92 / 128
第2章 エルフの隠れ里〜
えっ、どういうこと!?
しおりを挟む俺が山田とテレビ電話をしている時、ドアをノックする音がした。
どうやらリッキーさんがお風呂に行かないかと誘ってくれたようだ。
俺は山田にスノーホワイトのメンバーを紹介したかったから、まずはちょうど良いからリッキーさんを一番最初に会わせることにした。
「リッキーさん、ちょっと入ってきてこっちに来てもらえませんか?」
俺がドアの外にいるリッキーさんにそう答えた。
リッキーさんはお風呂道具を抱えながら中に入り、どうしたのかとこちらに近づいてきた。
「山田、お前さっき話していただろ?うちのメンバーに会いたいって。」
『ああ、そう言ってたな。もしかして、そのうちの誰かが今来たのか?』
「そうなんだよ!……リッキーさん、ここに映っているこいつが、元の世界にいる俺の親友の山田です!」
俺がリッキーさんに山田が映っているスマホを見せると、リッキーさんは最初は何のことだ?みたいな顔をしていたが、徐々に目を見開いていき、そして叫んだ。
「それを貸せっ!」
すぐにリッキーさんは持っていたものを放りだしてスマホを俺からひったくると、何も言わずに通話を切った。
……えっ、どういう事!?
俺はびっくりしてリッキーさんを見上げた。
リッキーさんは痛みでなのか顔を歪め、右手でスマホを持ちながらもう片手は頭を押さえている。
痛みのせいなのか、体中から急に汗が吹き出して着ている服の色が変わっていた。
「だ…大丈夫ですか!?ものすごい汗ですよ!?」
俺がリッキーさんを支えようと駆け寄ると、突然リッキーさんに抱きしめられた。
「うっ!くっっ!!頭が割れるように痛いっ…!!」
リッキーさんは痛みを堪えるかのように俺を強く抱きしめた。
その体はすごく熱かった。
急にこんなことになってしまったが、一体どうしたんだろう!?
すると、いきなりリッキーさんの体から目が眩むほどの光が迸った。
俺はあまりの眩しさに目を瞑りはしたが、力が抜けていくリッキーさんを支えるためにさらに腕に力を込めた。
しばらくするとその光はリッキーさんに吸い込まれるように消え、何事もなかったかのように部屋は静まりかえった。
一体何があったのかとリッキーさんの顔を見ると、彼は俺を見つめながら大粒の涙を流して泣いていた。
「えっ!?どっ、どうしたんですかっ!?どこか痛いんですか!?」
俺は慌ててリッキーさんの身体をあちこち見ながら聞く。
身体の熱はもう下がっているようだ。
だがリッキーさんは緩く首を振って答えた。
「いや、今はもうどこも痛くないよ。熱も、もう下がったようだ。ずっと支えてくれてありがとう、紫惠琉。」
「もう何ともないなら良いんですけど……。」
俺がそう言うと、リッキーさんは自分が右手に握っていたスマホを見ながら苦笑いをする。
「そうか、あの時の奴が『リッキー』だったんだな。あの時はめちゃくちゃ失礼なやつだ!と思ったものだが……フッ、『自称神様』の言った『いつか』は今日だったんだな。それにしても『目印』って、もしかして俺の能力の事だったんじゃないだろうな?まあその能力のおかけで、俺は目覚めたんだが。」
俺にはリッキーさんが一体何を言っているのか理解できない。
えっ、「あの時の奴が『リッキー』だったんだな」って、どういう事!?
自分の名前が『リッキー』じゃん!?
俺もリッキーさんの言葉でだいぶ混乱しているようだ。
「やっと……やっとこっちの世界に来れたぞ、紫惠琉。やっとお前とこうやって会えたんだ。……長かったなぁ。」
「……」
「まぁ、お前にはわからないだろうが、俺はリッキーであり……山田でもある。」
へっ!?どうしたの、リッキーさん!?
俺が目を見開いて驚いていると、リッキーさんは苦笑いをしながら俺に話しかけてきた。
「さっきの出来事だが、スマホに映っていた山田の姿を見て、俺の能力が勝手に発動したんだ。それによってあの後の山田の人生が脳裏にものすごい速さでフラッシュバックされて、そのせいで頭が割れるように痛くなったが……おかげでここに至るまでのこと全てを思い出せたよ。」
えっ……ホントに山田なの?
リッキーさん、山田になっちゃったの?
じゃあ、今の山田はどうなったの!?
死んじゃったの!?
俺は思わずリッキーさんにしがみつき、そう叫んだ。
するとリッキーさんは俺の頭を撫でながら語ってくれた。
どうやら今現在の山田は普通に日本で先程のリッキーさんの対応に怒っているだろうとのことだ。
そしてこの後、スマホに送られてきた俺からの買い物リストを見て、その数に驚きつつもちゃんと買って鞄に入れてくれるそうだ。
その後の人生としては、山田は俺の家族と神様から貰った鞄を通して交流が生まれ、数年後に姉さんと結婚して子供2人に恵まれるらしい。
そして……人生の最後の日、山田が言う『自称神様』という存在が山田の魂を迎えに来たらしい。
そして山田はこちらの世界に来て、リッキーとして生を受けたそうだ。
だがしかし、それを覚えていたのも名付けされるまで。
名付けされてからさっきまで、すっかり忘れていたそうだ。
「そう考えると、お前との最初の出会いもやっぱり『自称神様』が仕組んだことなんじゃないか?と思えてくるよな。」
「そうだな、俺が初めてこっちの世界に来た時、みんなが戦っているところに『偶然』出くわしたんだもんな。」
俺が感慨深くうんうんと頷いていると、山田……リッキー?
とりあえずこっちの世界ではリッキーと呼ぼうか。
リッキーがニヤリとしながら俺を見た。
「そういえばお前、こっちに来たの、俺だけだと思ってないか?」
俺はそのセリフに驚く。
えっ、山田の他にもいるの!?
「いるぞ、俺が知っているのはあと3人だがな。」
「えっ、それ誰!?」
「お前の身近な奴だよ。」
一体誰よ!?
俺はそう思ったが……ふとその内の2人にはなんとなく心当たりがあった。
「……もしかして、兄さんと姉さん?」
すると再びニヤリとした、リッキー。
「正解。義兄さんは俺より何年か早く亡くなり、友梨佳は俺より後に亡くなったはずだ。どちらも何となく誰だか分かるだろう?」
「もしかして……兄さんが『スコット』さんで、姉さんが『リリー』さん?」
「これまた正解!ついでにバラすと、残りのエミリーは惠美さんだがな。」
なんですと~っ!?
兄弟の世代がみんな来たの!?
えっ、どういうこと!?
493
お気に入りに追加
1,363
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
異世界転移の……説明なし!
サイカ
ファンタジー
神木冬華(かみきとうか)28才OL。動物大好き、ネコ大好き。
仕事帰りいつもの道を歩いているといつの間にか周りが真っ暗闇。
しばらくすると突然視界が開け辺りを見渡すとそこはお城の屋根の上!? 無慈悲にも頭からまっ逆さまに落ちていく。
落ちていく途中で王子っぽいイケメンと目が合ったけれど落ちていく。そして…………
聞いたことのない国の名前に見たこともない草花。そして魔獣化してしまう動物達。
ここは異世界かな? 異世界だと思うけれど……どうやってここにきたのかわからない。
召喚されたわけでもないみたいだし、神様にも会っていない。元の世界で私がどうなっているのかもわからない。
私も異世界モノは好きでいろいろ読んできたから多少の知識はあると思い目立たないように慎重に行動していたつもりなのに……王族やら騎士団長やら関わらない方がよさそうな人達とばかりそうとは知らずに知り合ってしまう。
ピンチになったら大剣の勇者が現れ…………ない!
教会に行って祈ると神様と話せたり…………しない!
森で一緒になった相棒の三毛猫さんと共に、何の説明もなく異世界での生活を始めることになったお話。
※小説家になろうでも投稿しています。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる