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happy1
5:四神
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「さて、食べながらになるが、詳しい話を聞かせてもらってもいいかな?」
玲司が淹れたコーヒーを一口飲み込み、そう告げたのは、玲司の兄の寒川総一朗。隣には同じくコーヒーをゆったりと飲んで、外に視線を馳せる医師の藤田 。寒川家の専属医師との事らしい。
予想以上に名家の雰囲気を感じた桔梗の前に、玲司が作ったワンプレートデッシュと、絞りたてのアップルジュースが並んでいる。コーヒーは飲めない訳ではないが、朝はミルクたっぷりのカフェオレ位しか飲めないでいた。桔梗は番になったとはいえ、ほぼ初対面に等しい人に要望を伝える程図々しくなれなかった為、ありがたくフレッシュジュースを頂く事にしたのだ。
白い大皿の上に、切り込みが入って食べやすそうなトースト、ボイルしたウインナーとトロトロのオムレツにはモッツァレラチーズと角切りトマトが色鮮やかで、小さな硝子ボウルにベビーリーフとオレンジのサラダが盛られ、見るからに美味しそうだ。
流石カフェバーを経営しているだけあり、盛り付けもお店で食べるようで見た目も良い。
「あ……おいしい……」
「口に合ったようで良かったです」
桔梗の自然な感想に、玲司が嬉しそうに微笑む。
同じ男性だというのに、整った容姿の彼を綺麗だと感じる。自分が欲しても手の届かないアルファの姿、女性的なオメガらしい自分が求めても絶対になれない羨望の……
だけど彼の微笑みはとてもじゃないが、アルファらしくない。ふわりと柔らかな真新しいシーツで包むかのような白い笑み。
思わず桔梗はときめいてしまった。
(なんていうか、不思議な人だな)
初めて向き合う番になったばかりの玲司を、桔梗はそう評した。
「桔梗君は嫌いなものとかあるのかな。アレルギーで食べれないものとか」
「特には。あ、でも臭豆腐やくさやみたいな臭いが強いのは苦手かも……」
「ふはっ、それは僕も苦手ですね」
さらりと桔梗の隣に座った玲司から、心地良い香りが流れてきて、桔梗の心を安定させる。
番になるとここまでの精神安定ができるのか、と玲司との会話の合間にウインナーを咀嚼しながら、ぼんやりと思っていたら。
「二人共、お兄ちゃん、これから大事な話するからね? ちゃんと傾聴しようか?」
それはそれはとてもイイ笑顔で、総一朗が告げる。だが侮るなかれ。彼のこめかみには血管が浮き上がり、ビキビキ増えているようだ。
桔梗でも知っている大企業「K・Fコーポレーション」の代表取締役だと、名刺を渡されなければ、ただの乱暴なのに上品な身なりのお兄さんといった雰囲気だ。ひとえに弟の玲司を心配してるからこその行動に見えるからか、玲司もあえて文句も言わずしたがっているみたいだった。
サラダのオレンジをもぐもぐしている桔梗の隣で、何故か玲司が無表情でコーヒーを啜っている。自分との会話の時は笑顔を見せてくれてたのに、何か不機嫌な事でもあったのだろうか、と首を傾げていると。
「玲司さんは昔から、あまり感情を見せない方なので、お気にされなくても問題ありませんよ」
と、桔梗の疑問に答えてくれたのは藤田で、そんな医師に玲司はギロリと睨み据えた。
「そうだな。あの人は、昔から表情豊かだと聞いてたのに、お前ときたら……」
「その話は、今の内容に関係ありませんよね? 総一朗兄さん」
「まあな。今は関係ない。だがな、お前の都合で番にした桔梗さんには、いずれ話すべきだと思うぞ」
「……分かってます」
一体なんの話なのだ、と首を更に傾けつつも、奇妙な疎外感が玲司との間にできたような気がする。まだお互いの今後が決まっていないというのに、どうしてこうも胸が痛いのだろう。
(ちゃんと二人の関係が決定したら、俺にも話してくれるのかな)
あれだけの無体をされたのに、桔梗の中では、玲司との未来が構築されていくのだった。
何度か横道に逸れたものの、上司が桔梗に固執し関係を迫ってきた事や、父親である社長に歪曲して桔梗が上司を誘惑したと伝えられ、不当解雇を言い渡された事、実家にはオメガである理由により頼れない事等を、滔々と桔梗が話す。
その隣では玲司から怒りの気配が漂いだしていたものの、桔梗は総一朗に向かい合っていたため、気付かなかった。
「ちなみに、その会社はどこかな?」
総一朗は難しい顔をしつつも、桔梗には穏やかな口調で語りかける。桔梗は「Y商事です」と告げると、総一朗は「あそこか」と渋面を深くした。
「ご存知なんですか?」
「ご存知もなにも、うちの会社の三次下請けだったかな。最近は余り良い噂は聞かないが、業績の方はどうだったか分かるかい?」
「そうですね。大学卒業して新入社員として入りましたから、三年程の情報になりますが、比較的順調だったかと思います。確かに近年は小口の契約が増えてきましたけど、大口については然程変化はなかったように見えましたが……」
「そうか……」
玲司の兄の会社が自分が居た会社の本流だと知り、桔梗は驚いたもののもうクビになった事だし、上からの要望があっては断れない。話せる事を話し、桔梗がアップルジュースをストローで飲んでいると、総一朗は腕を組み唸っていた。
「何か問題でも?」
「あー、まあ、それは要調査だな。一応、君の解雇については、うちの弁護士を通して抗議しようかと考えてる」
一介のサラリーマンだった桔梗には、難しい事は分からない。故に、総一朗が元勤め先に対して何かを考えているについても、理解の範疇外だった。ただ。
「正直、新卒で入社してましたが、今回の件で愛社精神も崩壊してしまったし、これ以上あの会社と解雇の件でゴタゴタするのも嫌なんですけど……」
「だが、君にも君の生活がある。今回こういった経緯で出来た縁ではあるが、自分の関わる会社でそういった不当な人事があるのを見過ごせない。それに、君も職がなくなるのは困るんじゃないのか?」
理路整然と話す総一朗の言葉は、桔梗にも十分理解できている。
実家を出された時に、相当の金額を生前分与で渡されてはいるが、それに頼ってばかりでは将来が不安なのも分かっている。
だからこそ多少嫌な事があっても会社にしがみついてた訳だし、住んでいる所も生活する最低限が賄えるようにしていたのだ。
「それはそうですが……」
「桔梗君が今後の生活で不安だと思うのなら、この家に住めばいいよ」
ふと、桔梗と総一朗の会話に割ってきたのは玲司だった。
「勿論、桔梗君の意思が大事だけど。この家は僕の所有だし、部屋も寝室の隣が今、物置部屋になってるのを片付ければ問題ないですからね。家賃も戴く気はありませんし、食事も僕が用意するので、桔梗君はある意味体ひとつで来ていただいても構いませんよ」
「それは……。玲司さんにご迷惑しかないのでは」
幾ら強制的に番となった桔梗への謝罪としては、桔梗にメリットしかない。反面、一人暮らしをして、仕事を持っている玲司にはデメリットの塊ではないのか。
「迷惑なんて全然思ってませんよ。むしろ、桔梗君が傍に居てくれるのが嬉しいですから。それに、体調を崩した時に近くに人が居た方が安心できるでしょ?」
「それは……まあ」
「今後はどうするにしても、まだ万全の状態ではない君を、一人暮らしの部屋に戻すのは偲びないです。会社を解雇された君の生活が乱れてしまうのを見るのも辛いですし」
ね、と微笑む玲司に、桔梗は目を合わせられなくて俯いてしまう。
本音を言えば、玲司の申し出はとても嬉しい。貯金を崩さなくても生きていけるのだから。それが謝罪としても、仕事をクビになり、次の職場が決まってない現状では藁にもすがる程、魅力のある話だったから。
とはいえ、玲司の番としてまだ微妙な立ち位置にいるのだ。甘え過ぎるのは得策ではない。
しかし……このまま別々に生活して、時折フェロモンの安定の為に会うのも嫌だった。
(この想いが、香月桔梗としての感情なのか、オメガが運命の番であるアルファに対してなのかが分からない。だけど、玲司さんと離れたくないのも事実だ)
「玲司さん」
「ん? どうかしましたか」
「オレ、ここにお世話になっても、ご迷惑じゃありませんか?」
そう告げた途端、玲司が花開くように表情を明るくさせるのを、桔梗は複雑な想いで見ていた。
「全然! むしろ桔梗君がずっと僕の傍に居てくれて嬉しいですよ。少し痩せすぎですから、僕のご飯で太らせたい位ですし」
「太るのはちょっと……。あ、でも、俺も玲司さんのお店を手伝わせてください。動いてる方が楽ですから」
「ええ、構いませんよ。と、いってもあの店は基本不定休で、そこまで忙しくないんですけどね」
にこにこと話す玲司に、よく不定休で生活が成り立ってるな、と不思議な思いを抱きつつ、手伝いに関して了承してくれた事に、桔梗もほっと胸を撫で下ろした。
(番の解除をするにしても、しなくても、心が玲司さんを求めてしまっている。これが自分の感情なのか、オメガの本能によるものか、彼の近くで見極めたい)
なし崩しや打算もあるものの、少しだけ心に従おうと桔梗は決め、濃厚なアップルジュースを飲み込んだ。
会社の事は別にしても、解雇の件については逐一報告をすると言い残し、総一朗は藤田を伴い帰っていった。
一応、直接連絡が取れるようにスマホの番号を教えようとしたのだが、昨夜の雨のせいか電源はすっかり入らなくて、SIMカードも雨水でびっしょり濡れてしまっていた。これは解約するか、新しくカードを作るかしないと無理だろう。一応自宅のパソコンにバックアップを取っておいて良かった。
桔梗にとっては不幸な話だが、玲司に取っては番が他の男性と秘かに連絡を取るのを避けられた安心感があったらしい。
噂では、普通の番同士よりも運命の番同士は固執する度合いが違うそうで、病的に執着するそうだ。実際、自分と玲司がそれに該当するのか、確定ではないが……と、桔梗はちらりと玲司に視線を向ける。
これだけ素敵な人だし、接客業をしているのだから、きっと玲司はモテるに違いない。番イコール結婚ではないが、感情と本能は別物だと今回の件で分かる程分かりきっている為、玲司にのめり込まないようにしなくては、と秘かに心決めていると。
「まずは、桔梗君の部屋に荷物を取りに行きましょうか。解約はその後でも大丈夫ですよね?」
「ええ、即日解約はできないので。ところで、玲司さん」
「はい、なんでしょう」
「ここって、場所的にどこら辺になるんですか?」
「え?」
「実は会社最寄り駅でヒートを起こしてしまったので、徒歩で帰宅しようと思ったのですが、気づいたら迷ってしまったみたいで……」
人目を避けて辿り着いてしまったので、住所も何も知らない桔梗は、今更ながら抜けた質問をしたのだった。
「ちなみに、駅はどこから」
桔梗は素直に最寄駅を答えると、「よくも無事でここまで」と桔梗以外の三人から安堵に似た言葉が投げかけられる。だが、何かに気づいたらしい玲司が「ですが」と口を開き呟いた。
「それって、駅からオメガが運転手のタクシーに乗ったほうが良かったのでは……」
「……ですよね」
どれだけテンパってたのか、と今更ながら頭を抱えた桔梗だった。
なんてことはない。玲司の家と桔梗の部屋は、線路を挟んで数キロの距離しか離れていなかったのだ。その事実を知った時、がっくりと項垂れる桔梗を見て、玲司が笑ったのは記憶に新しい。
あともうちょっと頑張れば家に帰れた筈なのに、『la maison』に辿り着いたのは、互いの糸が惹かれあったからだろうか。
「ここは商店街から少し離れた住宅街にあるし、余程人から教えられないと分からないから、知らないのも仕方ないと思うよ」
荷物があるだろうからと、車を出してくれた玲司の横で、溜息が出そうになる。黒のRV車は玲司の運転が上手なのか、とても快適だ。
数年住んで、商店街も比較的頻繁に利用していたものの、あまり近隣の人達と交流自体してこなかった為、『la maison』の存在をこれまで知らなかったのである。
「それはそうですけど、あの素敵なお店をずっと知らなかったのが、何だか勿体無く思えて」
「桔梗君にそう言ってもらえるのは嬉しいな。あの店、殆ど趣味でやってるようなものだから」
「……え?」
郊外とはいえ、それなりの敷地に店舗を構え、更に三階建ての自宅まである現状を、趣味と言ってのけるのが凄い。
桔梗のぼやけた知識でも、寒川家の事は知っている。
アルファ最上位名家『四神』のひとつ、玄武の寒川家。先代──玲司や総一朗の父親が「K・Fコーポレーション」を設立し、一気に経済界へと進出してきた。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いを持ち、業種は多岐に渡っている。
おそらく総一朗が長男で家督を継いだと思われる。普通なら、玲司も兄の傍で手腕を奮うと想像に固くないのに、それが郊外の一角で趣味でお店を経営しているとか、何か事情でもあるのだろうか。
「僕はね、寒川家では異端なんだよね」
「え?」
まるで桔梗の思考を読んだかのように、唐突に玲司が言葉を紡ぐ。
「僕は寒川の父と、偶然居合わせた時にヒートになったオメガの母との間に生まれた子供なんだよ」
衝撃的な玲司からの告白に、桔梗は二の句が告げられないまま、車は家を出てから長年住んでいるマンションへと到着する。
学生時代から桔梗の父が契約していたオメガ専用と謳っていたマンション。流石にアルファの住人はいなかったが、ベータが普通に住んでいた時期もあった。
元は白亜と呼べるべき外壁も、時間経過でペンキは剥がれ、水垢でくすんでいる。若い人は中心地に行ってしまう為、このマンションの住居者も老齢が多く、空き部屋も目立つ。桔梗の部屋の左右も、数年前までは住居者が居たものの、現在はどちらも空室となっている。
「それはセキュリティ的にも不安がありましたね。同居の話を提案して良かったです」
にっこり玲司が言うのを、桔梗も「そうですね」と返すにとどめた。
両隣が空いてから、いつ上司が押し掛けてくるのか不安だった。杜撰なセキュリティで、誰もが入り込めるマンションは、犯罪者までもウエルカム状態だったからだ。
これまで何もなかったのは桔梗がラッキーなだけであって、今後もそうなるとは限らない。今回は不幸中の幸いだったと言えるのだろう。
桔梗は、近くのコインパーキングで駐車した玲司を伴い、マンションのエントランスに入ったが。
「桔梗!」
影から名前を呼ばれ、咄嗟に振り返った桔梗は、現れた人物を見て硬直する。
昨日さんざん桔梗をこき下ろし、父親に嘘を流し込んだ卑劣な上司がそこに居たのだから。
「……どうして葛川部長が」
ここに居るのだ、と詰問しようとした。だが、襲われかけた事や、社員の前で公開処刑的な扱いを受けたせいで、言葉が喉に詰まって出てこない。
桔梗は震える手を縋るように玲司の袖を握り、腕に額を押し付ける。姿を見るのも嫌だ。
「ダメじゃないか、桔梗。勝手に出歩いたりして。お前が無断欠勤するから心配して、わざわざ見舞いに来たんだぞ?」
無断欠勤?
この元上司は何世迷言を言っているのだ。
自分に関係を強要しておいて、それが拒否されれば父親にオメガである桔梗が誘惑したとのたまい、挙句の果てに桔梗を会社から追い出した。
オメガだから、ヒエラルキーの最底辺の存在だから、頂点のアルファに奴隷のように従わなくてはならないのか。オメガはアルファの玩具でい続けろというつもりなのか。冗談ではない。
桔梗は今にも感情が爆発しそうで、全身がぶるぶると震える。
父親に家を出された時にも、こんなに感情が昂ぶった事はない。
「ところでその男は誰だ? ああ、俺が相手してあげれなかったから、寂しくて引っ掛けたのか。安心しろ。ずっとお前の傍にいて、満足させてあげるからな」
「……なっ!」
あまりに身勝手な元上司の主張に、桔梗は絶句して言葉が紡げないでいると、隣にいた玲司から冷たい言葉が発せられた。
「何を妄言を吐いているんです。桔梗君を見てどうして気づかないんですか。彼は全身であなたを拒否しています。これ以上虚言を吐くのでしたら、警察を呼びますよ?」
「はあ? お前、何を言って……」
「ああ、それから、桔梗君は僕の番です。そこからでも彼の項が見えるでしょう?」
肩を抱かれ、頭上から厳しい声が元上司へと投げられる。玲司の爽やかなハーブの香りが桔梗の心を落ち着かせる。
「あと、桔梗君の不当解雇については、当家の弁護士に一任していますので、問い合わせはそちらへどうぞ」
玲司は冷ややかに言い、元上司へと一枚の紙を指で弾いて飛ばす。ひらひらと間を頼りなく舞い、慇懃無礼な男の足元へ落ちた。
アルファの中にもヒエラルキーが存在し、どうやら玲司の方がアルファの雄として優位に立っているらしい。元上司はそそくさと紙片を拾い目を落とすと、目が飛び出そうな程瞠目する。
口をパクパクと動かし、何か暴言を吐こうとしているようだが、すぐさま憎々しげに睨んだ後、逃げるように二人の前から立ち去ったのだった。
玲司が淹れたコーヒーを一口飲み込み、そう告げたのは、玲司の兄の寒川総一朗。隣には同じくコーヒーをゆったりと飲んで、外に視線を馳せる医師の藤田 。寒川家の専属医師との事らしい。
予想以上に名家の雰囲気を感じた桔梗の前に、玲司が作ったワンプレートデッシュと、絞りたてのアップルジュースが並んでいる。コーヒーは飲めない訳ではないが、朝はミルクたっぷりのカフェオレ位しか飲めないでいた。桔梗は番になったとはいえ、ほぼ初対面に等しい人に要望を伝える程図々しくなれなかった為、ありがたくフレッシュジュースを頂く事にしたのだ。
白い大皿の上に、切り込みが入って食べやすそうなトースト、ボイルしたウインナーとトロトロのオムレツにはモッツァレラチーズと角切りトマトが色鮮やかで、小さな硝子ボウルにベビーリーフとオレンジのサラダが盛られ、見るからに美味しそうだ。
流石カフェバーを経営しているだけあり、盛り付けもお店で食べるようで見た目も良い。
「あ……おいしい……」
「口に合ったようで良かったです」
桔梗の自然な感想に、玲司が嬉しそうに微笑む。
同じ男性だというのに、整った容姿の彼を綺麗だと感じる。自分が欲しても手の届かないアルファの姿、女性的なオメガらしい自分が求めても絶対になれない羨望の……
だけど彼の微笑みはとてもじゃないが、アルファらしくない。ふわりと柔らかな真新しいシーツで包むかのような白い笑み。
思わず桔梗はときめいてしまった。
(なんていうか、不思議な人だな)
初めて向き合う番になったばかりの玲司を、桔梗はそう評した。
「桔梗君は嫌いなものとかあるのかな。アレルギーで食べれないものとか」
「特には。あ、でも臭豆腐やくさやみたいな臭いが強いのは苦手かも……」
「ふはっ、それは僕も苦手ですね」
さらりと桔梗の隣に座った玲司から、心地良い香りが流れてきて、桔梗の心を安定させる。
番になるとここまでの精神安定ができるのか、と玲司との会話の合間にウインナーを咀嚼しながら、ぼんやりと思っていたら。
「二人共、お兄ちゃん、これから大事な話するからね? ちゃんと傾聴しようか?」
それはそれはとてもイイ笑顔で、総一朗が告げる。だが侮るなかれ。彼のこめかみには血管が浮き上がり、ビキビキ増えているようだ。
桔梗でも知っている大企業「K・Fコーポレーション」の代表取締役だと、名刺を渡されなければ、ただの乱暴なのに上品な身なりのお兄さんといった雰囲気だ。ひとえに弟の玲司を心配してるからこその行動に見えるからか、玲司もあえて文句も言わずしたがっているみたいだった。
サラダのオレンジをもぐもぐしている桔梗の隣で、何故か玲司が無表情でコーヒーを啜っている。自分との会話の時は笑顔を見せてくれてたのに、何か不機嫌な事でもあったのだろうか、と首を傾げていると。
「玲司さんは昔から、あまり感情を見せない方なので、お気にされなくても問題ありませんよ」
と、桔梗の疑問に答えてくれたのは藤田で、そんな医師に玲司はギロリと睨み据えた。
「そうだな。あの人は、昔から表情豊かだと聞いてたのに、お前ときたら……」
「その話は、今の内容に関係ありませんよね? 総一朗兄さん」
「まあな。今は関係ない。だがな、お前の都合で番にした桔梗さんには、いずれ話すべきだと思うぞ」
「……分かってます」
一体なんの話なのだ、と首を更に傾けつつも、奇妙な疎外感が玲司との間にできたような気がする。まだお互いの今後が決まっていないというのに、どうしてこうも胸が痛いのだろう。
(ちゃんと二人の関係が決定したら、俺にも話してくれるのかな)
あれだけの無体をされたのに、桔梗の中では、玲司との未来が構築されていくのだった。
何度か横道に逸れたものの、上司が桔梗に固執し関係を迫ってきた事や、父親である社長に歪曲して桔梗が上司を誘惑したと伝えられ、不当解雇を言い渡された事、実家にはオメガである理由により頼れない事等を、滔々と桔梗が話す。
その隣では玲司から怒りの気配が漂いだしていたものの、桔梗は総一朗に向かい合っていたため、気付かなかった。
「ちなみに、その会社はどこかな?」
総一朗は難しい顔をしつつも、桔梗には穏やかな口調で語りかける。桔梗は「Y商事です」と告げると、総一朗は「あそこか」と渋面を深くした。
「ご存知なんですか?」
「ご存知もなにも、うちの会社の三次下請けだったかな。最近は余り良い噂は聞かないが、業績の方はどうだったか分かるかい?」
「そうですね。大学卒業して新入社員として入りましたから、三年程の情報になりますが、比較的順調だったかと思います。確かに近年は小口の契約が増えてきましたけど、大口については然程変化はなかったように見えましたが……」
「そうか……」
玲司の兄の会社が自分が居た会社の本流だと知り、桔梗は驚いたもののもうクビになった事だし、上からの要望があっては断れない。話せる事を話し、桔梗がアップルジュースをストローで飲んでいると、総一朗は腕を組み唸っていた。
「何か問題でも?」
「あー、まあ、それは要調査だな。一応、君の解雇については、うちの弁護士を通して抗議しようかと考えてる」
一介のサラリーマンだった桔梗には、難しい事は分からない。故に、総一朗が元勤め先に対して何かを考えているについても、理解の範疇外だった。ただ。
「正直、新卒で入社してましたが、今回の件で愛社精神も崩壊してしまったし、これ以上あの会社と解雇の件でゴタゴタするのも嫌なんですけど……」
「だが、君にも君の生活がある。今回こういった経緯で出来た縁ではあるが、自分の関わる会社でそういった不当な人事があるのを見過ごせない。それに、君も職がなくなるのは困るんじゃないのか?」
理路整然と話す総一朗の言葉は、桔梗にも十分理解できている。
実家を出された時に、相当の金額を生前分与で渡されてはいるが、それに頼ってばかりでは将来が不安なのも分かっている。
だからこそ多少嫌な事があっても会社にしがみついてた訳だし、住んでいる所も生活する最低限が賄えるようにしていたのだ。
「それはそうですが……」
「桔梗君が今後の生活で不安だと思うのなら、この家に住めばいいよ」
ふと、桔梗と総一朗の会話に割ってきたのは玲司だった。
「勿論、桔梗君の意思が大事だけど。この家は僕の所有だし、部屋も寝室の隣が今、物置部屋になってるのを片付ければ問題ないですからね。家賃も戴く気はありませんし、食事も僕が用意するので、桔梗君はある意味体ひとつで来ていただいても構いませんよ」
「それは……。玲司さんにご迷惑しかないのでは」
幾ら強制的に番となった桔梗への謝罪としては、桔梗にメリットしかない。反面、一人暮らしをして、仕事を持っている玲司にはデメリットの塊ではないのか。
「迷惑なんて全然思ってませんよ。むしろ、桔梗君が傍に居てくれるのが嬉しいですから。それに、体調を崩した時に近くに人が居た方が安心できるでしょ?」
「それは……まあ」
「今後はどうするにしても、まだ万全の状態ではない君を、一人暮らしの部屋に戻すのは偲びないです。会社を解雇された君の生活が乱れてしまうのを見るのも辛いですし」
ね、と微笑む玲司に、桔梗は目を合わせられなくて俯いてしまう。
本音を言えば、玲司の申し出はとても嬉しい。貯金を崩さなくても生きていけるのだから。それが謝罪としても、仕事をクビになり、次の職場が決まってない現状では藁にもすがる程、魅力のある話だったから。
とはいえ、玲司の番としてまだ微妙な立ち位置にいるのだ。甘え過ぎるのは得策ではない。
しかし……このまま別々に生活して、時折フェロモンの安定の為に会うのも嫌だった。
(この想いが、香月桔梗としての感情なのか、オメガが運命の番であるアルファに対してなのかが分からない。だけど、玲司さんと離れたくないのも事実だ)
「玲司さん」
「ん? どうかしましたか」
「オレ、ここにお世話になっても、ご迷惑じゃありませんか?」
そう告げた途端、玲司が花開くように表情を明るくさせるのを、桔梗は複雑な想いで見ていた。
「全然! むしろ桔梗君がずっと僕の傍に居てくれて嬉しいですよ。少し痩せすぎですから、僕のご飯で太らせたい位ですし」
「太るのはちょっと……。あ、でも、俺も玲司さんのお店を手伝わせてください。動いてる方が楽ですから」
「ええ、構いませんよ。と、いってもあの店は基本不定休で、そこまで忙しくないんですけどね」
にこにこと話す玲司に、よく不定休で生活が成り立ってるな、と不思議な思いを抱きつつ、手伝いに関して了承してくれた事に、桔梗もほっと胸を撫で下ろした。
(番の解除をするにしても、しなくても、心が玲司さんを求めてしまっている。これが自分の感情なのか、オメガの本能によるものか、彼の近くで見極めたい)
なし崩しや打算もあるものの、少しだけ心に従おうと桔梗は決め、濃厚なアップルジュースを飲み込んだ。
会社の事は別にしても、解雇の件については逐一報告をすると言い残し、総一朗は藤田を伴い帰っていった。
一応、直接連絡が取れるようにスマホの番号を教えようとしたのだが、昨夜の雨のせいか電源はすっかり入らなくて、SIMカードも雨水でびっしょり濡れてしまっていた。これは解約するか、新しくカードを作るかしないと無理だろう。一応自宅のパソコンにバックアップを取っておいて良かった。
桔梗にとっては不幸な話だが、玲司に取っては番が他の男性と秘かに連絡を取るのを避けられた安心感があったらしい。
噂では、普通の番同士よりも運命の番同士は固執する度合いが違うそうで、病的に執着するそうだ。実際、自分と玲司がそれに該当するのか、確定ではないが……と、桔梗はちらりと玲司に視線を向ける。
これだけ素敵な人だし、接客業をしているのだから、きっと玲司はモテるに違いない。番イコール結婚ではないが、感情と本能は別物だと今回の件で分かる程分かりきっている為、玲司にのめり込まないようにしなくては、と秘かに心決めていると。
「まずは、桔梗君の部屋に荷物を取りに行きましょうか。解約はその後でも大丈夫ですよね?」
「ええ、即日解約はできないので。ところで、玲司さん」
「はい、なんでしょう」
「ここって、場所的にどこら辺になるんですか?」
「え?」
「実は会社最寄り駅でヒートを起こしてしまったので、徒歩で帰宅しようと思ったのですが、気づいたら迷ってしまったみたいで……」
人目を避けて辿り着いてしまったので、住所も何も知らない桔梗は、今更ながら抜けた質問をしたのだった。
「ちなみに、駅はどこから」
桔梗は素直に最寄駅を答えると、「よくも無事でここまで」と桔梗以外の三人から安堵に似た言葉が投げかけられる。だが、何かに気づいたらしい玲司が「ですが」と口を開き呟いた。
「それって、駅からオメガが運転手のタクシーに乗ったほうが良かったのでは……」
「……ですよね」
どれだけテンパってたのか、と今更ながら頭を抱えた桔梗だった。
なんてことはない。玲司の家と桔梗の部屋は、線路を挟んで数キロの距離しか離れていなかったのだ。その事実を知った時、がっくりと項垂れる桔梗を見て、玲司が笑ったのは記憶に新しい。
あともうちょっと頑張れば家に帰れた筈なのに、『la maison』に辿り着いたのは、互いの糸が惹かれあったからだろうか。
「ここは商店街から少し離れた住宅街にあるし、余程人から教えられないと分からないから、知らないのも仕方ないと思うよ」
荷物があるだろうからと、車を出してくれた玲司の横で、溜息が出そうになる。黒のRV車は玲司の運転が上手なのか、とても快適だ。
数年住んで、商店街も比較的頻繁に利用していたものの、あまり近隣の人達と交流自体してこなかった為、『la maison』の存在をこれまで知らなかったのである。
「それはそうですけど、あの素敵なお店をずっと知らなかったのが、何だか勿体無く思えて」
「桔梗君にそう言ってもらえるのは嬉しいな。あの店、殆ど趣味でやってるようなものだから」
「……え?」
郊外とはいえ、それなりの敷地に店舗を構え、更に三階建ての自宅まである現状を、趣味と言ってのけるのが凄い。
桔梗のぼやけた知識でも、寒川家の事は知っている。
アルファ最上位名家『四神』のひとつ、玄武の寒川家。先代──玲司や総一朗の父親が「K・Fコーポレーション」を設立し、一気に経済界へと進出してきた。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いを持ち、業種は多岐に渡っている。
おそらく総一朗が長男で家督を継いだと思われる。普通なら、玲司も兄の傍で手腕を奮うと想像に固くないのに、それが郊外の一角で趣味でお店を経営しているとか、何か事情でもあるのだろうか。
「僕はね、寒川家では異端なんだよね」
「え?」
まるで桔梗の思考を読んだかのように、唐突に玲司が言葉を紡ぐ。
「僕は寒川の父と、偶然居合わせた時にヒートになったオメガの母との間に生まれた子供なんだよ」
衝撃的な玲司からの告白に、桔梗は二の句が告げられないまま、車は家を出てから長年住んでいるマンションへと到着する。
学生時代から桔梗の父が契約していたオメガ専用と謳っていたマンション。流石にアルファの住人はいなかったが、ベータが普通に住んでいた時期もあった。
元は白亜と呼べるべき外壁も、時間経過でペンキは剥がれ、水垢でくすんでいる。若い人は中心地に行ってしまう為、このマンションの住居者も老齢が多く、空き部屋も目立つ。桔梗の部屋の左右も、数年前までは住居者が居たものの、現在はどちらも空室となっている。
「それはセキュリティ的にも不安がありましたね。同居の話を提案して良かったです」
にっこり玲司が言うのを、桔梗も「そうですね」と返すにとどめた。
両隣が空いてから、いつ上司が押し掛けてくるのか不安だった。杜撰なセキュリティで、誰もが入り込めるマンションは、犯罪者までもウエルカム状態だったからだ。
これまで何もなかったのは桔梗がラッキーなだけであって、今後もそうなるとは限らない。今回は不幸中の幸いだったと言えるのだろう。
桔梗は、近くのコインパーキングで駐車した玲司を伴い、マンションのエントランスに入ったが。
「桔梗!」
影から名前を呼ばれ、咄嗟に振り返った桔梗は、現れた人物を見て硬直する。
昨日さんざん桔梗をこき下ろし、父親に嘘を流し込んだ卑劣な上司がそこに居たのだから。
「……どうして葛川部長が」
ここに居るのだ、と詰問しようとした。だが、襲われかけた事や、社員の前で公開処刑的な扱いを受けたせいで、言葉が喉に詰まって出てこない。
桔梗は震える手を縋るように玲司の袖を握り、腕に額を押し付ける。姿を見るのも嫌だ。
「ダメじゃないか、桔梗。勝手に出歩いたりして。お前が無断欠勤するから心配して、わざわざ見舞いに来たんだぞ?」
無断欠勤?
この元上司は何世迷言を言っているのだ。
自分に関係を強要しておいて、それが拒否されれば父親にオメガである桔梗が誘惑したとのたまい、挙句の果てに桔梗を会社から追い出した。
オメガだから、ヒエラルキーの最底辺の存在だから、頂点のアルファに奴隷のように従わなくてはならないのか。オメガはアルファの玩具でい続けろというつもりなのか。冗談ではない。
桔梗は今にも感情が爆発しそうで、全身がぶるぶると震える。
父親に家を出された時にも、こんなに感情が昂ぶった事はない。
「ところでその男は誰だ? ああ、俺が相手してあげれなかったから、寂しくて引っ掛けたのか。安心しろ。ずっとお前の傍にいて、満足させてあげるからな」
「……なっ!」
あまりに身勝手な元上司の主張に、桔梗は絶句して言葉が紡げないでいると、隣にいた玲司から冷たい言葉が発せられた。
「何を妄言を吐いているんです。桔梗君を見てどうして気づかないんですか。彼は全身であなたを拒否しています。これ以上虚言を吐くのでしたら、警察を呼びますよ?」
「はあ? お前、何を言って……」
「ああ、それから、桔梗君は僕の番です。そこからでも彼の項が見えるでしょう?」
肩を抱かれ、頭上から厳しい声が元上司へと投げられる。玲司の爽やかなハーブの香りが桔梗の心を落ち着かせる。
「あと、桔梗君の不当解雇については、当家の弁護士に一任していますので、問い合わせはそちらへどうぞ」
玲司は冷ややかに言い、元上司へと一枚の紙を指で弾いて飛ばす。ひらひらと間を頼りなく舞い、慇懃無礼な男の足元へ落ちた。
アルファの中にもヒエラルキーが存在し、どうやら玲司の方がアルファの雄として優位に立っているらしい。元上司はそそくさと紙片を拾い目を落とすと、目が飛び出そうな程瞠目する。
口をパクパクと動かし、何か暴言を吐こうとしているようだが、すぐさま憎々しげに睨んだ後、逃げるように二人の前から立ち去ったのだった。
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