甘雨ふりをり

麻田

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第31話

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 桜が咲き誇る桐峰学園の校門から校舎までの道を初めて見た僕は感動したのを覚えている。風が吹くと一斉に花を散らせ、ピンク色の靄が美しく漂うのだ。その中に足を踏み込むと喧騒が消え、僕の周りは春の陽射しをたくさん浴びて輝く桜だけになる。緊張で固まる身体を大きく深呼吸して、歩を進める。ふんわりと花の甘い匂いが僕を包み、まるで桃源郷に迷い込んでしまったのかと恍惚に思ってしまうのだ。

「ななっおはよう!」

 後ろから肩を叩かれて誰かと振り返ると、そこには合格発表のときに出会った好青年がいた。陽介くんだ。

「おは、よ、よ、ようすけ、くん」

 ぎこちない笑顔で返すと陽介は、ぶはっと大きく吹き出して笑った。

「なな緊張しすぎ!それに、俺のことは陽介って呼んでって何度も言ってるじゃん」

 肩を組み直されて、前を向く。陽介とは、あの日連絡先を交換してから、三日に一度は電話がかかってきて少し話をしていた。陽介が昨日あったサッカー部の練習の話をはじめたその時、急に腕を引っ張られて驚く。振り返ると頭に桜の花びらを乗せた美しい青年が僕を驚いた目で見ている。え?と見返していると、青年は、震える吐息混じりにささやいた。

「見つけた…」

 風がざあ、と吹き、彼の頭についていた桜の花びらは流されてしまった。隣から、なにアンタ?と冷たい声が聞こえて見やると、陽介が光ない瞳で目の前の青年を睨みつけていた。しかし彼はその言葉が届いていないのか、僕の手のひらを熱い手のひらで握り込み、一歩近寄ってくる。

「君、名前は…?」

 それが秀一との出会いだった。



「ほら、なな…好きでしょ?」
「ぁあっ…んん、んぅ…」

 何日続いているのかもう日にちの感覚がない。それでも、窓からの明るさに毎日、当たり前のように確実に、朝は来て夜になり、また日は登っている現実を知らされる。日替わりなのか何が基準なのかはわからないが、彼らは交互に入れ替わり僕を抱いた。拒絶する頭と悦に浸る身体に心は混乱し、何度も拒絶するように気絶した。また目の前で秀一はアルファの強いフェロモンを醸し出し、大きなアルファで僕のオメガを掻き乱す。何日も休むことなく使われている孔は、ここにきてからほとんどをどちらかのアルファを受け入れて過ごしている。
 今は、秀一のそれが、浅い入り口をくぽくぽと楽しそうに出入りしている。

「きもちい?」

 秀一が頬を染め、汗をしたらせながら、甘く囁く。僕は頭を横に倒して力ない腕でつっぱねる。

「ゃら…ぬい、てぇ……ぁんっ」
「……。なな、水、飲もうな」

 ベットサイドにある小さなテーブルの上にあるペットボトルの水をつかみ、秀一は中の水を口に含むと、僕の唇を覆う。侵入してくる舌は、押し出そうと舌で触れると簡単にすくわれて快感を与えられてしまう。水が口端から溢れながらも体内に染み渡ってしまうのがわかる。すると、どくん、と身体の中で音がしてから、どんどん心音は早くなり呼吸は短くなる。そして、頭がガンガンと痛み、何も考えられなくなる。ぎゅう、と僕の子宮が縮み、広がり、アルファを求めた。
 それを見計らったように、秀一はまた入り口で腰を動かす。その緩慢な動きに、僕は腰を揺らめかす。

「ゃら、たりないっ、しゅぅ、もっと、もっ、と奥、してぇっ」
「そうすると、なな、すぐイッちゃうじゃん?」

 身体を屈めて、秀一は耳の縁を舌先でなぞり、吐息を吹きかけるように囁く。

「俺、ななともっとエッチしたいもん」
「あぁっ、あっ、ぁ…」

 ぞくぞくと強い電流が痛む頭の奥から背中を通り腰を重くした。それに気を良くした秀一は、耳をちゅぱちゅぱと吸ったり舐めたりの愛撫を激しくした。そのくせ腰は相変わらず入り口付近で止まっている。

「ひゃあっあっ、みみ、やらぁ…おく、してぇっ、あっ…しゅうの、ちんちんで、いじめてぇ…んんっ」

 肩をすくめて、耳への水音をやめない彼の胸元を軽く握った手で押しやるように当てる。彼は耳元でくす、と笑うがその空気の動きでさえ、身体は快感を拾ってしまう。
 身体の熱を発散させたいのに、秀一は意地悪に微笑みながら、ついにはペニスを引き抜いて会陰を濡れた先で撫でるようにこする。そこも充分弱いところで、身体が震える。

「やらぁっぬかない、でよぉ…んん…やら…しゅぅ…しゅうぅ…」

 瞠目して秀一を見ると、いやらしく舌なめずりをしていた。その濡れ光るいやらしい舌に吸い付く。ちゅ、ちゅと首を伸ばし角度を変えて吸い付くと唇が開かれ、舌を差し込む。中にいた舌に自分のを絡めて自分の口内は誘い込む。じゅるじゅると吸い付きながら、右手で彼の陰茎を柔く掴むと、その熱さと脈動だけで感じてしまう。自分の孔に当てがうと、突っぱねた爪先に力をいれて、腰を揺らめかす。ぬる、と簡単に入ってきたペニスに鼻息を荒くして興奮する。秀一が動いてくれないので、ベットのスプリングに助けてもらいながらも、めちゃくちゃに腰を振り乱す。

「あっあっ、あんっ、あっ、しゅう、たりないっ、たりないっ!うごっ、てぇ、ななのしきゅぅ、に、せぇし、してよぉっ」

 前後左右どっちに振ってるのかもわからないくらいめちゃくちゃな動きをする僕は、その圧だけでは欲は全く満たされず、むしろもっと悪化していくようだった。夢中で腰を振り、目の前で僕の行動をひとつも見逃さないように見つめているアルファに何度も唇に吸い付き、強く強請る。

「ん~、ななが、もっと、かわいく、おねだりできたら、いいよ?」

 目から涙があふれて、至近距離でその瞳に射られると欲にもっと熱が宿る。支配された脳みそは簡単に答えを出す。かくかくと止まらない腰を動かしながら、声を張る。

「ななの、おま、こ、に、しゅぅ、のち、ちん、たくさんちゅっちゅ、してぇ、しきゅ、に、びゅうびゅぅ、してっ…しゅぅの、オメガに、してぇっ」

 僕は自分が何を言っているのか理解できる理性はなかった。お願い…と目の前の唇に縋るように吸い付くと、大きく唇で塞がれて、熱い舌で口の中いっぱいを蹂躙される。その快感に悦んでいると、大きな肉棒が僕の体内に、勢いをつけてみっちり挿入された。いきなりのアルファの登場に子宮は歓喜に震えて痙攣する。それをお構いなしに秀一は乱暴な抽送をはじめる。僕の内股や尻たぶは溢れる愛液でべちょべちょで、彼の腿や下生えをしとどに濡らし、強い粘着質な水音が響く。力任せに奥に入り込み、乱暴に引き抜かれ、色んなポイントを逞しいカリで削られ、一番弱いところをノックされる。さっきからずっと身体は痙攣しているが、秀一は動きを止めない。

「なな、ななっ、ななっ!」
「あっああっ!あっ!あんっ!だっ、めえ!ずっと!イッてる!イッて、りゅぅっ!あっあっ、しゅう、しゅぅ、あんっ!」

 舌を噛みそうなほど激しいピストンにオメガの本能が満たされ、さらに大きく膨れ上がる。それと同じくらい、秀一のペニスも膨れ上がり、僕の身体をぎちぎちに埋める。

「しゅう、しゅぅ、しゅうっ、出して、出し、て、ナカに、いっぱいぃ」
「ななっ、愛してるよ、俺の、ななっ…!」

 瞳とぶつかり、唇を合わし、きつく舌を吸いながら、秀一は吐精した。僕はベットが鳴るほど、身体を大きく跳ねさせながら、透明な液体を、ぴゅっと少しだけ漏らした。それ以上はもう出なくなっていた。


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