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第2章 エルフの隠れ里〜

街への襲撃

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昨日の夕方、とうとうヘイス一家の支配に耐えきれなくなった街の人々が俺たちの呼びかけに応えてくれて、領主の館に詰めかけた。

彼らの中にはやはり魔法を使うのを目撃した人が複数いて、彼らは貴重な証言をしてくれたのだ。

さらにそれだけではなく、過去にどんな事をされたのかも、みな口々に証言してくれた。

おかげで街で魔法を使ったことだけでなく、それまでの彼らの罪を証明することが出来たのだ。

それを受けて領主であり、ヘイスさんの兄であるウォールさんはとても寂しそうに、彼らの『領主の継承権放棄』と『街からの追放』を街の人々の前で宣言したのだ。

そして門番によると、彼らは今朝早くに、誰にも見つからないようにこっそりと街から出ていったそうだ。


「……彼らはきちんと自分たちのしてきたことを反省して、これからの人生をしっかり生きていってくれるかなぁ……。」

俺はそばにいる仲間たちに向かって、誰にともなく呟いた。

街の中では1番森に近く、高台に建っている領主の館の2階の窓際に、俺たちは立っている。

その窓からは、右側に森、左側には街並みが見える。

「そうだな……ヘイス叔父さん達は街でやりたい放題やらかしてしまったからな。ある意味自業自得、なんだろうな……。」

「今頃、どこまで行ってるかな?まだこの街からそんな遠くには行ってないとは思うけど。」


俺がそんな事を言った時、街の周囲の雰囲気が急に禍々しいものへと変化しだした。

「……なんだ?何か……気持ちの悪い気配がすると思わないか?」

俺がリッキーにこそっと囁いたが、ピンと来なかったらしい。

だが傍にいたユーリとセバスは、俺と同じく感じ取ったようで、険しい顔をしていた。

「シエル様の言う通り、どこかから禍々しい気配がしますね。それも徐々に強くなっていっている。一体何がこの街に起こっているのか……。」


その時、屋敷の右側にある森の方から何かの吼え声が聞こえたような気がした。

その途端、セバスとユーリは臨戦態勢に入った。

「っ!?何があった!?」

異変は俺もすぐに気づいた。

窓から身を乗り出して森の方を見て、街中ではあまり使えない索敵魔法を全力で使う。

どうやら徐々にだが、強力な魔物が森の中に急に出現しだしている。
それも、本当に急に、だ。

誰かが召喚しているんじゃないのか?とさえ思える。


「この現れ方は……もしや神聖法国が絡んでいるのでは?先代神竜様の時にも、彼の国の前身の国では急に魔物を呼び出す魔道具を使って攻めてきていましたからな。まだ出現はそれほどでもないので、今なら街への被害を出さない為の対処は可能だと思います。」

そうセバスが俺に向かって言う。

「ユーリ、お前はこの街全体をカバーできるほどの結界を張ることができるか?」

「……やったことないけど、多分、できると思うよ!」

「じゃあ頼む!今ならまだ間に合うはずだ!セバスは結界を張るユーリのサポートに回ってくれ!」

「ですが……魔物の対処の方は大丈夫ですか?」

セバスにそう聞かれ、俺はリッキー達を見やる、

「大丈夫だ、なんとかできるさ!ついこの前、エルフの長老に魔法を教わって来たばかりだしな!街さえ結界で守ってもらえれば、大魔法をぶっ放しても大丈夫だろ?」

そう言ってリッキーが俺に向かって腕を伸ばし、親指を立てた。

「じゃあ頼むな、ユーリ!俺たちは、転移魔法で魔物の方に向かう!」

「分かったよ、ママ!僕、頑張る!」

ユーリはそう言うとまずは小さな竜形態に戻り、窓の外へと飛び出した。

それから町の中央の上空に向かうと、元の大きさの竜へと変化する。

……あれ?またデカくなってない???



それからユーリが一声吼えると、ユーリを中心に虹色の膜がサーッとかなりの速さで街全体を覆い尽くした。

ユーリはそのまま上空で待機していると、セバスは元の九尾の狐に戻り、一息にユーリの元へと跳んでその背へと乗る。

「ママ~!結界張ったから、向かっても大丈夫だよ!何か問題あったらこっちで対処するね!」

「了解!気をつけてな!」

俺はユーリの言葉を聞き、みんなと手を繋ぐ。

「じゃあ大元の場所へ向かうから、気を引き締めていこうね!」

「分かっている、みんなも気を抜かないようにしないと、こちらがやられてしまうからな!気をつけろよ?」

「何言ってるんだ、分かっている。お前こそ、気をつけろよ?」

「私達は魔法使いだから、広範囲魔法で戦うからスコット達も気をつけてね?」

「そうですよ、危ないと思ったら私達の所に避難してくださいね?そうすれば魔法には巻き込まれないで済みますから。」

「……そこは気を付けてほしいんだけど?」

「広範囲だから難しいのよ!」

「分かった、そのかわり使う時は先に声をかけろよ?」

「分かったわよ、使う前に声をかけるわ。」

みんなで向こうに行った後の動きを話し合っていたが、確かに仲間の魔法に巻き込まれる方が怖いね。

……多分、俺は大丈夫な気がするけどね?

「じゃあ、向かうから、みんな気をつけてね!」

みんなが俺の腕や体に離れないように掴まっているのを確認し、索敵魔法で調べた『魔物の出現場所』付近へと転移した。
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