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2-33 第2章 最終話 その幸せに気づいている
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「さぁ、リタよ。思う存分に歌ってくれ、俺は今日は主人である領主の跡取りだからな、いろいろと忙しいがきちんと聞いているぞ」
「リタさん、私も聞いていましゅ。ふふふっ、楽しみにしていましゅ」
ジーニャスを領主の跡取りとして紹介する宴は豪勢なものだった、領主の館のホールが飾りつけられて大勢の貴族たちがやってきた。僕は人間がエルフが着ると思っている服、何故か薄い白い絹の服を着せられて歌うことになった。ジーニャスとシャールが声をかけてくれ、それからはあんまり大勢の人間が来るので驚いたが、僕は決まっている曲を歌っていればいいのだから実は結構楽しかった。
宴が始まってすぐの頃にジーニャスからは俺は英雄などと呼ばれている、俺が英雄ならお前たちもそうだと言われたが、そんなことに関係なく僕たちは普通の冒険者でいたかった。さすがに一緒に戦うのに姿を隠しておくことはできなかったから、僕とソアンは剣士や魔法使いたちには顔が知られていた。でも今のところ僕たちを堂々と英雄扱いする者はジーニャスくらいだ、他の剣士や魔法使いたちは笑顔で接してくれるが何も言わないでいてくれた。
そうして僕はずっと歌っていて時々休憩をしている時はソアンとお喋りをした、身長が低いソアンはどうやら初めて会う人間から、お手伝いの子どもだと思われていた。ソアンの身長はとても低いし、最近成人したばかりなのだから無理もなかった。それに子どもだと思われているほうが貴族も相手にしなかった、ソアンに話しかけてくる者はほとんどいなかった。
「うぅ、緊張します。それにお借りしたドレスのコルセットがきつくて苦しい」
「大丈夫かい、ソアン」
「はい、リタ様。私は大丈夫です、中世の女性の苦しさを味わっているだけです」
「よく分からないけど、女性はとても大変そうだね」
「コルセットとかハイヒールとか、綺麗になるには苦労がつきものなのです。さぁ、休憩は終わりです」
「本当に女性は大変そうだなぁ、じゃあ次の曲の楽譜を用意しておくれ」
ソアンは可愛らしいドレスを来て僕の傍で楽譜をめくる役をしていた、本当は全ての曲を覚えてしまっているから必要ないのだが、ソアンは貴族相手に礼儀正しく振る舞える自信がないと言っていた。だから僕の傍にいて時々楽譜をめくって、表面上はにこやかに微笑んでいてとても可愛らしかった。僕はソアンとこうして普通に一緒にいられる幸せを感じていた、そう思うと声も澄んで良く歌うことができた。
宴のほとんどを歌って過ごした僕だったが、主にオラシオン国のことやゼーエン家の成り立ちを歌った。でも、それだけでは勿体ないというソアンの主張であにそんも歌った。ジーニャスが事前に歌詞を確認して問題ないと言ってくれたからだ、ソアンは布教活動もばっちりですと宗教は関係ないのに不思議なことを言っていた。そうやって時々休憩をはさみながら、ずっと僕は歌っていたら宴が終わっていた。
「ふはぁ~、やっと終わりましたね。リタ様」
「そうだね、ソアン」
「私たちの為にご馳走がとってあるそうです」
「それは楽しみだ、有難くいただこう」
「その前にリタ様、私とせっかくですから一曲踊ってください」
「いいよ、村祭りの時みたいに踊ればいいのかな」
ドレス姿のソアンはやっぱりとても可愛らしかった、せっかくだからと僕たちはジーニャスたちしかいないホールで、僕が小さい声で故郷の曲を歌いながらソアンと二人で踊ってみた。村祭りでも結婚した者や若くてつきあっている者、そんな者同士で踊ることがあった。それに今回は間に合わせだがマナー講座で習っていたので、村にいた時よりも洗練された動きで踊ることができた。
ソアンは僕と踊ってとても楽しそうだった、なぜだろうか最近ソアンが養い子ではなく、普通のエルフのような女性に見える時があった。これが成長したということなのだろうか、ソアンもいつかは誰かと結婚するかもしれないのだ。それは嬉しいと思ったが、なぜだか少し胸が痛んだ。でもそれがどうしてそうなるのかは分からなかった、ただソアンが結婚するのなら幸せになれる相手だといいと思った。
「リタ様、やっとコルセットから解放されました。うぅ、ご飯が美味しい」
「僕もこんな御馳走は久しぶりだ、ゼーエン家は食通なんだね」
「リタ様とも踊ってもらえたし、私はこのことを一生ずっと忘れません」
「今からでもいくらだって時間はある、また一緒に踊ってみるのも楽しそうだ」
「はい、リタ様。でも鈍……、そこがリタ様の良いところですか」
「うん? どうかしたかいソアン」
僕たちは正式な宴が終わった後で食堂でジーニャスからの個人的な宴にでた、ソアンはドレスからいつもの冒険者姿に戻っていた、僕もひらひらした絹の服から解放されて普通の服に着替えた。ジーニャスたちとお喋りをしながら、そうしていっぱいご馳走を食べて楽しく過ごした。今日は領主の館に泊まっていって欲しいということだったから、食事が終わったら眠る前に二人で庭園を散歩することにした。
「リタ様、どうですか。…………家出を楽しんでおられますか」
「ふふふっ、そうだね。ソアン、君はどうだい」
「私は楽しいです!! 危険なこともありましたけど、それが冒険というものです!!」
「そうだね、ソアン。僕も楽しいよ、家出がこんなに楽しいなんて、少し悪いことをしている気分だ」
「今頃、ディルビオさんが村の仕事に、可哀そうに埋もれているかもしれないですね」
「まだ僕たちは帰れそうにないから仕方がないね、僕の病気に効くエリクサーは使ってしまったし」
ジーニャスを紹介する宴が終わって庭園で僕たちはそんなことを話していた、もう僕たちには分かっているまだプルエールの森には帰れない、そう僕の病気が完全に治ってしまうか、病気を受け入れることができるまでは帰れないのだ。ソアンには迷惑をかけていると思うが、僕には彼女がどうしても必要だ。そして、ソアンにとってもきっとまだ僕が必要なのだと今回のことで思った。
「ソアン、まだしばらく僕の傍にいてくれるかい。大事な君に大切な者ができるまで、プルエールの森から離れて一緒にいてくれるかい」
「ええ、リタ様。どうかお傍にいさせてください、リタ様に大切な方ができるまで」
「でも僕にそんな者ができるかな、プルエールの森でも僕はモテなかった」
「リタ様は鈍……繊細なんです!! 実はリタ様を狙っていた女の子はいっぱいいました!!」
「え? それじゃ、どうして僕は一人だったんだろう??」
「リタ様はちょっと鈍……神秘的過ぎて近づき辛いところがあります、逆にディルビオさんは話しかけやすくてモテてましたね」
僕たちは故郷の話を懐かしく思い出しながらした、そうしても何も辛いことはなかった。僕は昔の頑張り過ぎていた頃の自分が少し恥ずかしかった、でも今は自然体でいられるからとても幸せだ。今回の件でエリクサーは手に入らなかったから、僕の病気はまだ治らないけどソアンと一緒にいられて幸せなんだ。危険な状況に陥ったからこそわかるが、魔法が使えなくても平穏な日常がとても幸せなんだ。
「それじゃ、ソアン。改めて僕と一緒に家出を続けようか? そしてまた二人で楽しい冒険もしよう!!」
「はい、リタ様!! こんな私で良ければ、ずっと喜んでお傍にいます!!」
僕はまたソアンといられて幸せだと本当に思った、お互いに命を預けて戦えることが誇らしくもあった。僕が幸せなのはソアンを大事に思っているからだった、そうしてソアンからも大事に思われているからだった。心から相手を思い思われるのはこんなにも幸せなことなのだ、それに気がつくことができた僕はやっぱりとても幸せだった。ソアンと二人で笑って、これからも一日ずつを楽しんで生きるのだ。
どうか全ての者が自分の当たり前の幸せに感謝することができますように、たった少し自分を振り返ってその幸せに気づくだけで世界は凄く変わって見えるのだ。
「リタさん、私も聞いていましゅ。ふふふっ、楽しみにしていましゅ」
ジーニャスを領主の跡取りとして紹介する宴は豪勢なものだった、領主の館のホールが飾りつけられて大勢の貴族たちがやってきた。僕は人間がエルフが着ると思っている服、何故か薄い白い絹の服を着せられて歌うことになった。ジーニャスとシャールが声をかけてくれ、それからはあんまり大勢の人間が来るので驚いたが、僕は決まっている曲を歌っていればいいのだから実は結構楽しかった。
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そうして僕はずっと歌っていて時々休憩をしている時はソアンとお喋りをした、身長が低いソアンはどうやら初めて会う人間から、お手伝いの子どもだと思われていた。ソアンの身長はとても低いし、最近成人したばかりなのだから無理もなかった。それに子どもだと思われているほうが貴族も相手にしなかった、ソアンに話しかけてくる者はほとんどいなかった。
「うぅ、緊張します。それにお借りしたドレスのコルセットがきつくて苦しい」
「大丈夫かい、ソアン」
「はい、リタ様。私は大丈夫です、中世の女性の苦しさを味わっているだけです」
「よく分からないけど、女性はとても大変そうだね」
「コルセットとかハイヒールとか、綺麗になるには苦労がつきものなのです。さぁ、休憩は終わりです」
「本当に女性は大変そうだなぁ、じゃあ次の曲の楽譜を用意しておくれ」
ソアンは可愛らしいドレスを来て僕の傍で楽譜をめくる役をしていた、本当は全ての曲を覚えてしまっているから必要ないのだが、ソアンは貴族相手に礼儀正しく振る舞える自信がないと言っていた。だから僕の傍にいて時々楽譜をめくって、表面上はにこやかに微笑んでいてとても可愛らしかった。僕はソアンとこうして普通に一緒にいられる幸せを感じていた、そう思うと声も澄んで良く歌うことができた。
宴のほとんどを歌って過ごした僕だったが、主にオラシオン国のことやゼーエン家の成り立ちを歌った。でも、それだけでは勿体ないというソアンの主張であにそんも歌った。ジーニャスが事前に歌詞を確認して問題ないと言ってくれたからだ、ソアンは布教活動もばっちりですと宗教は関係ないのに不思議なことを言っていた。そうやって時々休憩をはさみながら、ずっと僕は歌っていたら宴が終わっていた。
「ふはぁ~、やっと終わりましたね。リタ様」
「そうだね、ソアン」
「私たちの為にご馳走がとってあるそうです」
「それは楽しみだ、有難くいただこう」
「その前にリタ様、私とせっかくですから一曲踊ってください」
「いいよ、村祭りの時みたいに踊ればいいのかな」
ドレス姿のソアンはやっぱりとても可愛らしかった、せっかくだからと僕たちはジーニャスたちしかいないホールで、僕が小さい声で故郷の曲を歌いながらソアンと二人で踊ってみた。村祭りでも結婚した者や若くてつきあっている者、そんな者同士で踊ることがあった。それに今回は間に合わせだがマナー講座で習っていたので、村にいた時よりも洗練された動きで踊ることができた。
ソアンは僕と踊ってとても楽しそうだった、なぜだろうか最近ソアンが養い子ではなく、普通のエルフのような女性に見える時があった。これが成長したということなのだろうか、ソアンもいつかは誰かと結婚するかもしれないのだ。それは嬉しいと思ったが、なぜだか少し胸が痛んだ。でもそれがどうしてそうなるのかは分からなかった、ただソアンが結婚するのなら幸せになれる相手だといいと思った。
「リタ様、やっとコルセットから解放されました。うぅ、ご飯が美味しい」
「僕もこんな御馳走は久しぶりだ、ゼーエン家は食通なんだね」
「リタ様とも踊ってもらえたし、私はこのことを一生ずっと忘れません」
「今からでもいくらだって時間はある、また一緒に踊ってみるのも楽しそうだ」
「はい、リタ様。でも鈍……、そこがリタ様の良いところですか」
「うん? どうかしたかいソアン」
僕たちは正式な宴が終わった後で食堂でジーニャスからの個人的な宴にでた、ソアンはドレスからいつもの冒険者姿に戻っていた、僕もひらひらした絹の服から解放されて普通の服に着替えた。ジーニャスたちとお喋りをしながら、そうしていっぱいご馳走を食べて楽しく過ごした。今日は領主の館に泊まっていって欲しいということだったから、食事が終わったら眠る前に二人で庭園を散歩することにした。
「リタ様、どうですか。…………家出を楽しんでおられますか」
「ふふふっ、そうだね。ソアン、君はどうだい」
「私は楽しいです!! 危険なこともありましたけど、それが冒険というものです!!」
「そうだね、ソアン。僕も楽しいよ、家出がこんなに楽しいなんて、少し悪いことをしている気分だ」
「今頃、ディルビオさんが村の仕事に、可哀そうに埋もれているかもしれないですね」
「まだ僕たちは帰れそうにないから仕方がないね、僕の病気に効くエリクサーは使ってしまったし」
ジーニャスを紹介する宴が終わって庭園で僕たちはそんなことを話していた、もう僕たちには分かっているまだプルエールの森には帰れない、そう僕の病気が完全に治ってしまうか、病気を受け入れることができるまでは帰れないのだ。ソアンには迷惑をかけていると思うが、僕には彼女がどうしても必要だ。そして、ソアンにとってもきっとまだ僕が必要なのだと今回のことで思った。
「ソアン、まだしばらく僕の傍にいてくれるかい。大事な君に大切な者ができるまで、プルエールの森から離れて一緒にいてくれるかい」
「ええ、リタ様。どうかお傍にいさせてください、リタ様に大切な方ができるまで」
「でも僕にそんな者ができるかな、プルエールの森でも僕はモテなかった」
「リタ様は鈍……繊細なんです!! 実はリタ様を狙っていた女の子はいっぱいいました!!」
「え? それじゃ、どうして僕は一人だったんだろう??」
「リタ様はちょっと鈍……神秘的過ぎて近づき辛いところがあります、逆にディルビオさんは話しかけやすくてモテてましたね」
僕たちは故郷の話を懐かしく思い出しながらした、そうしても何も辛いことはなかった。僕は昔の頑張り過ぎていた頃の自分が少し恥ずかしかった、でも今は自然体でいられるからとても幸せだ。今回の件でエリクサーは手に入らなかったから、僕の病気はまだ治らないけどソアンと一緒にいられて幸せなんだ。危険な状況に陥ったからこそわかるが、魔法が使えなくても平穏な日常がとても幸せなんだ。
「それじゃ、ソアン。改めて僕と一緒に家出を続けようか? そしてまた二人で楽しい冒険もしよう!!」
「はい、リタ様!! こんな私で良ければ、ずっと喜んでお傍にいます!!」
僕はまたソアンといられて幸せだと本当に思った、お互いに命を預けて戦えることが誇らしくもあった。僕が幸せなのはソアンを大事に思っているからだった、そうしてソアンからも大事に思われているからだった。心から相手を思い思われるのはこんなにも幸せなことなのだ、それに気がつくことができた僕はやっぱりとても幸せだった。ソアンと二人で笑って、これからも一日ずつを楽しんで生きるのだ。
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