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第六章 番外 閑話集

62.負けず嫌いのメイドたち

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 とある晴れた日、コ村の高台にある屋敷で争いが起きていた。

「必要かどうか、そう言う問題ではございません。
 こうしてきれいに洗って干すことで心まで美しくなるのです」

「でもベッドからはぎ取って取り替えている間に浄化魔術できれいになってるにゃ。
 だからルースーのやってることは無意味なのにゃ」

「そうそう、ルースーの役目はナルが交換してきたシーツを畳むだけでいいのだわ。
 なんでそこまで洗濯にこだわるのか不思議なのだわ。
 仕事が欲しいなら庭いじりをすればいいのだわ」

「そりゃ園芸はルースーの特技の一つですから完璧なのですけど?
 とは言ってもそれだけでは与えられた力の半分なのだもの。
 つまらないつまらないつまらないのー!」

「ではマーボと同じように料理を楽しんで主様たちのお役に立つと良いのでございます。
 掃除をして気を紛らわすのも悪くないのでございます」

「マーボは何を言っているの?
 料理も掃除も、この屋敷に必要ないことの筆頭だもの。
 つまりはルースーもマーボもどっちもどっち。
 一番役に立つのはチャーシだけ、理解できた?」

「それこそお笑い草なのだわ。
 チャーシなんて戦闘が起きなければ何の役にも立たないのだわ。
 やはり一番意味のあるのはナルの得意なベッドメイキングに決まっているのだわ」

「つまりはベッドメイキングとメイクが出来るメンマが一番にゃ。
 それじゃ第一回最優秀メイド決定会議はメンマの勝利で終了なのにゃ」

「ナルの片づけ能力のほうがメイクよりお役に立つに決まってるのだわ。
 メンマはいつも自分が一番だと思い込みすぎなのだわ」

「二人で勝手に話し合うのはおやめなさい。
 そんなくだらない内容で決められて納得できるわけないわ。
 やっぱり最終的な順位は決闘で決めるべきだもの」

「まったくこの筋肉狐は、すぐそう言う方向へ持っていこうとするのです。
 戦闘出来るのは自分だけだとわかっての発言、看過できないのです。
 そんな言い分が通るなら園芸でルースーと勝負するのです」

「ルースーがそんなこと言いだすなら料理勝負をお願いしたいのでございます。
 マーボは料理ならだれにも負けません!」

「それならメイクで勝負にゃ!」

「いやいや、勝負は片付けがいいのだわ!」

「なにを言っているの? 勝負なんだから戦うに決まっているんだもの!」

「園芸か洗濯で決着をつけるのが妥当なのです!」

 こうして今日もお屋敷ではメイドたちが自分の得意分野で優劣を決めようと大騒ぎするのでした。
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