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第六章 欲望 X 策謀 = 絶望 + 希望
70.ショウシツ
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二十三階層のビーコンを打ち終わり次へと進んだが、予想に反して二十四、五階層に問題は見られなかった。しかしその代わりと言ってはなんだが、巨大なムカデのモンスターが現れた。
「コイツはデカいな。
このナリでいきなり天井から降ってくるなんて勘弁してくれよ」
「これって直接食べるのに向いてないやつでしょ?
かといってこの大きさって、いったいどうするのよ……」
「倒して細切れにして燃やすのが一番かな。
持って帰るにも邪魔過ぎるし、ほっといていい大きさじゃないからな」
大ムカデの体長はおよそ七メートルといったところか。さすがにこの大きさのモンスターを放置しておくわけにはいかない。別の探索隊に被害が出ようもんなら最初に遭遇した俺たちの責任問題になりかねないからだ。
幸いムカデは襲ってくるときに柔らかい腹側を向けてくる。バカなのか何か理由があるのかわからないが、進化の過程で外殻に固い部分となったのは背中側だけだ。とは言っても大抵の動物は腹側が弱点なので、頭をもたげて威嚇するタイプの動物のほとんどは謎の進化を遂げていると言えそうだ。
「俺が誘いをかけるから腹が見えたらブチ込んでくれ。
耐久力はある方だからとにかくたくさん頼むぜ?」
「了解よ、任せて!」
いつになく虹子が頼もしい返事をくれたので、俺も気兼ねなく囮になれると言うものだ。小石をいくつもぶつけていると、想定通りこっちへ向かって来たのでスタンガンで応戦する。しかし体重の差はいかんともしがたく、俺は簡単にふっとばされて地面を派手に転がった。
そこへ大ムカデの追撃がやってくる。ここでトドメの一撃と言わんばかりに頭を高く上げ勢いよく繰り出される攻撃が俺に届く直前、虹子の磁力槍が無数に放たれ大ムカデの腹に向かって突き刺さった。
「おつかれさん、いい感じだったな。
磁力操作がどんどん洗練されてきてマジですごいわ」
『そうだね、今みたいなのを配信したかったよ。
こりゃシックスが抜かれるのも時間のもんだいかもね』
「まあセブンのほうが俺よりも戦闘向けではあるからな。
欠落ビーコン探しも得意だし、将来的にはパーリー任せることになるかもな」
「またシックスはそうやって大げさに持ち上げるんだから。
煽てられたって絶対調子のったりしないよ?
私は分をわきまえてるからね」
「そこは控えめ過ぎると言うかさすがと言うか。
実際に結構いい線行ってると思ってるよ。
このペースで経験を積めば年内に二級、来年は一級が見えてくるな」
「そっかなぁ、でも目標が見えてると頑張れるもんね。
シックスの期待に応えられるようになりたいな。
イモウトちゃんだっていっぱい教えてくれてるしさ」
いつもいつもからかったり冷やかしたりしているわけじゃないと感じてくれたのか、虹子は素直に喜んでいる。ここでさすが俺の指導生なんていうと嫌味っぽくなってしまうので黙っているのが一番だ。
この後、大ムカデを解体してから燃やしてゴミを埋めてから目標階層到達と言うことで、今日のところは帰路につくことにした。
そして帰り道の二十三階層で、俺のすぐ後ろを歩いていたはずの虹子は突然姿を消した。
「コイツはデカいな。
このナリでいきなり天井から降ってくるなんて勘弁してくれよ」
「これって直接食べるのに向いてないやつでしょ?
かといってこの大きさって、いったいどうするのよ……」
「倒して細切れにして燃やすのが一番かな。
持って帰るにも邪魔過ぎるし、ほっといていい大きさじゃないからな」
大ムカデの体長はおよそ七メートルといったところか。さすがにこの大きさのモンスターを放置しておくわけにはいかない。別の探索隊に被害が出ようもんなら最初に遭遇した俺たちの責任問題になりかねないからだ。
幸いムカデは襲ってくるときに柔らかい腹側を向けてくる。バカなのか何か理由があるのかわからないが、進化の過程で外殻に固い部分となったのは背中側だけだ。とは言っても大抵の動物は腹側が弱点なので、頭をもたげて威嚇するタイプの動物のほとんどは謎の進化を遂げていると言えそうだ。
「俺が誘いをかけるから腹が見えたらブチ込んでくれ。
耐久力はある方だからとにかくたくさん頼むぜ?」
「了解よ、任せて!」
いつになく虹子が頼もしい返事をくれたので、俺も気兼ねなく囮になれると言うものだ。小石をいくつもぶつけていると、想定通りこっちへ向かって来たのでスタンガンで応戦する。しかし体重の差はいかんともしがたく、俺は簡単にふっとばされて地面を派手に転がった。
そこへ大ムカデの追撃がやってくる。ここでトドメの一撃と言わんばかりに頭を高く上げ勢いよく繰り出される攻撃が俺に届く直前、虹子の磁力槍が無数に放たれ大ムカデの腹に向かって突き刺さった。
「おつかれさん、いい感じだったな。
磁力操作がどんどん洗練されてきてマジですごいわ」
『そうだね、今みたいなのを配信したかったよ。
こりゃシックスが抜かれるのも時間のもんだいかもね』
「まあセブンのほうが俺よりも戦闘向けではあるからな。
欠落ビーコン探しも得意だし、将来的にはパーリー任せることになるかもな」
「またシックスはそうやって大げさに持ち上げるんだから。
煽てられたって絶対調子のったりしないよ?
私は分をわきまえてるからね」
「そこは控えめ過ぎると言うかさすがと言うか。
実際に結構いい線行ってると思ってるよ。
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「そっかなぁ、でも目標が見えてると頑張れるもんね。
シックスの期待に応えられるようになりたいな。
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いつもいつもからかったり冷やかしたりしているわけじゃないと感じてくれたのか、虹子は素直に喜んでいる。ここでさすが俺の指導生なんていうと嫌味っぽくなってしまうので黙っているのが一番だ。
この後、大ムカデを解体してから燃やしてゴミを埋めてから目標階層到達と言うことで、今日のところは帰路につくことにした。
そして帰り道の二十三階層で、俺のすぐ後ろを歩いていたはずの虹子は突然姿を消した。
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