上 下
25 / 64
魔王様のレベル上げ

吸血大公バルトⅠ

しおりを挟む
『魔王様、ご機嫌うるわし……!?』

スレイが俺の姿を見た瞬間、硬直した。
と思ったら。

『わ、私の魔王様の麗しいお姿が……なんてことに!! 黒く艶やかな御髪が、黒曜石の御目が、象牙の如きつややかな御肌が~~~~~~!!!』


黙ってさえいれば怜悧な美貌を崩壊させ。顔中から色んな汁を溢れさせながら、よよよと泣き崩れた。
お前のモンじゃねえっつーの。


「白魔法の、気配遮断と姿変えの魔法を使ってみただけだ」

俺は今、赤茶の髪、薄い緑色の目、白人のような肌色になってる。頬にそばかすが散ってるのはご愛嬌だ。
気配も、今はヒトと変わらない筈だ。


†††


人間界に降りるとき、目立たないようにする準備をしてる。

片方だけなら公爵家クラスにはちらほらいるそうだが。黒髪黒目、両方が揃ってるというのは、現役魔王のみ、らしい。オンリーワンの存在だ。
人間界では、黒というのは魔族に呪われた色で。罪人には黒装束を着せるとか、悪魔教が着る色とかで忌み嫌われてるんだそうだ。

だから、村人にも即バレしたんだな。

そういう知識は先に与えて欲しかったが。そういや、質問はないかと聞かれてた。
異世界に行くのに、常識の違いとかを確かめる考えが足らなかった俺にも問題があったかも。
……の性格に問題があるのには間違いないが。


あんまり記憶には無かったが。ドラクの精気で、レベル400になっていた。

覚えて無くても、経験値はちゃんと入っていた。
なんか内訳に、”前のオトコを想いながら別のオトコにカラダを弄ばれ感じてしまい揺れる魔王ゴコロ”の経験、とかあったが、見なかったことにする。

こんなイヤな表示が出るのは、ヤツの嫌がらせに違いない。そう、暗黒……いや考えねえぞ。アレのことは。
あの野郎、マジでろくなマネしやがらねえ。


気配遮断の魔法は解除して、と。

『いえ、それはそれで愛らしいですけど。……魔族に捕まった人間プレイなどはいかがでしょう?』
スレイはもじもじと頬を染めながら言った。


うっせえ! 早く次の奴、呼んで来やがれ!


†††


『失礼し、…………?』
入るなり、男は戸惑っていた。

黒い髪、白い肌に金色の目の。英国紳士風でイケてるオジサマ、といった風貌だ。


俺も、ああいう風に年を取れたらよかったな……。
何が悲しくて、30手前になっても少年とか女に間違えられるような容姿に生まれてきちまったんだろう。
弟の方がお兄ちゃんにみられることが日常茶飯事という、情けない人生であった。

おかげさまで、死んでも成仏できませんでしたとさ!


男は、小さな子を見るように相好を崩した。
『魔王様のお小姓かな? この部屋に来るようにと伺ったのだが……魔王様はどちらにおられるか、わかるかね?』

だから俺、何歳に見えてるんだよ……。魔族の29歳は赤ん坊同然だっつーけどよ。

頭を撫でられる。
『私の地方に伝わるお菓子をあげよう』


わーい、飴ちゃんだー。優しいおじちゃんありがとー。
って。お菓子をくれるおじさんにホイホイついてっちゃだめだぞ!

『部屋を間違えたのだろうか……』
俺の頭を撫でながら、不安そうに部屋を見回している。


あ、いけね。
色変えの魔法、解除するの忘れてた。


†††


『! ……これは、大変なご無礼を……!!』

色変えの魔法を解除した途端。
男は即座に跪いた。

『私、西の公爵家より参りました、バルトと申します……!』


「うむ。飴、ありがとう。美味いぞ」
『……こ、光栄でございます……』

西の吸血大公、バルト。レベル6666。

吸血鬼か? スキルは蝙蝠化、狼化、魅了、精気のドレイン……とくれば、吸血鬼に間違いないか。わーい、リアルドラキュラ伯爵だー。

伯爵じゃなくて公爵だけど。もっと偉い。四大公の中では最年長の、三千歳を越える大魔族だ。
しかし、バルトはめちゃくちゃ恐縮している。


小さい坊やに見えたとしても、俺は魔王だからな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

処理中です...