追加し…て進呈しよ…う」

「出来るならソンナモノ貰いたくない!」

ミーティは素直に遠慮してみた。

「腑…抜けが…この…状態で…も逃れようと…するのか!」

「当たり前だよ! 普通、何でオレがっ…て思うでしょ」

「ふっ、そろ…そろ…十分満ち足り…てきた…何とか…意思保ち、お前に…私の手…で…責任取ら…せること…ができて…僥倖よ!!!」

「なんでそんなにオレを恨むの? 何かしたっけ?」

全く身に覚えのない…最近関わり合うことの無かったラオブからの個人的な恨みに思い当たることは無かった。
ラオブが言うように、ミーティが語り部の長である祖母アクテを巻き込み転移陣使った事については、集落の損失になるとは思うし、祖母に対する負い目とはなっていたがラオブは関係ない。
ラオブ自身が直接的な…際立った行動取るような原因が見えなかった。

「…逃げた…時点…で万死に値…する。それにお前が消えれば…記憶…の譲渡の…」

恨み…と言うより、妬み…の可能性をミーティは悟った。
それに、語り部の記憶の継承についても何かある…と言う事も察することが出来た。
ミーティは先へ繋がる道筋目指し、まずラオブの感情揺さぶるために…妬み…から追及していく。

「…もしかしてラオブも此処から逃げたかったの?」

「…!!!」、

一瞬魔力が揺らぎ、強い動揺を感じる。

「わっ…私…は逃げる…よう…な卑怯な…真似はしない!」

強く憤り怒る感情が跳ね返ってきた。
複雑に絡まりあう事情はあると思われるが、妬み…が大きな要因になった事はラオブの態度からも明らかだった。

「気持ち曲げられない程の…遣りたくない事や場所から抜け出ることは、逃げじゃないよ! ラオブだって我慢して留まってそんなんなっちゃうぐらいなら脱出したほうがましだよ!」

「お前の…お前のような…無責任…な者がいるから…!! がはっっ!!!」

ラオブの中の溜まっていた魔力は激しい怒りによって暴走し始める。

「ラオブ!!!」

ラオブは身の内で暴れる魔力が身体の負担となり、倒れ込む。
溜まった魔力を攻撃魔力に変換し放つ前に、穢れた魔力がラオブを飲み込み意識を奪ったのだ。
ラオブの状態は気になるが、これがミーティが目指した状況だった。

「オレには夢も希望もあるんだ! だから周りを巻き込まず切り抜け脱出するために足掻いてみるよ」

そう呟き、汚れた魔力に飲み込まれ闇石そのものになったかのような意識のないラオブの体に近づき手を触れる。

「お前が押し付ける責任はとれないし、お前に討たれてやる気は毛頭ないけどな…! オレが自分で道を決めて進んでいくんだから、お前が望んだ気が晴れる結果は望めないとは思うけど…」

そしてラオブの中にある魔力を動かす。

「その力、希望通り引き受けてやるよ!!」

ミーティは自身の中にラオブの中に溜まっていた穢れた魔力を…導き入れた。

ラオブが意識奪われ倒れたことで、転移陣利用しラオブによって作られていた狭間にできた空間は元の場所に戻る。
ラオブに取り込まれていた穢れた魔力は消え去り、手に持つ闇石からも綺麗さっぱり負の魔力は消えていた。

尤も一度闇に落ちたラオブの心や回路はズタズタに引き裂かれ…意識戻るかさえ危うい。
だが、存在そのものを飲み込まれ肉体ごと消失しても可笑しくない状態からの生還…それだけでも奇跡と言えよう。

ラオブが意識を持ち結界張っている間、結界内は闇石が引き込んだ穢れた魔力で溢れている状態であるのは外からでも確認できていた。

だが、結界が消え…中の者たちが現れたその空間には、一切の穢れた魔力は存在しなかった。
結界が消失する前にミーティは全ての負に傾いた魔力を自身の内へと導き…空間を浄化したのだった。
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