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第三章 学校生活始めました
43.魔術と魔法
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僕の言い分を聞き終わったドーンは、神らしからぬ言いぐさで僕を責め立てた。
「魔術が使えないですって!?
そんなはずないわよ、魔人には完全適正があるんだから何かしら使えるはずよ?
ちょっと努力が足りないんじゃないの?
それともセンスかしらねぇ。
ちなみに真琴はどうなの?」
「マコはいっぱい使えるー
こないだは山に穴開けて大騒ぎにしちゃったけど……」
「力の制御がうまくできないのかしら?
全力でって思ったら本当に全力になってしまうから注意しなさいよ?
蛇口をひねる時みたいに強弱を感じるといいわ。
真琴はダイキよりも魔力が強いみたいだから難しいかもしれないけどね。
でも雷人も十分高い魔力を持っているのよ? ホントになにも使えないの?」
「逆に魔力を吸い取っちゃうみたいなんですよね。
真琴、あれやってみてくれるか?」
僕の言葉に頷いた真琴はこちらに向かって魔力を放出し始めた。僕は手のひらを合わせて魔力を感じ取ると、いつも練習しているように振りザルを手の中に作り、それを床へと放り投げた。振りザルは当然のようにはじけて消えていく。
「確かになにかおかしいわね。
魔力を練るっていうのができないわけでしょ?
あれはダイキが考えた学問だから私もよくわからないのよねぇ。
魔神たちはなにも考えなくても魔力の放出が出来るし魔力量なんて概念もないから」
「なんかズルいですね…… まあ神様だしそんなもんなのかな。
それで解決方法はないんですか?」
「魔力は血液と同じように体中を巡っているって教えよね?
だから魔人や魔族、魔獣や一部の魔物も魔術を使える。
まあ訓練せずに本能で使えるものは魔法って言うんだけどね。
今も学校で教えてると思うけど、魔力を放出して具現化すれば魔術が使える。
でも魔人は完全適正と言うものがあって、本来は本能で魔法が使えるはずなのよ」
「じゃあなんで勉強したり訓練したりして覚えるんですか?
しかも僕だけじゃなくて、一割くらいの人は全く使えないみたいだし」
「それは魔人と言う種族に固定された魔法がないからよ。
例えばドラゴン族や近い種族には魔力を吐き出す咆哮(ブレス)という魔法があるわ。
魔術と違ってわざわざ練習なんてしない、赤ちゃんだって使えるの。
同様に、魔族のほとんどには飛行能力があってそれも魔法の一種よ?」
「ということは…… なんなんですか?
さっぱりわからないんですけど……」
「自分が使える魔法がわかれば自由自在ってこと。
でもそこへたどり着いた人がどれくらいいたのかはわからないわね。
だからこそダイキは魔術を作りだしたんですもの」
「爺ちゃんが生きてた頃にも使えなかった人はいたはずでしょ?
でもその対処方法が記録に残っていないのはおかしくないですか?」
「うーん、私の知る限りでは魔術が使えない魔人なんていなかったわよ?
今の今まで知らなかったくらいだしね」
神を名乗っておきながら自分の産み出した世界のことをあまり知らないどころか、別の世界で贅沢三昧をしているとは…… 神としての自覚が無さすぎる。ドーンとは一体どういう性格をしているのだ。
「それが本当なら、ごく最近の世代で発生していると言うことですかね。
そしてそれが僕にも発生してしまったと?
でもさっき僕にも魔力はあるって言ってましたよね?」
「真琴ほどじゃないけどかなり強い魔力を持っているわね。
例えば山一つ吹き飛ばすくらいは出来てもおかしくないかな。
でも体内から放出できないのならそういう類ではないのでしょ。
肉体を強化したり変化させたりする魔術なら使えるかもしれないわよ?
雷人だけじゃなく、今落ちこぼれって言われてる人たち全員ね」
「もしそうならいいけどなぁ。
外部の魔力を使って具現化するって言うのも珍しいみたいですね」
「そりゃ珍しいに決まってるわよ。
例えるなら他人の心臓で自分の血流を賄うようなものだもの。
それで魔素から具現化はできないわけ?」
「そうですね、今のところ真琴の助け無しになにかが出来たことはありません。
でも体内で何かを作り出すとか体を変化させるとか練習して平気なのかな。
もし体内に振りザルが発生してしまったら大ごとですよ……」
「自分で作りだした者は自分で消せるはずだから平気でしょ?
失敗して死んでも生き返ってリセットするだけだし気にしないことね。
それと雷人は武術や体術は経験あるの?
魔術が使えないなら少しくらい練習しておいた方がいいわよ?」
「はあ、学校の授業で柔道やったくらいですかね。
殴られるのは慣れてるんですけど……
でも確かに何かしらできるようにしておいた方がいいかもしれないですね。
直線角は身体能力に優れてるって言われてもまだ実感がないしなぁ。
チャーシにでも訓練してもらうか」
「それがいいわね。
地下に宝物庫があったでしょ?
あそこにはダイキが集めた高級武具がいっぱいあるから見てみたらいいわ。
生活に困って売るならプレイヤーへ売りつけてぼったくってやんなさい」
「そんなことしませんよ……
というか、いつ地球から人が来るんですか?
何人くらいの予定なんですかね?」
「ええっと、明日からね。
今のところ受け入れ最大人数は十人で、おかげさまで満員なのよ。
まあどうせ最初はトラストの近くで動物でも狩ってレベル上げでもするでしょ。
世界の中心にダンジョンを作ったから、強くなったらそこを目指すでしょうね。
コ村からもまあまあ近いけど、村を襲うメリットなんてないしわざわざ来ないわよ」
「ちょっと!? 意外と物騒じゃないですか。
普通の人間族と区別はつくんですか?」
「そこはちゃんと考えてあるわよ。
頭の上にキャラクター名が出るようになってるわ。
普通の人には見えないけど、プレイヤー同士とあなた達には見えるから安心してね。
それと彼らは人間とは限らずエルフやドワーフもいるわよ?」
「どこに安心できる要素があるのかわかりませんが……
もしかして魔人や魔族を敵視しているんじゃないでしょうね?」
「うーん、それはどうかしら。
彼らの気持ちまではわからないわよ。
でも心配だと言うのはもっともな意見だわ。
対策としてダンジョンにプレイヤーが近づいたら警報を鳴らすわね。
地下の工房に監視設備を作っておいたから確認しておいて。
ちなみに全プレイヤーの能力も位置も把握できるようになってるわ」
「人の金使いこんだあげくすでに決定事項ですか!?
それで僕たちは何をすればいいんですか?」
「特に何も。
あまりに個人が強すぎるようならわからせてあげるくらいかしらね。
ボスモンスターを出してもいいし自分で倒しに行ってもいいわよ?
まあゲームバランスを考えてあまりイジメ過ぎないでくれると助かるわ」
「一応覚えておきますよ。
そう言えば地下の工房は一度も入ったこと無かったな。
爺ちゃんが作ってたものが残ってるかもしれないし一度見ておくか」
「もしかしたら魔術が使えない雷人に役立つ物があるかもしれないものね。
健闘を祈ってるわ」
こうしてなかば無理やりというか、同意無き事後承諾というか、とにかくプレイヤーの監視役などと言うおかしな役目を任されることになった。
「魔術が使えないですって!?
そんなはずないわよ、魔人には完全適正があるんだから何かしら使えるはずよ?
ちょっと努力が足りないんじゃないの?
それともセンスかしらねぇ。
ちなみに真琴はどうなの?」
「マコはいっぱい使えるー
こないだは山に穴開けて大騒ぎにしちゃったけど……」
「力の制御がうまくできないのかしら?
全力でって思ったら本当に全力になってしまうから注意しなさいよ?
蛇口をひねる時みたいに強弱を感じるといいわ。
真琴はダイキよりも魔力が強いみたいだから難しいかもしれないけどね。
でも雷人も十分高い魔力を持っているのよ? ホントになにも使えないの?」
「逆に魔力を吸い取っちゃうみたいなんですよね。
真琴、あれやってみてくれるか?」
僕の言葉に頷いた真琴はこちらに向かって魔力を放出し始めた。僕は手のひらを合わせて魔力を感じ取ると、いつも練習しているように振りザルを手の中に作り、それを床へと放り投げた。振りザルは当然のようにはじけて消えていく。
「確かになにかおかしいわね。
魔力を練るっていうのができないわけでしょ?
あれはダイキが考えた学問だから私もよくわからないのよねぇ。
魔神たちはなにも考えなくても魔力の放出が出来るし魔力量なんて概念もないから」
「なんかズルいですね…… まあ神様だしそんなもんなのかな。
それで解決方法はないんですか?」
「魔力は血液と同じように体中を巡っているって教えよね?
だから魔人や魔族、魔獣や一部の魔物も魔術を使える。
まあ訓練せずに本能で使えるものは魔法って言うんだけどね。
今も学校で教えてると思うけど、魔力を放出して具現化すれば魔術が使える。
でも魔人は完全適正と言うものがあって、本来は本能で魔法が使えるはずなのよ」
「じゃあなんで勉強したり訓練したりして覚えるんですか?
しかも僕だけじゃなくて、一割くらいの人は全く使えないみたいだし」
「それは魔人と言う種族に固定された魔法がないからよ。
例えばドラゴン族や近い種族には魔力を吐き出す咆哮(ブレス)という魔法があるわ。
魔術と違ってわざわざ練習なんてしない、赤ちゃんだって使えるの。
同様に、魔族のほとんどには飛行能力があってそれも魔法の一種よ?」
「ということは…… なんなんですか?
さっぱりわからないんですけど……」
「自分が使える魔法がわかれば自由自在ってこと。
でもそこへたどり着いた人がどれくらいいたのかはわからないわね。
だからこそダイキは魔術を作りだしたんですもの」
「爺ちゃんが生きてた頃にも使えなかった人はいたはずでしょ?
でもその対処方法が記録に残っていないのはおかしくないですか?」
「うーん、私の知る限りでは魔術が使えない魔人なんていなかったわよ?
今の今まで知らなかったくらいだしね」
神を名乗っておきながら自分の産み出した世界のことをあまり知らないどころか、別の世界で贅沢三昧をしているとは…… 神としての自覚が無さすぎる。ドーンとは一体どういう性格をしているのだ。
「それが本当なら、ごく最近の世代で発生していると言うことですかね。
そしてそれが僕にも発生してしまったと?
でもさっき僕にも魔力はあるって言ってましたよね?」
「真琴ほどじゃないけどかなり強い魔力を持っているわね。
例えば山一つ吹き飛ばすくらいは出来てもおかしくないかな。
でも体内から放出できないのならそういう類ではないのでしょ。
肉体を強化したり変化させたりする魔術なら使えるかもしれないわよ?
雷人だけじゃなく、今落ちこぼれって言われてる人たち全員ね」
「もしそうならいいけどなぁ。
外部の魔力を使って具現化するって言うのも珍しいみたいですね」
「そりゃ珍しいに決まってるわよ。
例えるなら他人の心臓で自分の血流を賄うようなものだもの。
それで魔素から具現化はできないわけ?」
「そうですね、今のところ真琴の助け無しになにかが出来たことはありません。
でも体内で何かを作り出すとか体を変化させるとか練習して平気なのかな。
もし体内に振りザルが発生してしまったら大ごとですよ……」
「自分で作りだした者は自分で消せるはずだから平気でしょ?
失敗して死んでも生き返ってリセットするだけだし気にしないことね。
それと雷人は武術や体術は経験あるの?
魔術が使えないなら少しくらい練習しておいた方がいいわよ?」
「はあ、学校の授業で柔道やったくらいですかね。
殴られるのは慣れてるんですけど……
でも確かに何かしらできるようにしておいた方がいいかもしれないですね。
直線角は身体能力に優れてるって言われてもまだ実感がないしなぁ。
チャーシにでも訓練してもらうか」
「それがいいわね。
地下に宝物庫があったでしょ?
あそこにはダイキが集めた高級武具がいっぱいあるから見てみたらいいわ。
生活に困って売るならプレイヤーへ売りつけてぼったくってやんなさい」
「そんなことしませんよ……
というか、いつ地球から人が来るんですか?
何人くらいの予定なんですかね?」
「ええっと、明日からね。
今のところ受け入れ最大人数は十人で、おかげさまで満員なのよ。
まあどうせ最初はトラストの近くで動物でも狩ってレベル上げでもするでしょ。
世界の中心にダンジョンを作ったから、強くなったらそこを目指すでしょうね。
コ村からもまあまあ近いけど、村を襲うメリットなんてないしわざわざ来ないわよ」
「ちょっと!? 意外と物騒じゃないですか。
普通の人間族と区別はつくんですか?」
「そこはちゃんと考えてあるわよ。
頭の上にキャラクター名が出るようになってるわ。
普通の人には見えないけど、プレイヤー同士とあなた達には見えるから安心してね。
それと彼らは人間とは限らずエルフやドワーフもいるわよ?」
「どこに安心できる要素があるのかわかりませんが……
もしかして魔人や魔族を敵視しているんじゃないでしょうね?」
「うーん、それはどうかしら。
彼らの気持ちまではわからないわよ。
でも心配だと言うのはもっともな意見だわ。
対策としてダンジョンにプレイヤーが近づいたら警報を鳴らすわね。
地下の工房に監視設備を作っておいたから確認しておいて。
ちなみに全プレイヤーの能力も位置も把握できるようになってるわ」
「人の金使いこんだあげくすでに決定事項ですか!?
それで僕たちは何をすればいいんですか?」
「特に何も。
あまりに個人が強すぎるようならわからせてあげるくらいかしらね。
ボスモンスターを出してもいいし自分で倒しに行ってもいいわよ?
まあゲームバランスを考えてあまりイジメ過ぎないでくれると助かるわ」
「一応覚えておきますよ。
そう言えば地下の工房は一度も入ったこと無かったな。
爺ちゃんが作ってたものが残ってるかもしれないし一度見ておくか」
「もしかしたら魔術が使えない雷人に役立つ物があるかもしれないものね。
健闘を祈ってるわ」
こうしてなかば無理やりというか、同意無き事後承諾というか、とにかくプレイヤーの監視役などと言うおかしな役目を任されることになった。
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