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2-19命をかけた約束をする
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「ソアン、僕の病気は命には関係がない。だからもしエリクサーを見つけたら、シャールに使ってはいけないだろうか」
「………………リタ様が一つだけお約束してくれたら、私もそうしてもいいと考えています」
少し長い沈黙の後でソアンはそう言った、どうやら彼女もシャールの境遇には同情しているようだ。だが僕は一体なんの約束をすればいいのだろうか、それは心が弱っている僕でも守れるものなのかが分からなかった。約束というものは大切なものだ、それがたかが口約束でも時には、何をおいても守らなければならないのだ。
「なんだい、僕は何を約束すればいいんだい。ソアン」
だから僕はソアンに率直に聞いてみた、そうしたらソアンはとても真剣な顔をしていた。そう今から命をかけて戦う剣士のように、今すぐにデビルベアと戦ってこいと言われたかのように、真剣で悲壮な決意を持っていた。ソアンにとってはこの約束が何より重要なものなのだ、そう思わせるような表情でソアンは僕にこう言ってきた。
「決してリタ様はご自分の命を自ら断たない、どうか揺るぐことがない強い決心で、私にそうお約束してください」
ソアンの言葉には心がこもっていた、僕のことを想ってくれている温かく強い心だ。ソアンはこんな心配していたのだ、僕が心の病気に負けてしまった時に、自ら命を断つ可能性を恐れていたのだ。僕は正直になところ簡単には頷けなかった、確かにこの心の病気のことをよく知らなかった頃に、僕は自分の命を軽く考えて失くしてしまってもいいと思っていたからだ。
僕の心の病気は今は調子が良いが悪い時には本当に悲観的な想像しかできない、ソアンを僕のつまらない病気につきあわせてしまっている駄目な奴だとか、そもそもこんな心の病気になるなんて心が弱い証拠で元々の僕が駄目なエルフなのだ。そんなことを考えてしまうことがあった、だからソアンは僕に対して約束を求めているのだ、僕自身の意志で自分のこの命を大事にすると僕に言わせたいのだ。
でも僕はソアンともう一度約束している、ソアンが追いつけないような場所に一人で行かないと約束しているのだ。今度の約束はそれをもっと具体的に言い表したものだった、ソアンの追いつけないような場所、いわゆる世界の大きな光である魂の帰る場所へ一人で行かないというものだ。僕は具体的にそう言われて少し考え込んだ、調子の悪い時の僕は本当に気持ちが落ち込んでしまうからだ。
でもソアンが僕のことを想っていてくれるのなら、彼女が僕の心配をしてくれているのなら、そんな彼女をおいて一人でどこへも行くわけにはいかなかった。
「……ソアン」
「はい、リタ様」
「僕はやっぱり自分のことが駄目なエルフだと思う時がある、君が心配しているように自分の命を軽視しがちだ」
「そうです、リタ様。でもそれはご病気から起こる気持ちです、今だけの錯覚なのです」
「うん、だから僕自身を戒める意味もこめて、君にこう言わせて欲しい」
「リタ様は私のとても大事なお方です、ですからどんな言葉でも私は受け入れましょう」
僕はソアンのことをそっと抱きしめた、僕のことを僕よりも理解してくれて、そうして僕を心配してくれる彼女が本当に愛おしかったからだった。僕の小さな養い子はいつの間にこんなに大きくなったのだろう、僕のことを逆に大事にしてくれるくらいにソアンは大きくなっていた。体は小さくてもその温かい心はとても広く寛大だった、それでいて僕がいなくなることに怯えてもいた、僕はそんな彼女が本当に愛おしかった。
「僕は自分の命を粗末にはしない、君の命と同じくらいに大事にすると約束するよ」
「……リタ様。どうか私の命よりも大事にしてください、それが私の幸せでもあるのですから」
「ソアンのことも僕は凄く大事なんだよ、僕にとってソアンはとても大事な存在だ」
「それはっ!? それはとっても嬉しいです。はい、リタ様も私にとって大事な存在なのです」
僕たちはお互いに大事な存在であることを確かめ合って笑った、ソアンといるとポカポカと温かい気持ちが溢れてきて自然と笑顔になれた。それから帰り道はずっとソアンと手を繋いで歩いた、繋いだ小さな手は温かく僕はそこから勇気を貰えるような気がした。ソアンも楽しそうにお喋りしながら笑っていた、ただ最後にソアンは僕に向かってとても大事な忠告した。
「シャールさんにエリクサーをお譲りになっても構いません、でもリタ様。必ず何かそれに見合うだけの対価を貰ってください」
「エリクサーにつりあうだけの対価か、……それは大きな対価が必要だな。でも相手次第だけど僕に良い考えがあるよ、きっとエリクサーに似合うだけの大きくて素晴らしい対価になる」
そうやって話し合って僕たちはエリクサーを見つけたらシャールに譲ることにした、他にも障害を抱えている子どもはいっぱいいるが、僕たちの知っている人間たちでそれも子どもで真っ先にエリクサーを必要としているのは彼女だったからだ。他の子どもたちにはとても申し訳ないが、僕たちは神様でも何でもないただのエルフとハーフエルフなのだ。僕たちはその日はダンジョンには行かず、ゆっくりと二人とも体を休ませることにした。その夜は僕はいつも以上にソアンを大切に抱きしめて、それからぐっすりとよく深い眠りに落ちた、夢の中では小さいがとても尊い光を手に入れている自分をみた。
翌日も僕の体調が良かったのでエリクサー探しを再開した、黄金の本の地図を元にして建物を探して一つずつ調べていった。今日見つかったのは大勢の人々が暮らせるような建物だった、小さな山のように大きく四角くてソアンはマンションみたいと言っていた。沢山の部屋があったので調べるのに時間がかかった、おそらくは部屋の作りからして居住施設だと思っていたが、もしかしてという可能性も僅かにあったから全て調べた。
「リタ様、ここで最後の部屋です」
「時間がかかったね、ソアン」
「はい、シャールさんが心配ですね」
「そのとおりだ、早くジーニャスとも合流したいな」
思った通りここはただの居住施設だった、風呂や寝室に台所などが各部屋に完備されているが、エリクサーとはなんの関係もない建物だった。僕たちはまた地図に×印をつけてその建物の屋上まで調べた、すると屋上から遠くにだったが剣士たちが集まっているのが見えた。あの剣士たちはジーニャスが連れているものたちに違いなかった、僕たちは出口に行くのを中止してジーニャスと合流しようとした。
幸いなことに剣士たちは天幕を張って動いていなかった、だから僕たちが半刻の間少し走ればその剣士たちのいるところについた。僕たちはジーニャスとの面談を希望して見張りの剣士に話しかけた、その剣士は一旦天幕の中に入っていって、それからしばらくして僕たちも天幕の中へと通された。そこにはジーニャスとシャールがいた、ジーニャスは椅子にシャールは敷物の上に寝かされていた。
「ジーニャス、お久しぶりです。お話があるのですが……」
「残念だがエルフの民たちよ、お前たちの話を聞いている暇がない」
久しぶりにあったジーニャスの顔色が悪かった、エテルノのダンジョンにこもって無理をしている、それだけではなさそうな顔をしていた。ジーニャスはそれから僕たちに一方的に話した、相手のことを思いやる彼がそんな話し方をするくらい、そのくらい事態はかなり悪い状況だったのだ。だからジーニャスは僕たちのことを信じて、こんなとんでもない話をしてくれた。
「実はな、これからここに兄上が来る」
「フォルクさんが、それでは!!」
「そうだ、たとえこの大魔法使いの俺がエリクサーを見つけても、シャールにそれを飲ませてやれないということだ」
「それで僕たちはどうしたら、何をしたらいいのですか」
ジーニャスは僕とソアンの顔を見て、そうして何かを決意したのか真剣な表情で慎重に言葉を紡いだ。それは全く僕たちが予想していなかったことだった、それと同時にとても危険なことでもあった。だがジーニャスには他に方法がなかった、フォルクがジーニャスについて来いと言ってしまえば、その弟であるジーニャスには今のところ逆らう理由が見つけられないのだ。
「リタとソアンよ、このシャールをお前たちと共に連れていってくれ」
「………………リタ様が一つだけお約束してくれたら、私もそうしてもいいと考えています」
少し長い沈黙の後でソアンはそう言った、どうやら彼女もシャールの境遇には同情しているようだ。だが僕は一体なんの約束をすればいいのだろうか、それは心が弱っている僕でも守れるものなのかが分からなかった。約束というものは大切なものだ、それがたかが口約束でも時には、何をおいても守らなければならないのだ。
「なんだい、僕は何を約束すればいいんだい。ソアン」
だから僕はソアンに率直に聞いてみた、そうしたらソアンはとても真剣な顔をしていた。そう今から命をかけて戦う剣士のように、今すぐにデビルベアと戦ってこいと言われたかのように、真剣で悲壮な決意を持っていた。ソアンにとってはこの約束が何より重要なものなのだ、そう思わせるような表情でソアンは僕にこう言ってきた。
「決してリタ様はご自分の命を自ら断たない、どうか揺るぐことがない強い決心で、私にそうお約束してください」
ソアンの言葉には心がこもっていた、僕のことを想ってくれている温かく強い心だ。ソアンはこんな心配していたのだ、僕が心の病気に負けてしまった時に、自ら命を断つ可能性を恐れていたのだ。僕は正直になところ簡単には頷けなかった、確かにこの心の病気のことをよく知らなかった頃に、僕は自分の命を軽く考えて失くしてしまってもいいと思っていたからだ。
僕の心の病気は今は調子が良いが悪い時には本当に悲観的な想像しかできない、ソアンを僕のつまらない病気につきあわせてしまっている駄目な奴だとか、そもそもこんな心の病気になるなんて心が弱い証拠で元々の僕が駄目なエルフなのだ。そんなことを考えてしまうことがあった、だからソアンは僕に対して約束を求めているのだ、僕自身の意志で自分のこの命を大事にすると僕に言わせたいのだ。
でも僕はソアンともう一度約束している、ソアンが追いつけないような場所に一人で行かないと約束しているのだ。今度の約束はそれをもっと具体的に言い表したものだった、ソアンの追いつけないような場所、いわゆる世界の大きな光である魂の帰る場所へ一人で行かないというものだ。僕は具体的にそう言われて少し考え込んだ、調子の悪い時の僕は本当に気持ちが落ち込んでしまうからだ。
でもソアンが僕のことを想っていてくれるのなら、彼女が僕の心配をしてくれているのなら、そんな彼女をおいて一人でどこへも行くわけにはいかなかった。
「……ソアン」
「はい、リタ様」
「僕はやっぱり自分のことが駄目なエルフだと思う時がある、君が心配しているように自分の命を軽視しがちだ」
「そうです、リタ様。でもそれはご病気から起こる気持ちです、今だけの錯覚なのです」
「うん、だから僕自身を戒める意味もこめて、君にこう言わせて欲しい」
「リタ様は私のとても大事なお方です、ですからどんな言葉でも私は受け入れましょう」
僕はソアンのことをそっと抱きしめた、僕のことを僕よりも理解してくれて、そうして僕を心配してくれる彼女が本当に愛おしかったからだった。僕の小さな養い子はいつの間にこんなに大きくなったのだろう、僕のことを逆に大事にしてくれるくらいにソアンは大きくなっていた。体は小さくてもその温かい心はとても広く寛大だった、それでいて僕がいなくなることに怯えてもいた、僕はそんな彼女が本当に愛おしかった。
「僕は自分の命を粗末にはしない、君の命と同じくらいに大事にすると約束するよ」
「……リタ様。どうか私の命よりも大事にしてください、それが私の幸せでもあるのですから」
「ソアンのことも僕は凄く大事なんだよ、僕にとってソアンはとても大事な存在だ」
「それはっ!? それはとっても嬉しいです。はい、リタ様も私にとって大事な存在なのです」
僕たちはお互いに大事な存在であることを確かめ合って笑った、ソアンといるとポカポカと温かい気持ちが溢れてきて自然と笑顔になれた。それから帰り道はずっとソアンと手を繋いで歩いた、繋いだ小さな手は温かく僕はそこから勇気を貰えるような気がした。ソアンも楽しそうにお喋りしながら笑っていた、ただ最後にソアンは僕に向かってとても大事な忠告した。
「シャールさんにエリクサーをお譲りになっても構いません、でもリタ様。必ず何かそれに見合うだけの対価を貰ってください」
「エリクサーにつりあうだけの対価か、……それは大きな対価が必要だな。でも相手次第だけど僕に良い考えがあるよ、きっとエリクサーに似合うだけの大きくて素晴らしい対価になる」
そうやって話し合って僕たちはエリクサーを見つけたらシャールに譲ることにした、他にも障害を抱えている子どもはいっぱいいるが、僕たちの知っている人間たちでそれも子どもで真っ先にエリクサーを必要としているのは彼女だったからだ。他の子どもたちにはとても申し訳ないが、僕たちは神様でも何でもないただのエルフとハーフエルフなのだ。僕たちはその日はダンジョンには行かず、ゆっくりと二人とも体を休ませることにした。その夜は僕はいつも以上にソアンを大切に抱きしめて、それからぐっすりとよく深い眠りに落ちた、夢の中では小さいがとても尊い光を手に入れている自分をみた。
翌日も僕の体調が良かったのでエリクサー探しを再開した、黄金の本の地図を元にして建物を探して一つずつ調べていった。今日見つかったのは大勢の人々が暮らせるような建物だった、小さな山のように大きく四角くてソアンはマンションみたいと言っていた。沢山の部屋があったので調べるのに時間がかかった、おそらくは部屋の作りからして居住施設だと思っていたが、もしかしてという可能性も僅かにあったから全て調べた。
「リタ様、ここで最後の部屋です」
「時間がかかったね、ソアン」
「はい、シャールさんが心配ですね」
「そのとおりだ、早くジーニャスとも合流したいな」
思った通りここはただの居住施設だった、風呂や寝室に台所などが各部屋に完備されているが、エリクサーとはなんの関係もない建物だった。僕たちはまた地図に×印をつけてその建物の屋上まで調べた、すると屋上から遠くにだったが剣士たちが集まっているのが見えた。あの剣士たちはジーニャスが連れているものたちに違いなかった、僕たちは出口に行くのを中止してジーニャスと合流しようとした。
幸いなことに剣士たちは天幕を張って動いていなかった、だから僕たちが半刻の間少し走ればその剣士たちのいるところについた。僕たちはジーニャスとの面談を希望して見張りの剣士に話しかけた、その剣士は一旦天幕の中に入っていって、それからしばらくして僕たちも天幕の中へと通された。そこにはジーニャスとシャールがいた、ジーニャスは椅子にシャールは敷物の上に寝かされていた。
「ジーニャス、お久しぶりです。お話があるのですが……」
「残念だがエルフの民たちよ、お前たちの話を聞いている暇がない」
久しぶりにあったジーニャスの顔色が悪かった、エテルノのダンジョンにこもって無理をしている、それだけではなさそうな顔をしていた。ジーニャスはそれから僕たちに一方的に話した、相手のことを思いやる彼がそんな話し方をするくらい、そのくらい事態はかなり悪い状況だったのだ。だからジーニャスは僕たちのことを信じて、こんなとんでもない話をしてくれた。
「実はな、これからここに兄上が来る」
「フォルクさんが、それでは!!」
「そうだ、たとえこの大魔法使いの俺がエリクサーを見つけても、シャールにそれを飲ませてやれないということだ」
「それで僕たちはどうしたら、何をしたらいいのですか」
ジーニャスは僕とソアンの顔を見て、そうして何かを決意したのか真剣な表情で慎重に言葉を紡いだ。それは全く僕たちが予想していなかったことだった、それと同時にとても危険なことでもあった。だがジーニャスには他に方法がなかった、フォルクがジーニャスについて来いと言ってしまえば、その弟であるジーニャスには今のところ逆らう理由が見つけられないのだ。
「リタとソアンよ、このシャールをお前たちと共に連れていってくれ」
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