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第六章 欲望 X 策謀 = 絶望 + 希望
71.アガキ
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消えた虹子、状況から考えればどう考えても誘拐である。いったいどうやってなのか方法はハッキリしないが、どうやら地下に引き込まれたらしい。
「おにいごめん……
ウチがもっとちゃんと見てたらすぐ追えたかもしれないのに。
ログ見る限りは地面の下に移動してすぐに識別信号が消えてるの。
だから落とし穴みたいなのが掘ってあって引き込まれたんだと思う」
「いや、紗由のせいじゃないよ。
一緒にいた俺がふがいないせいであいつがさらわれたんだ。
絶対に取り戻してみせるさ」
あの瞬間、紗由が地下だと叫び俺はすぐに地面を叩いたり掘ったりしたのだが、地下通路のような物はなく、もちろん落とし穴も無かった。だが位置情報は間違いなく下がっていたのだ。
崩落ならばその場に穴が開いているはずだし識別信号がそう簡単に途切れるはずがない。つまり虹子は何らかの手段で地下に引き込まれたあと、HMDRを正規の方法で脱がされたということだ。もちろん虹子本人がそんなことをするはずがないので、第三者の誘拐犯がいるのは明らかだった。
誘拐事件発生の直後からダンジョンは立ち入り禁止となり、特殊捜査官を中心とした捜査班が調査をしている。しかし一週間経っても虹子は見つかっていなかった。もちろん俺は何としても探しに行きたいと特殊警備隊へ押し掛けたり、高科先生へ直談判しにいったりしたが全て断られていた。
あげく、虹子の両親までも半ばあきらめ顔で俺を責めることもなく危険を冒してダンジョンへ行くことはないなんて言ってくる始末だ。まさかこんなことになるなんて油断してしまったのだろうか。虹子や紗由が狙われているかもしれないことはわかっていたはずなのに、まったく頭から抜け落ちていた自分に腹が立つ。
「先生、俺大学辞めますよ。
そんで特殊捜査官になるんで捜査に加えてもらえるよう働きかけできませんか?」
「綾瀬君の考えは理解できるよ。
でもそれはいくらなんでも無理筋だろう。
もし捜査官になれたとしても組織の一員が自由に動けるはずもない。
聡明な君ならそれくらい理解しているだろう?」
「じゃあどうすればいいんですか!
俺に何ができるって言うんですか!
大学だって今まで通り普通に授業やってるし、こんなのおかしいですよ!」
「残念ながら世の中と言うのはそう言うものだよ。
他にどうにかできないか僕も考えてみるから早まったまねはいけないよ?」
だが当然俺は早まった真似をしようと考えていた。問題はどう実現するかだけで、虹子さえ戻ってくれば索検取り上げとなっても構わない。だが入り口は警備隊の監視下にあってとても突破できそうにない。
結局大学で何の成果もなかった俺がトボトボと帰り道を歩いていると、紗由から連絡が入った。どうやらなにかわかったらしい。家に帰りつくと紗由がリビングのモニターへ何やら映し出しており、それはどうやらダンジョンの断面図のようだった。
「どうしたんだこれ、例の二十三階層?
やっぱりどこか不審な点があったのか?」
「それがね、すっごく微妙なんだけどさ。
地面の形が変わってて、わずかだけど高さも違ったっぽいの」
「じゃあ虹子はやっぱり地下からどこかへ連れて行かれたってことか?
誰がなんのために―― って、まさか!?」
そう言えば最近は警戒していなかったが、理恵の両親が関わっていると思われる、宗教団体の名を借りた『ウィル・ダ・ホープ』が関わっている可能性も十分ある。
それと美菜実や飛鳥山隊の関係があるかないかはわからないが、誘拐のタイミングを考えるとどれも怪しく見えるし、どれも繋がって見えてくる。俺は一体どうすればいいのだろうか。
「おにいしっかり!
とりあえず情報提供で現場を案内するっていいなよ。
もしかしたら中に入れるかもしれないじゃん!」
「よし、それで交渉してみよう。
元々当事者なんだしダメ元でも頼んでみるしかないもんな。
ありがとな、紗由!」
俺はしっかりと装備を整えてから家を出た。虹子を必ず連れて帰るために。
「おにいごめん……
ウチがもっとちゃんと見てたらすぐ追えたかもしれないのに。
ログ見る限りは地面の下に移動してすぐに識別信号が消えてるの。
だから落とし穴みたいなのが掘ってあって引き込まれたんだと思う」
「いや、紗由のせいじゃないよ。
一緒にいた俺がふがいないせいであいつがさらわれたんだ。
絶対に取り戻してみせるさ」
あの瞬間、紗由が地下だと叫び俺はすぐに地面を叩いたり掘ったりしたのだが、地下通路のような物はなく、もちろん落とし穴も無かった。だが位置情報は間違いなく下がっていたのだ。
崩落ならばその場に穴が開いているはずだし識別信号がそう簡単に途切れるはずがない。つまり虹子は何らかの手段で地下に引き込まれたあと、HMDRを正規の方法で脱がされたということだ。もちろん虹子本人がそんなことをするはずがないので、第三者の誘拐犯がいるのは明らかだった。
誘拐事件発生の直後からダンジョンは立ち入り禁止となり、特殊捜査官を中心とした捜査班が調査をしている。しかし一週間経っても虹子は見つかっていなかった。もちろん俺は何としても探しに行きたいと特殊警備隊へ押し掛けたり、高科先生へ直談判しにいったりしたが全て断られていた。
あげく、虹子の両親までも半ばあきらめ顔で俺を責めることもなく危険を冒してダンジョンへ行くことはないなんて言ってくる始末だ。まさかこんなことになるなんて油断してしまったのだろうか。虹子や紗由が狙われているかもしれないことはわかっていたはずなのに、まったく頭から抜け落ちていた自分に腹が立つ。
「先生、俺大学辞めますよ。
そんで特殊捜査官になるんで捜査に加えてもらえるよう働きかけできませんか?」
「綾瀬君の考えは理解できるよ。
でもそれはいくらなんでも無理筋だろう。
もし捜査官になれたとしても組織の一員が自由に動けるはずもない。
聡明な君ならそれくらい理解しているだろう?」
「じゃあどうすればいいんですか!
俺に何ができるって言うんですか!
大学だって今まで通り普通に授業やってるし、こんなのおかしいですよ!」
「残念ながら世の中と言うのはそう言うものだよ。
他にどうにかできないか僕も考えてみるから早まったまねはいけないよ?」
だが当然俺は早まった真似をしようと考えていた。問題はどう実現するかだけで、虹子さえ戻ってくれば索検取り上げとなっても構わない。だが入り口は警備隊の監視下にあってとても突破できそうにない。
結局大学で何の成果もなかった俺がトボトボと帰り道を歩いていると、紗由から連絡が入った。どうやらなにかわかったらしい。家に帰りつくと紗由がリビングのモニターへ何やら映し出しており、それはどうやらダンジョンの断面図のようだった。
「どうしたんだこれ、例の二十三階層?
やっぱりどこか不審な点があったのか?」
「それがね、すっごく微妙なんだけどさ。
地面の形が変わってて、わずかだけど高さも違ったっぽいの」
「じゃあ虹子はやっぱり地下からどこかへ連れて行かれたってことか?
誰がなんのために―― って、まさか!?」
そう言えば最近は警戒していなかったが、理恵の両親が関わっていると思われる、宗教団体の名を借りた『ウィル・ダ・ホープ』が関わっている可能性も十分ある。
それと美菜実や飛鳥山隊の関係があるかないかはわからないが、誘拐のタイミングを考えるとどれも怪しく見えるし、どれも繋がって見えてくる。俺は一体どうすればいいのだろうか。
「おにいしっかり!
とりあえず情報提供で現場を案内するっていいなよ。
もしかしたら中に入れるかもしれないじゃん!」
「よし、それで交渉してみよう。
元々当事者なんだしダメ元でも頼んでみるしかないもんな。
ありがとな、紗由!」
俺はしっかりと装備を整えてから家を出た。虹子を必ず連れて帰るために。
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