神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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異世界で、家族を想う

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「陛下、お帰りなさいませ」
 城扉の前ではオズワルドとオーソンが出迎えて。

 ナムグンは、オズワルドが厩に連れて行った。
 ここから厩に戻る距離程度なら、オズワルドかオーソン限定だけど、手綱を引くくらいは許してくれるようになったそうだ。ナムグンも丸くなったもんだ。いや、ナムグンが暴れてる姿を見たことないけど。


 抱いていたシロを下ろすと、成犬の姿になって庭へ駆けてった。
 これからここが自分の住む場所だから、安全とかナワバリを確かめに行ったんだろう。

「あ、どこかにシロ用の水飲み場、作っていいかな?」

 ”聖水”を求めてくる人たちのために、家の外に水飲み場を作っておいたんだけど。
 シロが気に入って、仕事や狩りを終えて家に戻る時もにそこで水を飲むのが習慣みたいになってたから。同じような水飲み場を作ってやりたい。

「あの花壇の近くなどいかがでしょう?」
 オーソンが示した。

 あの辺なら、花に水をあげるのにも丁度良さそうだ。


 *****


「ここにも、人が集まるようになるだろうな……」
 ウィリアムが、嬉しそうに走り回るシロを見て呟いた。

「……水飲み場、お城の外にも作ろうか?」


 俺が作った水飲み場は、”神の使い、狛犬様が好んで飲まれているありがたい聖水”だと国外でも噂になったらしく。リズリーには隣国からもかなりの人が水を汲みに通ってくるようになっていた。
 給水制限や、販売をすればいいという人もいたけど。
 なるべく、この能力で作ったもので商売はしたくないんだよな。

 ”創造”の能力で生やしたサトウキビやテングサとかは、そのまま流通させるんじゃなくて、加工して他の人の手も入るからセーフ、って考えだ。

 神様からは、好きなように使っていいとは言われてるけど。俺の倫理観からすれば、この能力を直接お金儲けのために使うのは、ずるい気がするから。


「リン様のお荷物は、これだけですか?」
 オーソンが、俺の肩かけ鞄を持ってくれた。中には財布と水筒、ハンカチくらいしか入ってない。

「荷物はリズリーのスキート商会出張所に預けたから、後で届くと思う」
「了解しました」

 荷物の大半は、ウィリアムから贈られた洋服だ。新しく設えるから、ここに来る時は身一つで来てくれればいいよ、とか言われたけど。まだ袖を通してない服もあるっていうのに、これ以上服を作られても困る。
 冷蔵庫の中身で卵や牛乳などの日持ちしないものは、ちょうどパーティーで使い切ったので大丈夫だろう。後は乾物くらいか?
 一応スペンサー夫妻には、あの家にあるものは普通に使っちゃっていいよって言っておいた。


「ようこそ、我が家へ」
 ウィリアムが、胸に手を当てて優雅に腰を折ってみせた。

 我が家と、いうには広すぎるけど。
 ここがこれからウィリアムと一緒に住むところ、か。

「今日からここは、君の家だよ」
「じゃあ、ええと……ただいま?」

「ふふ、おかえり。私の可愛いリン」
 ふわあ。甘い……! 何その蕩けそうに甘い微笑み。ドキドキしちゃうだろ!


「……コホン、」
 オーソンがわざとらしく咳払いした。

 玄関先で二人の世界を作るなって? それはウィリアムに言ってよ!


 *****


 ウィリアムは、新しく改修した場所を説明してくれた。

 お風呂の浴槽は、寝たまま浸かれるところや、少し深い場所も作ったとか。プールじゃないんだから。打たせ湯もあるんだ? ……ジェットバスは?
 時間制で、お城の人たちにも開放してるという。二人だけで使うのはもったいないもんな。

 風呂場の内装は、職人がかなり気合いを入れて仕事したとあって、凄い装飾になってた。

 お風呂の床は、転んでも痛くないように溝が刻んであるゴム製だ。
 壁は白、お風呂の中は薄い青に塗られてるせいで、余計にプール感が……。

 こんな広くちゃ掃除が大変そうだな、と一瞬思ったけど。そういえば、”浄化”があった。
 魔法って、つくづく便利だ。

 全部魔法でやってしまったら、人間の仕事が減ってしまいそうな気もするけど。光魔法の属性は国民全員が持ってる訳じゃないから、総合的なバランスは取れてるのかな?


 新しく中庭に出来た噴水も見た。展望塔跡だっけ?

 ここで、前国王と第一王子が亡くなったのか。
 慰霊碑があって。二人の魂を慰めるための場所だと書いてあった。

 あらかじめ予言で聞いてても、魔物に襲われて身内を亡くしたのはショックだっただろうな。

 王妃……お母さんはウィリアムが5歳くらいの時に亡くなってるという。
 他に、遠い親戚はいるそうだけど。

 ウィリアムにはもう、家族はいないんだ。この世界にも。


 *****


「これからは、俺がウィルの家族になるからな」
 そう言って。ウィリアムの手を握った。

「……ありがとう」
 ふ、と微笑むウィリアムに、ないはずの母性本能を刺激される。
 大切にするからな……!

 それに、神様にお願いすれば、家族が増えていくだろうし。……何人までOKなんだろう? さすがにサッカーチーム作れるほどは望まないけど。


「ウォン、」
 大きくなったシロが、俺たちの間にずぼっと顔を突っ込んできた。自分もいるぞ、って?

「ああ、シロも、立派な私の家族だね?」
 ウィリアムはシロの額を撫でた。

「クゥン」
 ぶんぶんしっぽを振ってる。シロ、ウィリアムにめちゃくちゃ懐いてるよな。やっぱり飼い主に似て面食いなのか……?


 お義父さん、お義兄さん。
 俺が家族になって、ウィリアムを幸せにします。寂しい思いはさせないから。どうか、天国から見守ってくださいね。

 慰霊碑に向かって、手を合わせた。
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