アビス ~底なしの闇~

アキナヌカ

文字の大きさ
10 / 30

10新聞記事

しおりを挟む
「まさか、アビスにも種類があんのかよ」
「また新しいことを知ったね」

「帰ったらハンターギルドの図書室で調べてみようぜ」
「それじゃ、黒石を回収しておこう」

「どれも四等級以上だな、アビスにも強いやつがまだいるのか」
「一人でだったら厄介だったね、二人でちょうど良いくらいだった」

 それから俺たちは夜が明けたら依頼達成印を貰って、また乗合馬車で首都テンプルムに帰ってきた。そうしてハンターギルドに行って報酬を貰い、黒石を銃弾用に十等級以外はとっておいた。十等級の丸い黒石はまたアーツを作ろうと思って、それからできるだけ太陽に当てておくことにした。それから真っ先にハンターギルドの図書室に向かった、そこに書いてあることをまとめるとこうだった、アビスには稀に変種が出るということだった。

「昨日の奴が変種って奴か、あれが複数来たら厄介だな」
「僕たちもまだまだ成長が必要ってことさ」

「確かにオウガ!! 運動場で練習するぞ!!」
「了解、ロン。まだまだ強くならなきゃね」

「今まで変種に襲われなかったのは、本当に運が良かったぜ」
「全くだよ、あんな個体がいるとは思っていなかった」

 そうして俺たちは運動場で実戦形式の練習試合を繰り返した、他にもハンターがいたからできれば仲良くなって試合をしてみたかった。でもそれは難しそうだった、他のハンターは俺たちのことを馬鹿にするように見ていた。同じ十つ星のハンターでも違いがあるのか、俺はそんなこと分からなかったが、受付でハンターギルドのお姉さんに声をかけられて初めて理由が分かった。

「なんだよこれ!? 『期待の十つ星のハンター現る!!』ってなんで俺たちが勝手に新聞に載せられてるんだ!?」
「何これ? ロンハンターも、オウガハンターも恋人になってくれる女性を募集中!?」
「……やっぱりガセでしたか、その新聞社は問題が多いところでして、良ければハンターギルドの弁護士を紹介します」

「へ? 弁護士?」
「ああ、ぜひお願いします。こんな適当な嘘が書かれていることが腹立たしいので」
「それでは、少々ロビーでお待ちください」

 俺は知らなかったが弁護士というのは法律的に代わりに戦ってくれる職業らしい、オウガはハンター以外の勉強もよくしていたのでそんなことまで良く知っていた。それにしてもこの記事は酷い、酷過ぎると俺たちが改めて記事を読んでいると、金の髪に蒼い瞳の男性が現れた。スーソルさんといってハンターギルドの弁護士だそうだ、オールバックのきちんとした髪型にスーツの態度が丁寧な男性だった。彼はハンターギルドの部屋を借りると、分かりやすくズバッとした話をした。

「全くのでたらめをT新聞社に書かれたと、それではどこまでやります?」
「ん? どこまで?」
「どこまでというと、具体的にはどうなりますか」

「まず小さな訂正記事を書かせるなら金貨二十枚、大々的に訂正記事を書かせるなら金貨二百枚かかります。私としてはT新聞社に訂正記事を書かせてもいい加減なものになるので、小さな訂正記事と別の新聞社に依頼することをおすすめします」
「別の新聞社、結局は新聞に載るのかぁ」
「ロン、全くでたらめが書かれているよりかはマシだよ」

「それではT新聞社に小さな訂正記事を書かせるのと、別のハンターギルド御用達の新聞社に記事を書かせて貰うということでいいですか? これなら金貨二十枚は私がいただきますが、その代わりに新聞社にも友人がいるので、お二人のことを記事にするように薦めておきます」
「十つ星のハンターってそんなに珍しいのか?」
「この様子だと、かなり珍しいみたいだね」

 ということで俺たちはハンターギルド御用達の新聞社から、スーソルさんのおかげで二人とも取材を受けることになった。せっかくだからと服と靴もまた買いなおした、そうして今度は本当のことを記事にしてもらった、ただ俺が言ってみた奥さん募集中という言葉はオウガににっこり笑顔で無かったことにされた。T新聞社から訂正記事が出るのと、その通称ハンター新聞の記事が出たのは同じ日だった。それからはハンターギルドに来る別のハンター、彼らの俺たちを見る目がわりと優しくなった。

「新聞って怖いなあ、悪評がすぐに広がるもんな、オウガ」
「さすがにその辺は首都って感じだね、ロン」

「でも別の新聞社の記事が出てから、何もなくて良かったぜ」
「田舎から出てきた健気に頑張る、そんな新人ハンターって感じだったからね」

「健気には頑張ってるだろ、今だって戦闘訓練中だ」
「ロンはまだ余裕があるね、一段階上げるよ」

 俺たちはまたハンターギルドの運動場に来て、また実戦形式の戦闘訓練をしていた。オウガが一段階上げるというので速く重い攻撃がきた、でも俺の方も素早く対応して同じように攻撃しかえした。むぅ、もう二十二歳の俺が十五歳のオウガと互角なんだもんな、こいつの努力と才能は末恐ろしいものがあると俺は思った。

「おーし、昼飯だ。首都は美味い店が多くて嬉しいぜ」
「うん、魚料理の種類も豊富で美味しい」

「いつものチェーン店でいいか?」
「いいよ、僕あそこの魚料理が好きだし」

「それじゃ、肉料理。俺はハンバーグにしよう」
「ロンはいつも肉料理だね」

 そうやって和やかに俺たちは昼飯を食べていた、そうしたらどこかで見たような緑の髪に同じ色の瞳の女が、恨めし気にガラス越しにこっちを見ていた。俺はなるべくそっちを見ないようにして、美味しいハンバーグを綺麗に食べきった。そうして店を出たら、案の定。T新聞社の見覚えのある女が俺たちに喚き散らした、はっきり言って迷惑だったし煩かった。

「私が依頼した時には取材を受けなかったのに!! 他の新聞社の依頼を受けましたね!!」
「そりゃ、あんたが好き勝手に、いい加減なこと書くからだろ」
「あんなに適当な嘘を書かれても困ります」

「いいじゃないですか!? 田舎から出てきた十つ星のハンターの二人!! それだけで十分ですよ!?」
「いや、よくねぇだろ。思いっきり内容は適当だったし」
「見るに堪えないような記事でした」

「おっ、おかげで私はT新聞社を首になりかけです!! さぁ、新しい取材をさせてください!!」
「俺はお断りで、弁護士を通してくれ」
「僕もです、まず僕たちの弁護士と話してください」

 こうしてT新聞社の嘘つき女記者は去っていった、スーソルさんとはハンターギルドを通して、専属弁護士としての契約を結んでいた。何かあったらスーソルさんに頼むことになっていた、多くのハンターギルドのハンターがそうしているそうだ。俺はこれでようやく面倒な新聞記事もおさまったかと、安堵のため息を一つ吐いた。

「都会ってこういうところが怖いな、オウガ」
「新聞なんてものがあるからね、ロン」

「T新聞社って本当にいい加減なんだな」
「だから売れるっていうのもあるみたい、とにかく面白可笑しい記事が読みたい人に売れる」

「さすがに首都だけあって、いろんな人間がいるもんだなぁ」
「これで新聞騒ぎは終りだといいね」

 その後T者のあの女記者は首になったらしい、また俺たちの前に現れてぎゃあぎゃあと煩かったからだ。それ以外では俺たちは平和だった、また訓練をしながらアビス退治を続けていた。そして今日も真面目に訓練をしていたら、一人の短い銀の髪に蒼い目を持つハンターが俺たちに声をかけてきた、何でも俺たちと戦闘訓練をしたいそうだった。

「私はアレシア、私と訓練してもらえませんか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

処理中です...