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魔王様のレベル上げ
吸血大公バルトⅠ
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『魔王様、ご機嫌うるわし……!?』
スレイが俺の姿を見た瞬間、硬直した。
と思ったら。
『わ、私の魔王様の麗しいお姿が……なんてことに!! 黒く艶やかな御髪が、黒曜石の御目が、象牙の如きつややかな御肌が~~~~~~!!!』
黙ってさえいれば怜悧な美貌を崩壊させ。顔中から色んな汁を溢れさせながら、よよよと泣き崩れた。
お前のモンじゃねえっつーの。
「白魔法の、気配遮断と姿変えの魔法を使ってみただけだ」
俺は今、赤茶の髪、薄い緑色の目、白人のような肌色になってる。頬にそばかすが散ってるのはご愛嬌だ。
気配も、今はヒトと変わらない筈だ。
†††
人間界に降りるとき、目立たないようにする準備をしてる。
片方だけなら公爵家クラスにはちらほらいるそうだが。黒髪黒目、両方が揃ってるというのは、現役魔王のみ、らしい。オンリーワンの存在だ。
人間界では、黒というのは魔族に呪われた色で。罪人には黒装束を着せるとか、悪魔教が着る色とかで忌み嫌われてるんだそうだ。
だから、村人にも即バレしたんだな。
そういう知識は先に与えて欲しかったが。そういや、質問はないかと聞かれてた。
異世界に行くのに、常識の違いとかを確かめる考えが足らなかった俺にも問題があったかも。
……アレの性格に問題があるのには間違いないが。
あんまり記憶には無かったが。ドラクの精気で、レベル400になっていた。
覚えて無くても、経験値はちゃんと入っていた。
なんか内訳に、”前のオトコを想いながら別のオトコにカラダを弄ばれ感じてしまい揺れる魔王ゴコロ”の経験、とかあったが、見なかったことにする。
こんなイヤな表示が出るのは、ヤツの嫌がらせに違いない。そう、暗黒……いや考えねえぞ。アレのことは。
あの野郎、マジでろくなマネしやがらねえ。
気配遮断の魔法は解除して、と。
『いえ、それはそれで愛らしいですけど。……魔族に捕まった人間プレイなどはいかがでしょう?』
スレイはもじもじと頬を染めながら言った。
うっせえ! 早く次の奴、呼んで来やがれ!
†††
『失礼し、…………?』
入るなり、男は戸惑っていた。
黒い髪、白い肌に金色の目の。英国紳士風でイケてるオジサマ、といった風貌だ。
俺も、ああいう風に年を取れたらよかったな……。
何が悲しくて、30手前になっても少年とか女に間違えられるような容姿に生まれてきちまったんだろう。
弟の方がお兄ちゃんにみられることが日常茶飯事という、情けない人生であった。
おかげさまで、死んでも成仏できませんでしたとさ!
男は、小さな子を見るように相好を崩した。
『魔王様のお小姓かな? この部屋に来るようにと伺ったのだが……魔王様はどちらにおられるか、わかるかね?』
だから俺、何歳に見えてるんだよ……。魔族の29歳は赤ん坊同然だっつーけどよ。
頭を撫でられる。
『私の地方に伝わるお菓子をあげよう』
わーい、飴ちゃんだー。優しいおじちゃんありがとー。
って。お菓子をくれるおじさんにホイホイついてっちゃだめだぞ!
『部屋を間違えたのだろうか……』
俺の頭を撫でながら、不安そうに部屋を見回している。
あ、いけね。
色変えの魔法、解除するの忘れてた。
†††
『! ……これは、大変なご無礼を……!!』
色変えの魔法を解除した途端。
男は即座に跪いた。
『私、西の公爵家より参りました、バルトと申します……!』
「うむ。飴、ありがとう。美味いぞ」
『……こ、光栄でございます……』
西の吸血大公、バルト。レベル6666。
吸血鬼か? スキルは蝙蝠化、狼化、魅了、精気のドレイン……とくれば、吸血鬼に間違いないか。わーい、リアルドラキュラ伯爵だー。
伯爵じゃなくて公爵だけど。もっと偉い。四大公の中では最年長の、三千歳を越える大魔族だ。
しかし、バルトはめちゃくちゃ恐縮している。
小さい坊やに見えたとしても、俺は魔王だからな。
スレイが俺の姿を見た瞬間、硬直した。
と思ったら。
『わ、私の魔王様の麗しいお姿が……なんてことに!! 黒く艶やかな御髪が、黒曜石の御目が、象牙の如きつややかな御肌が~~~~~~!!!』
黙ってさえいれば怜悧な美貌を崩壊させ。顔中から色んな汁を溢れさせながら、よよよと泣き崩れた。
お前のモンじゃねえっつーの。
「白魔法の、気配遮断と姿変えの魔法を使ってみただけだ」
俺は今、赤茶の髪、薄い緑色の目、白人のような肌色になってる。頬にそばかすが散ってるのはご愛嬌だ。
気配も、今はヒトと変わらない筈だ。
†††
人間界に降りるとき、目立たないようにする準備をしてる。
片方だけなら公爵家クラスにはちらほらいるそうだが。黒髪黒目、両方が揃ってるというのは、現役魔王のみ、らしい。オンリーワンの存在だ。
人間界では、黒というのは魔族に呪われた色で。罪人には黒装束を着せるとか、悪魔教が着る色とかで忌み嫌われてるんだそうだ。
だから、村人にも即バレしたんだな。
そういう知識は先に与えて欲しかったが。そういや、質問はないかと聞かれてた。
異世界に行くのに、常識の違いとかを確かめる考えが足らなかった俺にも問題があったかも。
……アレの性格に問題があるのには間違いないが。
あんまり記憶には無かったが。ドラクの精気で、レベル400になっていた。
覚えて無くても、経験値はちゃんと入っていた。
なんか内訳に、”前のオトコを想いながら別のオトコにカラダを弄ばれ感じてしまい揺れる魔王ゴコロ”の経験、とかあったが、見なかったことにする。
こんなイヤな表示が出るのは、ヤツの嫌がらせに違いない。そう、暗黒……いや考えねえぞ。アレのことは。
あの野郎、マジでろくなマネしやがらねえ。
気配遮断の魔法は解除して、と。
『いえ、それはそれで愛らしいですけど。……魔族に捕まった人間プレイなどはいかがでしょう?』
スレイはもじもじと頬を染めながら言った。
うっせえ! 早く次の奴、呼んで来やがれ!
†††
『失礼し、…………?』
入るなり、男は戸惑っていた。
黒い髪、白い肌に金色の目の。英国紳士風でイケてるオジサマ、といった風貌だ。
俺も、ああいう風に年を取れたらよかったな……。
何が悲しくて、30手前になっても少年とか女に間違えられるような容姿に生まれてきちまったんだろう。
弟の方がお兄ちゃんにみられることが日常茶飯事という、情けない人生であった。
おかげさまで、死んでも成仏できませんでしたとさ!
男は、小さな子を見るように相好を崩した。
『魔王様のお小姓かな? この部屋に来るようにと伺ったのだが……魔王様はどちらにおられるか、わかるかね?』
だから俺、何歳に見えてるんだよ……。魔族の29歳は赤ん坊同然だっつーけどよ。
頭を撫でられる。
『私の地方に伝わるお菓子をあげよう』
わーい、飴ちゃんだー。優しいおじちゃんありがとー。
って。お菓子をくれるおじさんにホイホイついてっちゃだめだぞ!
『部屋を間違えたのだろうか……』
俺の頭を撫でながら、不安そうに部屋を見回している。
あ、いけね。
色変えの魔法、解除するの忘れてた。
†††
『! ……これは、大変なご無礼を……!!』
色変えの魔法を解除した途端。
男は即座に跪いた。
『私、西の公爵家より参りました、バルトと申します……!』
「うむ。飴、ありがとう。美味いぞ」
『……こ、光栄でございます……』
西の吸血大公、バルト。レベル6666。
吸血鬼か? スキルは蝙蝠化、狼化、魅了、精気のドレイン……とくれば、吸血鬼に間違いないか。わーい、リアルドラキュラ伯爵だー。
伯爵じゃなくて公爵だけど。もっと偉い。四大公の中では最年長の、三千歳を越える大魔族だ。
しかし、バルトはめちゃくちゃ恐縮している。
小さい坊やに見えたとしても、俺は魔王だからな。
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