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3章 学園へ
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翌日。
初めて寮のベッドを使ったが、昨日はあまり眠れなかった。
部屋の中は、ベッドと勉強机、クローゼットと小さなお茶を飲むための丸テーブルのセットがあるだけの狭い部屋だ。
実家の部屋よりも狭くてゴチャゴチャ物が置いてあるから落ち着かなかったんだろうか……。
いいえ。
モニカ様のあの目が忘れられずにいるからた。
アンバーの瞳から、憎しみが溢れ出ていた。
でも、フリーク侯爵家が没落したのは、わたしのせいじゃないんだけどな。
もともと、ルーク様との婚約を断ったのはモニカ様だし、賭博で借金作ったのはフリーク侯爵様だ。
……人はこれを逆恨みと言うんだろうな。
考えていても仕方がないので、とっとと起きて、制服に着替えて朝食を取りに食堂に行った。
食堂に行くと、アンリエル様が知らない女の子と喋りながら食事を取っているのが見えた。
人見知りのアンリエル様がお友達を作っている!
わたしは邪魔をしないように、すみっこでサッと食事を済ませて、支度をして寮を出た。
まだ着慣れない新しい制服と、教科書を入れる真新しい鞄が気分を上げてくれる。
今日はクラス分けをする予定だ。
クラスは成績順ということだけど、ルーク様と同じクラスだといいな。
……主席のルーク様と、同じクラスを希望するのは無謀か……。
そんなことを考えながら歩いていると、不意に声を掛けられた。
「ジーナ」
声変わりで少し掠れた声でわたしの名を呼ぶのはルーク様だ。
朝の爽やかな空気と、仮面をつけて制服を着た爽やかなルーク様。
朝から得した気分だ。
「ルーク様、おはようございます」
「おはよう。昨日はよく眠れたか?」
うっすらと目の下にクマを作っているわたしは、苦笑いで答えた。
「なんだ。眠れなかったのか」
「えへへー。まあ、慣れない環境でしたからね。ルーク様はよく眠れたようですね。お顔が艶々してます」
ルーク様は首を傾げた。
「そうでもないかな。ずっと仮面をつけているのはオレも慣れないからな」
「取ったらダメなんですかね」
「ぎゃーぎゃー言われるのも嫌だから、このままでいいよ」
「すみません。わたしがもう少し広範囲で魔法がかけられたら、入学までに治ったかもしれないのに」
ショボンと下を向くわたしに、ルーク様は髪を撫でてくれた。
「何言ってんだ。ジーナがいなけりゃ腕の火傷も治っていないぞ」
「そーですかねー?」
話しながら歩いているうちに、校舎が見えてきた。
校舎の中に入ると、廊下にクラス別の名簿が張り出されている。
目を皿のようにしてわたしとルーク様の名前を探す。
「あ、ありました! わたし、ルーク様と同じAクラスです!」
名簿の位置を見るに、かなりギリギリでAクラスになれたようだ。
ちなみに、アンリエル様はAクラスの名簿にはいなかった。
探していくと、Bクラスに名前があったので、隣のクラスだ。
残念。
30~40人くらいでひとクラスになる。
結構な人数で学ぶので、教室の中は広かった。
席は決まっていないようなので、ルーク様の隣に座ることにする。
わたしたちが隣り合って座ると、すでに教室の中に居た数人の人たちのざわめきが聞こえる。
気になって後ろを振り返ると、ピタッとざわめきが止まった。
「なんなんですかね……」
わたしが不思議そうに言うと、ルーク様はざわめきの理由も、それが止まった理由もわかっていたようで「気にするな」とだけ言って教科書を出して前を向いてしまった。
そう言われても、気になってもう一度後ろを向くと、視界の端にモニカ様が映って見えた。
モニカ様も、Aクラスらしい。
初めて寮のベッドを使ったが、昨日はあまり眠れなかった。
部屋の中は、ベッドと勉強机、クローゼットと小さなお茶を飲むための丸テーブルのセットがあるだけの狭い部屋だ。
実家の部屋よりも狭くてゴチャゴチャ物が置いてあるから落ち着かなかったんだろうか……。
いいえ。
モニカ様のあの目が忘れられずにいるからた。
アンバーの瞳から、憎しみが溢れ出ていた。
でも、フリーク侯爵家が没落したのは、わたしのせいじゃないんだけどな。
もともと、ルーク様との婚約を断ったのはモニカ様だし、賭博で借金作ったのはフリーク侯爵様だ。
……人はこれを逆恨みと言うんだろうな。
考えていても仕方がないので、とっとと起きて、制服に着替えて朝食を取りに食堂に行った。
食堂に行くと、アンリエル様が知らない女の子と喋りながら食事を取っているのが見えた。
人見知りのアンリエル様がお友達を作っている!
わたしは邪魔をしないように、すみっこでサッと食事を済ませて、支度をして寮を出た。
まだ着慣れない新しい制服と、教科書を入れる真新しい鞄が気分を上げてくれる。
今日はクラス分けをする予定だ。
クラスは成績順ということだけど、ルーク様と同じクラスだといいな。
……主席のルーク様と、同じクラスを希望するのは無謀か……。
そんなことを考えながら歩いていると、不意に声を掛けられた。
「ジーナ」
声変わりで少し掠れた声でわたしの名を呼ぶのはルーク様だ。
朝の爽やかな空気と、仮面をつけて制服を着た爽やかなルーク様。
朝から得した気分だ。
「ルーク様、おはようございます」
「おはよう。昨日はよく眠れたか?」
うっすらと目の下にクマを作っているわたしは、苦笑いで答えた。
「なんだ。眠れなかったのか」
「えへへー。まあ、慣れない環境でしたからね。ルーク様はよく眠れたようですね。お顔が艶々してます」
ルーク様は首を傾げた。
「そうでもないかな。ずっと仮面をつけているのはオレも慣れないからな」
「取ったらダメなんですかね」
「ぎゃーぎゃー言われるのも嫌だから、このままでいいよ」
「すみません。わたしがもう少し広範囲で魔法がかけられたら、入学までに治ったかもしれないのに」
ショボンと下を向くわたしに、ルーク様は髪を撫でてくれた。
「何言ってんだ。ジーナがいなけりゃ腕の火傷も治っていないぞ」
「そーですかねー?」
話しながら歩いているうちに、校舎が見えてきた。
校舎の中に入ると、廊下にクラス別の名簿が張り出されている。
目を皿のようにしてわたしとルーク様の名前を探す。
「あ、ありました! わたし、ルーク様と同じAクラスです!」
名簿の位置を見るに、かなりギリギリでAクラスになれたようだ。
ちなみに、アンリエル様はAクラスの名簿にはいなかった。
探していくと、Bクラスに名前があったので、隣のクラスだ。
残念。
30~40人くらいでひとクラスになる。
結構な人数で学ぶので、教室の中は広かった。
席は決まっていないようなので、ルーク様の隣に座ることにする。
わたしたちが隣り合って座ると、すでに教室の中に居た数人の人たちのざわめきが聞こえる。
気になって後ろを振り返ると、ピタッとざわめきが止まった。
「なんなんですかね……」
わたしが不思議そうに言うと、ルーク様はざわめきの理由も、それが止まった理由もわかっていたようで「気にするな」とだけ言って教科書を出して前を向いてしまった。
そう言われても、気になってもう一度後ろを向くと、視界の端にモニカ様が映って見えた。
モニカ様も、Aクラスらしい。
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