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三章

初めて知る事実

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「失礼しまーす……」


殿下と別れた私は、彼の許可を得て特別に王宮の禁書庫へと足を踏み入れた。


(わぁ、こんな風になってるのね)


初めて入る禁断の場所。
長い間誰も入っていなかったのか、埃が舞っている。
掃除が行き届いていないようだ。


(……探しましょう、この中に精神魔法を解くことの出来るヒントが隠されているかもしれないわ)


今はダリウス様が安定させてくれているとはいえ、いつお父様の容体が急変するか分からない。
なるべく早い方がいいだろう。


そう思った私は、禁書庫の中を歩き回ってヒントになりそうな本を探した。
私の予想通り、精神魔法について書かれている本は何冊かあった。


「解除方法については……」


しかし、そのどれもが既に知っている情報で魔法を解くカギになりそうなものは得られなかった。


「ハァ……」


思わずため息が漏れてしまった。
本に書いてあるのはどれも同じ。
術者本人が解除する場合のみ魔法を解くことが出来るということ。
ダリウス様も最初からそう言っていた。


それが出来るならこんなにも苦労はしない。


(どうすればいいの……あの人がお父様の魔法を解いてくれるとは思えないし……)


ローレル様と関わったことはほとんど無いが、私やお父様を良く思っていないような目で見ていたということだけはたしかだ。
彼が国王陛下に付き従っている理由は不明だが、もしお父様に個人的な恨みがあるとしたら……。


(どちらにせよローレル様に解除してもらうのは無理だわ。何とかそれ以外で解く方法を見つけないと)


ここに来たら何か得られると思ったのに。
結局また振り出しに戻ってしまった。


落ち込みかけていたそのとき、ふと床に置かれていた肖像画が目に入った。


(何かしら……?)


埃をかぶっていて描かれている人物まではよく見えない。
だけど、何だか見覚えがあるような気がする。


気になって居てもたってもいられなくなった私は、肖像画の埃を払った。
そこに現れたのは――


「え!?お母様!?というか……私……?」


金髪に緑色の瞳をした女性。
そこに描かれていたのはお母様と私……によく似た女の人だった。


(……別人よね?)


そう思い、ジロジロと見つめてみるもどこからどう見てもお母様にしか見えない。
お母様の姿は公爵邸に飾ってある肖像画でしか見たことが無いが、瓜二つだ。


そして、紙の裏側の端に小さく文字が刻まれていた。


『聖女セレーナ』


(聖女……?聖女なんて何百年も前に途絶えたんじゃ……)


昔、このオルレリアン王国に聖女が存在していたという話は知っていた。
しかしこれは貴族や国民たちのほとんどは知らないことで、王太子妃教育で少し触れられる程度の内容だった。


(聖女の肖像画は残っていないって言ってたのに……)


これは一体どういうことなのだろうか。
お母様と私によく似た顔の聖女。


もしかすると、何らかの関係があるのかもしれない。



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