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冬の国
長い冬
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ザラームの力で、あっという間にいくつかの巨大カマクラが作られた。
突然の不思議な物体出現に、警備隊長のビンニーも見物に来た。
『お、中はわりといい感じだな』
『吹雪の時に一時的に雪を掘ってもぐるみたいな感じですかね。意外とあたたかいんですよね。雪の中って』
みんな納得して頷いている。
さすがに冬の国の軍人というか。雪中行軍でビバーク経験もあるようだ。
熱源が練炭だと一酸化炭素中毒に注意しないといけないけど、暖房やスープを温める魔道具もある世界なのでそこはクリアだ。
改めて、魔法って便利だな。っていうかラグナルすげえ。
『あとは、温泉の近くに宿泊施設と、スキー場建設、だったな。しかし、わざわざこんな寒いところに遊びに来たがるもんか?』
ザラームは首を傾げた。
「寒い国に住んでると、あったかいとこに行きたくなる?」
『ああ、わかった。その逆か』
一年中暑い、夏の国の人とか来てくれそうだけど、冷房もあるしどうだろう、と言ってる。
もう冷房も普及してるんだ……。
「じゃ、トールとか呼んでみようか? 興味あるみたいだよ。ヴォルンドルもスキーやってみたいって言ってたし。ついでにモニターになってもらって意見を聞こうよ」
ラグナル発明の電話的なもので、”春の国”のみんなとメッセージを送りあってる。
アイスも美味しかった、城下町でも評判になっていると教えてくれた。今や一番の大口顧客、上得意様である。
『いきなりとんでもない国賓が……』
観光大臣が青くなってた。
◆◇◆
黒の”印持ち”の力はすごい。
温泉を、一発で掘り当てて、
その近くに宿泊施設とスキー場、すぐ作っちゃった。ゴンドラは魔動だそうだ。座ると反応する。
宿泊施設といっても、部屋は5つ。まずは一日5組までの限定にしておく。
みんなまだ、客商売に関しては素人だ。
大勢のお客さんに対応できるようになるまでは、無理はしないほうがいい。
馴れても、乱立はしない方がいいけどな。
と団体客特化しすぎて廃墟の多くなった某温泉街を思い出しつつ。
『曾祖母ちゃ~ん!』
トールが元気に手を振ってる。
『あ、ザラーム王も、元気?』
ヴォルンドルは今回仕事で、泣く泣く留守番。
代わりにシグルズが来たけど。さすがに高齢で、スキーは無理だ。でも、神経痛持ちだそうだから、ゆっくり温泉に浸かるのはいいだろう。
『母上、またお目にかかれるとは……』
シグルズとハグしあう。
「一緒に温泉入ろうな!」
『それは、ご遠慮いたします……』
遠慮されちゃった。
最初の客が”春の国”の前王と第一王子という、いきなりの超VIPの登場に、宿の従業員が固まっていた。
モニターになってもらうための招待なのでチェックインは省略。
従業員に、お茶とお茶菓子を用意するように指示して。
ザラームとトールは早速スキーに出て行ったので、俺とシグルズはそれを部屋から見ながら、茶飲み話だ。
『母上、氷菓子いただきましたよ。大変美味でした』
おかげさまで借金返済も、順調だ。
『……ヴォルンドルから伝言があります』
シグルズは真剣な顔をして。
ザラーム王とはどうなのかと訊いてきた。
ヴォルンドルは、俺とザラームは不仲なのか、疑っているらしい。どうなのか聞いてきて欲しいと頼まれたそうだ。何でだろ。
「不仲どころか……いつもべったりだよ?」
ほら、と胸の印を見せたら。
『王后が、他の男に軽々しく肌を見せてはいけません!』
怒られてしまった。
えー……。
実の息子なのに?
あ、じゃあ温泉に一緒に入るのを遠慮されたのも、そのせいか。男同士なのにな。
っていうか男同士でも子供が出来る世界だと倫理観とかも違ったりするのか?
じゃあ、男湯にも湯浴み着みたいなのを用意するべきかな。そのまま他の温泉にも入りに行けるし。それでいくか。
『では、母上は、ザラーム王を愛してはいないのですか?』
心配そうに訊かれた。
ああ。
何でまだ、子を授かってないのか、不思議がられてるわけか。
「愛は、あると思うけど」
俺にも。
ザラームが、コトが終わったらすぐベッドから逃げるからだよ。
とはさすがに言えない……。
「なんでだろな……」
◆◇◆
絶対離さない、という意志を感じる……。
ザラームは、どこへ行くのも一緒だ。
身体を繋げた日は、絶対一緒には寝ないけど。離れたところから、朝までずっと俺を見守ってる。
シグルズたちが遊びに来た時も。
トールにスキー指導に出る前に、何かあったら絶対呼んでくれと頼んでたそうだ。
ここまで執着というか、溺愛されるようなこと、してないと思うけど。
この顔、この世界で、そんなカワイイもんなのかな?
”春の国”で、シグルズは俺に似たからめっちゃもててたって話をしたけど。
俺よりラグナルの美形遺伝子のが強かったのか、シグルズは121歳でもイケてる爺さんだよな。
今は白髪だけど、髪と目の色は俺譲りだったみたい。そこは、ヴォルンドルやトールにも受け継がれたようだ。それ以外、二人には俺の面影はないよな。顔が似てるとも言われなかったし。
ザラームは俺の手をぎゅっと握ったまま、居眠りしている。
ソファーで居眠りとか珍しい。
忙しくて、疲れちゃったんだな。それでも、俺の手を離そうとしないとか。困った王様だ。
……ちゃんと、愛してるよ?
そうじゃなかったら、受け入れたりしない。
わかってんのかね。
頬にキスをして。
毛布をかけてやる。
氷菓子も、世界的に有名になってきたようだ。ちらほら”秋の国”や”夏の国”からも受注があるそうで。
観光地として、”冬の国”に来る人も増えてきた。
カマクラの休憩所も、温泉宿も、好評な滑り出しのようだし。
スキーの認知度も上がってきた。
ガラスで覆った温室での植物栽培も、順調だというし。
次は、何をしようか?
突然の不思議な物体出現に、警備隊長のビンニーも見物に来た。
『お、中はわりといい感じだな』
『吹雪の時に一時的に雪を掘ってもぐるみたいな感じですかね。意外とあたたかいんですよね。雪の中って』
みんな納得して頷いている。
さすがに冬の国の軍人というか。雪中行軍でビバーク経験もあるようだ。
熱源が練炭だと一酸化炭素中毒に注意しないといけないけど、暖房やスープを温める魔道具もある世界なのでそこはクリアだ。
改めて、魔法って便利だな。っていうかラグナルすげえ。
『あとは、温泉の近くに宿泊施設と、スキー場建設、だったな。しかし、わざわざこんな寒いところに遊びに来たがるもんか?』
ザラームは首を傾げた。
「寒い国に住んでると、あったかいとこに行きたくなる?」
『ああ、わかった。その逆か』
一年中暑い、夏の国の人とか来てくれそうだけど、冷房もあるしどうだろう、と言ってる。
もう冷房も普及してるんだ……。
「じゃ、トールとか呼んでみようか? 興味あるみたいだよ。ヴォルンドルもスキーやってみたいって言ってたし。ついでにモニターになってもらって意見を聞こうよ」
ラグナル発明の電話的なもので、”春の国”のみんなとメッセージを送りあってる。
アイスも美味しかった、城下町でも評判になっていると教えてくれた。今や一番の大口顧客、上得意様である。
『いきなりとんでもない国賓が……』
観光大臣が青くなってた。
◆◇◆
黒の”印持ち”の力はすごい。
温泉を、一発で掘り当てて、
その近くに宿泊施設とスキー場、すぐ作っちゃった。ゴンドラは魔動だそうだ。座ると反応する。
宿泊施設といっても、部屋は5つ。まずは一日5組までの限定にしておく。
みんなまだ、客商売に関しては素人だ。
大勢のお客さんに対応できるようになるまでは、無理はしないほうがいい。
馴れても、乱立はしない方がいいけどな。
と団体客特化しすぎて廃墟の多くなった某温泉街を思い出しつつ。
『曾祖母ちゃ~ん!』
トールが元気に手を振ってる。
『あ、ザラーム王も、元気?』
ヴォルンドルは今回仕事で、泣く泣く留守番。
代わりにシグルズが来たけど。さすがに高齢で、スキーは無理だ。でも、神経痛持ちだそうだから、ゆっくり温泉に浸かるのはいいだろう。
『母上、またお目にかかれるとは……』
シグルズとハグしあう。
「一緒に温泉入ろうな!」
『それは、ご遠慮いたします……』
遠慮されちゃった。
最初の客が”春の国”の前王と第一王子という、いきなりの超VIPの登場に、宿の従業員が固まっていた。
モニターになってもらうための招待なのでチェックインは省略。
従業員に、お茶とお茶菓子を用意するように指示して。
ザラームとトールは早速スキーに出て行ったので、俺とシグルズはそれを部屋から見ながら、茶飲み話だ。
『母上、氷菓子いただきましたよ。大変美味でした』
おかげさまで借金返済も、順調だ。
『……ヴォルンドルから伝言があります』
シグルズは真剣な顔をして。
ザラーム王とはどうなのかと訊いてきた。
ヴォルンドルは、俺とザラームは不仲なのか、疑っているらしい。どうなのか聞いてきて欲しいと頼まれたそうだ。何でだろ。
「不仲どころか……いつもべったりだよ?」
ほら、と胸の印を見せたら。
『王后が、他の男に軽々しく肌を見せてはいけません!』
怒られてしまった。
えー……。
実の息子なのに?
あ、じゃあ温泉に一緒に入るのを遠慮されたのも、そのせいか。男同士なのにな。
っていうか男同士でも子供が出来る世界だと倫理観とかも違ったりするのか?
じゃあ、男湯にも湯浴み着みたいなのを用意するべきかな。そのまま他の温泉にも入りに行けるし。それでいくか。
『では、母上は、ザラーム王を愛してはいないのですか?』
心配そうに訊かれた。
ああ。
何でまだ、子を授かってないのか、不思議がられてるわけか。
「愛は、あると思うけど」
俺にも。
ザラームが、コトが終わったらすぐベッドから逃げるからだよ。
とはさすがに言えない……。
「なんでだろな……」
◆◇◆
絶対離さない、という意志を感じる……。
ザラームは、どこへ行くのも一緒だ。
身体を繋げた日は、絶対一緒には寝ないけど。離れたところから、朝までずっと俺を見守ってる。
シグルズたちが遊びに来た時も。
トールにスキー指導に出る前に、何かあったら絶対呼んでくれと頼んでたそうだ。
ここまで執着というか、溺愛されるようなこと、してないと思うけど。
この顔、この世界で、そんなカワイイもんなのかな?
”春の国”で、シグルズは俺に似たからめっちゃもててたって話をしたけど。
俺よりラグナルの美形遺伝子のが強かったのか、シグルズは121歳でもイケてる爺さんだよな。
今は白髪だけど、髪と目の色は俺譲りだったみたい。そこは、ヴォルンドルやトールにも受け継がれたようだ。それ以外、二人には俺の面影はないよな。顔が似てるとも言われなかったし。
ザラームは俺の手をぎゅっと握ったまま、居眠りしている。
ソファーで居眠りとか珍しい。
忙しくて、疲れちゃったんだな。それでも、俺の手を離そうとしないとか。困った王様だ。
……ちゃんと、愛してるよ?
そうじゃなかったら、受け入れたりしない。
わかってんのかね。
頬にキスをして。
毛布をかけてやる。
氷菓子も、世界的に有名になってきたようだ。ちらほら”秋の国”や”夏の国”からも受注があるそうで。
観光地として、”冬の国”に来る人も増えてきた。
カマクラの休憩所も、温泉宿も、好評な滑り出しのようだし。
スキーの認知度も上がってきた。
ガラスで覆った温室での植物栽培も、順調だというし。
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