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海を創る
海を創ろう
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愛する人に抱き締められて、抱き締める嬉しさも。人肌の心地好さも。
貫かれて、抱かれる快楽も。
何もかも、アーディルが俺に教えたんだから。
責任、取ってもらわないと。
「本気を出すのは、国に戻ってからだ」
とか言いながら。
結局、朝方まで精力的に抱かれてしまった。
全くもう。
神様だと自覚していても、へとへとだよ……。
これで本気じゃないとか。
本気を出したらどうなるんだろう……。
ワーヒド国に戻るのがこわいような。ちょっと期待して、ドキドキしてしまうような。
俺、マゾっ気はないと思うんだけどなあ。
アーディル限定かも?
†††
朝食の時間だ。
メインは、泉で獲った魚と。生やしたばかりの野菜、果物だ。
セーレムが朝から頑張って用意してくれたようだ。
「うまい! おれ、こんなうまい魚を食うの、はじめてだ!」
大喜びで焼き魚を食べているのは。
声からして、カマル……だよね? あの長い赤毛に、緑色の目は。
昨日、お風呂に入ったから。
顔に塗りたくっていたペイントがすっかり落ちて、素顔が見えてるんだろう。
何と。
カマルの素顔は、けっこうな美青年だったのだった。
今はあのエジプトのファラオっぽい首飾りはしてないから、半裸に腰蓑姿で、ワイルド過ぎるけど。
まあ、改めてよく見れば、イルハム王の顔も、悪くは無いんだよな……。
ヤシム王よりは上で、サイード王と同格くらいかな? 程度には。
そうは思っても、素直に褒める気にならないというか……。
それも仕方ないよね! 俺のアーディルに傷をつけたこと、忘れないから!
我ながら、執念深いと思う。
イルハム王は心から反省しているし。
そうしてもやむを得ないだろう、事情も訊いた。
アーディルとツチノコは、結局傷ついたのは自分で、もう治してもらったからって言って。
イルハム王のしたことを許しちゃったけど。
でも。
俺がこの能力を持っていなかったら。アーディルは、死んでたんだ。
無実だったツチノコだって、危なかったし。
それだけでなく。
ツチノコのもつ猛毒の血によって、ここら辺の土地が長期間汚染される可能性もあったんだ。
容易に他人を殺せるような、強い魔法を持っていながら。
現在は禁術とされてるような危険な魔法を。
こちらの事情を確かめもせずに。感情的になって、他人に向けて使ったことを。
そうやって、簡単に許しちゃいけないと思うんだ。
それは、神様からこの世界を任されて、余りある力を頂いた俺も。
ちゃんと、心に刻んでおくべきことだ。
死んでしまったら。神様にだって蘇らせることはできないんだから。
†††
改めて、身体の露出した部分に虫除けの草の汁を塗って。
スィッタ国の王宮まで戻った。
亀裂から生還した国民たちは、王様の帰りを待ちわびていた。
蔦に絡まれていた王宮は、すっかり綺麗になって、辺りにはびこっていた雑草もなくなってる。
昨日と今朝にかけて、国民が周囲を掃除をしていたようだ。
カマルと乳母の二人だけじゃ、生い茂るジャングルを整地するのも大変だっただろう。
王宮の中を荒れないように掃除するだけで精一杯だったみたいだ。
イルハム王が、成長していた息子、カマルを紹介して。
異次元に吸い込まれている間に、14年もの年月が経っていたことを伝えると、みんな驚いていた。
そして。
やはりあの亀裂によって、世界が渇いてしまい、この国以外の全ての国が砂漠に覆われてしまっていたこと。
水の天使が降臨し、世界に水と緑を与え。これから海を復活させることを説明した。
それによる、世界の気候などの影響も。
海を復活させることに対して、反対する人はいなかったけど。
ここは真ん中くらいで、最北端や最南端でない限りは気候的な影響はあまりないと思う、と言ったら、見るからにほっとしていた。
やっぱり、住み慣れた環境を崩したくはないよな。
サイード王、イスナーン国を気に入ってくれたらいいけど。
新たに土地を開拓するのは、いくら魔法があっても大変だろうし。
「私はこれより、マラーク様とワーヒド国のスルタンと共に、ハカムを裁きに征く。帰りはいつになるかわからぬが。その間のこと、皆に頼むぞ」
イルハム王は、しばらく国を留守にすることを告げた。
妃の仇を討てると聞き、国民たちは喜んで請け負った。
その間に、荒れてしまった森を整地すると言ってる。
ちょうど、良い感じの道が出来ているので、整地は楽そうだって。
それ、ツチノコが作ったんだよな。
「おれも行きたい。いいか?」
カマルが手を上げた。
ずっとこの国から出たことがなかったし。色々な国を見てみたい、という。
「俺はいいけど……」
保護者であるイルハム王とアーディルを見たら。二人も構わない、と言った。
「んー。イルハム王とカマルの二人はトビトカゲで移動してもらうとして。……アシャラ国の国民たちもいるし。ここからワーヒド国のある大陸に行くのって大変かなあ」
「かなり強行軍になりそうですね。来た道を戻った方が早いかもしれません」
ラシッドは空から見て、だいたいの地形を把握していた。
あの道のりを戻るのか……。
近くを通るなら、また他国にも顔を出さないとまずいよな。
あ、そうだ。
いいこと思いついた。
「じゃ、ちょっと予定より早く海を作っちゃって。船で行こうか?」
貫かれて、抱かれる快楽も。
何もかも、アーディルが俺に教えたんだから。
責任、取ってもらわないと。
「本気を出すのは、国に戻ってからだ」
とか言いながら。
結局、朝方まで精力的に抱かれてしまった。
全くもう。
神様だと自覚していても、へとへとだよ……。
これで本気じゃないとか。
本気を出したらどうなるんだろう……。
ワーヒド国に戻るのがこわいような。ちょっと期待して、ドキドキしてしまうような。
俺、マゾっ気はないと思うんだけどなあ。
アーディル限定かも?
†††
朝食の時間だ。
メインは、泉で獲った魚と。生やしたばかりの野菜、果物だ。
セーレムが朝から頑張って用意してくれたようだ。
「うまい! おれ、こんなうまい魚を食うの、はじめてだ!」
大喜びで焼き魚を食べているのは。
声からして、カマル……だよね? あの長い赤毛に、緑色の目は。
昨日、お風呂に入ったから。
顔に塗りたくっていたペイントがすっかり落ちて、素顔が見えてるんだろう。
何と。
カマルの素顔は、けっこうな美青年だったのだった。
今はあのエジプトのファラオっぽい首飾りはしてないから、半裸に腰蓑姿で、ワイルド過ぎるけど。
まあ、改めてよく見れば、イルハム王の顔も、悪くは無いんだよな……。
ヤシム王よりは上で、サイード王と同格くらいかな? 程度には。
そうは思っても、素直に褒める気にならないというか……。
それも仕方ないよね! 俺のアーディルに傷をつけたこと、忘れないから!
我ながら、執念深いと思う。
イルハム王は心から反省しているし。
そうしてもやむを得ないだろう、事情も訊いた。
アーディルとツチノコは、結局傷ついたのは自分で、もう治してもらったからって言って。
イルハム王のしたことを許しちゃったけど。
でも。
俺がこの能力を持っていなかったら。アーディルは、死んでたんだ。
無実だったツチノコだって、危なかったし。
それだけでなく。
ツチノコのもつ猛毒の血によって、ここら辺の土地が長期間汚染される可能性もあったんだ。
容易に他人を殺せるような、強い魔法を持っていながら。
現在は禁術とされてるような危険な魔法を。
こちらの事情を確かめもせずに。感情的になって、他人に向けて使ったことを。
そうやって、簡単に許しちゃいけないと思うんだ。
それは、神様からこの世界を任されて、余りある力を頂いた俺も。
ちゃんと、心に刻んでおくべきことだ。
死んでしまったら。神様にだって蘇らせることはできないんだから。
†††
改めて、身体の露出した部分に虫除けの草の汁を塗って。
スィッタ国の王宮まで戻った。
亀裂から生還した国民たちは、王様の帰りを待ちわびていた。
蔦に絡まれていた王宮は、すっかり綺麗になって、辺りにはびこっていた雑草もなくなってる。
昨日と今朝にかけて、国民が周囲を掃除をしていたようだ。
カマルと乳母の二人だけじゃ、生い茂るジャングルを整地するのも大変だっただろう。
王宮の中を荒れないように掃除するだけで精一杯だったみたいだ。
イルハム王が、成長していた息子、カマルを紹介して。
異次元に吸い込まれている間に、14年もの年月が経っていたことを伝えると、みんな驚いていた。
そして。
やはりあの亀裂によって、世界が渇いてしまい、この国以外の全ての国が砂漠に覆われてしまっていたこと。
水の天使が降臨し、世界に水と緑を与え。これから海を復活させることを説明した。
それによる、世界の気候などの影響も。
海を復活させることに対して、反対する人はいなかったけど。
ここは真ん中くらいで、最北端や最南端でない限りは気候的な影響はあまりないと思う、と言ったら、見るからにほっとしていた。
やっぱり、住み慣れた環境を崩したくはないよな。
サイード王、イスナーン国を気に入ってくれたらいいけど。
新たに土地を開拓するのは、いくら魔法があっても大変だろうし。
「私はこれより、マラーク様とワーヒド国のスルタンと共に、ハカムを裁きに征く。帰りはいつになるかわからぬが。その間のこと、皆に頼むぞ」
イルハム王は、しばらく国を留守にすることを告げた。
妃の仇を討てると聞き、国民たちは喜んで請け負った。
その間に、荒れてしまった森を整地すると言ってる。
ちょうど、良い感じの道が出来ているので、整地は楽そうだって。
それ、ツチノコが作ったんだよな。
「おれも行きたい。いいか?」
カマルが手を上げた。
ずっとこの国から出たことがなかったし。色々な国を見てみたい、という。
「俺はいいけど……」
保護者であるイルハム王とアーディルを見たら。二人も構わない、と言った。
「んー。イルハム王とカマルの二人はトビトカゲで移動してもらうとして。……アシャラ国の国民たちもいるし。ここからワーヒド国のある大陸に行くのって大変かなあ」
「かなり強行軍になりそうですね。来た道を戻った方が早いかもしれません」
ラシッドは空から見て、だいたいの地形を把握していた。
あの道のりを戻るのか……。
近くを通るなら、また他国にも顔を出さないとまずいよな。
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