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15 舞踏会
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そして、ついに舞踏会当日になった。
「王妃様、とてもよくお似合いです!今日の舞踏会では王妃様が最も美しいに違いありません!」
「そうかしら?ありがとう、リリアーナ」
悩みに悩んだ末に、私が選んだのはマーメイドラインの黄色いドレスだった。
大きく開いた背中や胸元が妖艶さを醸し出している。
王都の有名デザイナーが仕立てたドレスで、これなら誰も私を嘲笑出来ないはずだ。
(今度こそは失敗しないって決めたもの)
この舞踏会で、側妃クロエはエルフレッドの瞳と全く同じ青い色のドレスを着用して現れる。
エルフレッドの選んだそのドレスは可憐な彼女にピッタリで、この舞踏会でクロエは社交界での人気を集めるようになるのだ。
それなら、彼女以上に魅力のある姿で舞踏会に行けばいい。
(もちろん、私も彼の瞳の色である青色を勧められたけれどどうしても選ぶ気になれなかったのよね)
何よりクロエと色がかぶって面倒事になるのだけは御免だ。
「――王妃様、陛下がいらっしゃっています」
「お通ししてちょうだい」
リリアーナと入れ替わるようにしてエルフレッドが中に入って来た。
ドレスアップした私を見た彼は、驚いたように目を見張った。
「……リーシャ」
「はい、陛下」
彼は私の前までゆっくりと歩いてくると、ドレス姿をまじまじと見つめた。
そして、少し頬を赤らめながら口を開いた。
「その……今日は……とても綺麗だな」
「……?ありがとうございます……?」
エルフレッドに綺麗だと言われたことが新鮮だったからか、つい疑問形になってしまった。
(お世辞かしら?別に言われても嬉しくないけれど)
彼は照れ臭そうに逸らした目を元に戻すと、私に手を差し出した。
「それでは、行こうか。もうすぐパーティーが始まる」
「……はい、陛下」
嫌々ながらもエルフレッドの手を取った私は、二人揃って会場へと足を運んだ。
――この先待ち構えている最悪なアクシデントのことなど、このときの私は全く考えていなかったのだ。
***
会場では既に貴族たちが集まっている。
王と王妃である私たちの入場は一番最後だ。
会場に入る前、私は胸に手を当ててあることを誓った。
(今度こそは絶対に負けたりしないわ。惨めだと思われるのも御免よ)
過去二度の人生でかなりの屈辱を味わったこの舞踏会。
今回こそはあのような思いはしたくない。
――たとえ夫に愛されない王妃だろうと、堂々としてやる。
「――国王陛下と王妃陛下のご入場です」
その声で、私たちは会場へ足を踏み入れた。
会場にいる貴族たちの視線が一斉に私たちへと集中する。
同情、嘲笑、侮蔑。
私に向けられた視線はどれもあまり良くないものだった。
今回はクロエが側妃になってから初めての舞踏会だ。
こうなるのも仕方が無いだろう。
二度の人生でも同じようなことを経験しているおかげか、案外何ともない。
だからと言って全く知らない人に蔑みの視線を向けられるのは腹が立つが。
(……クロエはどこにいるのかしら?)
最初に側妃クロエの姿を確認しておきたかった私は、歩きながら彼女を探した。
目のみを動かして会場全体を見渡すと、貴族令嬢たちに囲まれて立っている一人の女性の姿が視界に入った。
見覚えのある光景だ。
既に多くの貴族令嬢の中心に立っているのは、まさに私が探している側妃クロエだった。
がしかし、私はそのとき見た彼女の姿に衝撃を隠すことが出来なかった。
「え……」
思わず小さな声を漏らし、歩いていた足を止めそうになった。
(どうしてクロエが……私と似たドレスを着ているの……!?)
「王妃様、とてもよくお似合いです!今日の舞踏会では王妃様が最も美しいに違いありません!」
「そうかしら?ありがとう、リリアーナ」
悩みに悩んだ末に、私が選んだのはマーメイドラインの黄色いドレスだった。
大きく開いた背中や胸元が妖艶さを醸し出している。
王都の有名デザイナーが仕立てたドレスで、これなら誰も私を嘲笑出来ないはずだ。
(今度こそは失敗しないって決めたもの)
この舞踏会で、側妃クロエはエルフレッドの瞳と全く同じ青い色のドレスを着用して現れる。
エルフレッドの選んだそのドレスは可憐な彼女にピッタリで、この舞踏会でクロエは社交界での人気を集めるようになるのだ。
それなら、彼女以上に魅力のある姿で舞踏会に行けばいい。
(もちろん、私も彼の瞳の色である青色を勧められたけれどどうしても選ぶ気になれなかったのよね)
何よりクロエと色がかぶって面倒事になるのだけは御免だ。
「――王妃様、陛下がいらっしゃっています」
「お通ししてちょうだい」
リリアーナと入れ替わるようにしてエルフレッドが中に入って来た。
ドレスアップした私を見た彼は、驚いたように目を見張った。
「……リーシャ」
「はい、陛下」
彼は私の前までゆっくりと歩いてくると、ドレス姿をまじまじと見つめた。
そして、少し頬を赤らめながら口を開いた。
「その……今日は……とても綺麗だな」
「……?ありがとうございます……?」
エルフレッドに綺麗だと言われたことが新鮮だったからか、つい疑問形になってしまった。
(お世辞かしら?別に言われても嬉しくないけれど)
彼は照れ臭そうに逸らした目を元に戻すと、私に手を差し出した。
「それでは、行こうか。もうすぐパーティーが始まる」
「……はい、陛下」
嫌々ながらもエルフレッドの手を取った私は、二人揃って会場へと足を運んだ。
――この先待ち構えている最悪なアクシデントのことなど、このときの私は全く考えていなかったのだ。
***
会場では既に貴族たちが集まっている。
王と王妃である私たちの入場は一番最後だ。
会場に入る前、私は胸に手を当ててあることを誓った。
(今度こそは絶対に負けたりしないわ。惨めだと思われるのも御免よ)
過去二度の人生でかなりの屈辱を味わったこの舞踏会。
今回こそはあのような思いはしたくない。
――たとえ夫に愛されない王妃だろうと、堂々としてやる。
「――国王陛下と王妃陛下のご入場です」
その声で、私たちは会場へ足を踏み入れた。
会場にいる貴族たちの視線が一斉に私たちへと集中する。
同情、嘲笑、侮蔑。
私に向けられた視線はどれもあまり良くないものだった。
今回はクロエが側妃になってから初めての舞踏会だ。
こうなるのも仕方が無いだろう。
二度の人生でも同じようなことを経験しているおかげか、案外何ともない。
だからと言って全く知らない人に蔑みの視線を向けられるのは腹が立つが。
(……クロエはどこにいるのかしら?)
最初に側妃クロエの姿を確認しておきたかった私は、歩きながら彼女を探した。
目のみを動かして会場全体を見渡すと、貴族令嬢たちに囲まれて立っている一人の女性の姿が視界に入った。
見覚えのある光景だ。
既に多くの貴族令嬢の中心に立っているのは、まさに私が探している側妃クロエだった。
がしかし、私はそのとき見た彼女の姿に衝撃を隠すことが出来なかった。
「え……」
思わず小さな声を漏らし、歩いていた足を止めそうになった。
(どうしてクロエが……私と似たドレスを着ているの……!?)
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