23 / 255
2章 気持ちを育む
14
しおりを挟む
それから数日してから、お父様が王様に呼ばれてお城に行った。
もしかしたら、フリーク侯爵家から婚約についてまた横槍がはいったのではないかと気が気じゃなかったけど、帰ってきたお父様は何も言っていなかった。
夕食の席でも、夕食後のティータイムでも、わたしはお父様のそばから離れず、ちょっとでも何か話すことを聞き逃さないようにピッタリとくっついていたら、夜寝る前に書斎に来なさいと、お父様からお呼び出しをもらった。
コンコン。
小さくノックをすると、中からお父様の声が聞こえる。
「入りなさい」
「失礼します」
わたしはそっとドアを開けて中に入った。
狭い書斎の中の机の前に、お父様は座っていた。
机の前の長椅子に座るよう促されて、わたしは、ちょこんと腰掛けた。
部屋の中には2人だけ。
シンとした空気が漂う。
お父様は、何かを考えていたようだったけと、徐ろに口を開いた。
「今日、王様に呼ばれて王城に行ったよ。ディヴイス侯爵様とルーク様、そしてフリーク侯爵様夫妻がいた」
フリーク侯爵様! やっぱり、婚約のことだったんだ!
「それで、どんな内容だったんですか?」
「うん。フリーク侯爵夫妻が言うには、モニカ嬢はとても素晴らしい娘だと。だから、子爵家の令嬢を婚約者にするより、ずっとルーク様の為になるとおっしゃっていた。また、ルーク様がジーナとの婚約を破棄しないのは、きっとジーナに弱みを握られているからだ。だから、ジーナのいないところで、ルーク様に婚約者をモニカ嬢に変えるよう、進言すべきだと」
「まあ……!」
ひどい!
わたし、ルーク様の弱みなんで握っていないのに!
「それからどうなったの?」
「うん。王様は、ディヴイス侯爵夫妻のいるところで、ルーク様にお尋ねになったんだ。もし、フリーク侯爵夫妻が言うように、弱みを握られているのならば、全力を持って王室がその弱みを排除する。だから、本心を話してほしいと」
ルーク様は、王室が嫌いだ。
とりわけ、ローゼリア様が嫌いなんだけど、色々とトラウマのある王室で詰問されて、さぞ心細かったろう。
わたしは心配になって、眦が下がってきた。
その様子を見ていたお父様が、ふと笑みをもらす。
「ルーク様は、毅然とした態度でこうおっしゃったよ。「わたしの婚約者はジーナ・ミラーです。彼女に弱みを握られていることもありません。わたしが彼女を好きだから、このままずっと婚約者でいることを望みます」と。ルーク様はいつも王城で会うと生気のない魂の抜けたような表情をしているんだ。それは、彼の生まれた境遇のこともあり、わたしも心配をしていたが、今日のルーク様は自分の意思をしっかり持った、見事な態度で王様に答えていたよ」
彼女を好きだから。
ルーク様は、わたしのことをそんな風に言ってくださったんだ!
思わずわたしも笑みが溢れる。
「そして、その時を以て、フリーク侯爵家は没落した」
「えっ?」
「もともと、フリーク侯爵家は建国祭の上納金を納めていなかったようだよ。ディヴイス侯爵家からの援助も、英雄の婚約者への支援金も得られないとなったので、侯爵位を手放したんだ。貴族の地位は失くしたくないようだったから、爵位を売って、領地を売って、借金を返したあとで多分爵位を買い戻すのだとは思うけど、噂で聞く借金の金額だと、男爵位を買うのが精一杯じゃないかな。モニカ嬢も、学園への入学は見送るそうだ」
「そうですか……」
没落するのは勝手だと思うけど、学園に入学できないのはかわいそうだと思った。
わたしが眉根を寄せると、お父様が笑って言った。
「ジーナは優しいね。心配しなくても大丈夫だよ。貴族であれば学園には入ることになるから。多分、一、二年遅れての入学になるだけだろう」
わたしはコクリと頷いた。
もしかしたら、フリーク侯爵家から婚約についてまた横槍がはいったのではないかと気が気じゃなかったけど、帰ってきたお父様は何も言っていなかった。
夕食の席でも、夕食後のティータイムでも、わたしはお父様のそばから離れず、ちょっとでも何か話すことを聞き逃さないようにピッタリとくっついていたら、夜寝る前に書斎に来なさいと、お父様からお呼び出しをもらった。
コンコン。
小さくノックをすると、中からお父様の声が聞こえる。
「入りなさい」
「失礼します」
わたしはそっとドアを開けて中に入った。
狭い書斎の中の机の前に、お父様は座っていた。
机の前の長椅子に座るよう促されて、わたしは、ちょこんと腰掛けた。
部屋の中には2人だけ。
シンとした空気が漂う。
お父様は、何かを考えていたようだったけと、徐ろに口を開いた。
「今日、王様に呼ばれて王城に行ったよ。ディヴイス侯爵様とルーク様、そしてフリーク侯爵様夫妻がいた」
フリーク侯爵様! やっぱり、婚約のことだったんだ!
「それで、どんな内容だったんですか?」
「うん。フリーク侯爵夫妻が言うには、モニカ嬢はとても素晴らしい娘だと。だから、子爵家の令嬢を婚約者にするより、ずっとルーク様の為になるとおっしゃっていた。また、ルーク様がジーナとの婚約を破棄しないのは、きっとジーナに弱みを握られているからだ。だから、ジーナのいないところで、ルーク様に婚約者をモニカ嬢に変えるよう、進言すべきだと」
「まあ……!」
ひどい!
わたし、ルーク様の弱みなんで握っていないのに!
「それからどうなったの?」
「うん。王様は、ディヴイス侯爵夫妻のいるところで、ルーク様にお尋ねになったんだ。もし、フリーク侯爵夫妻が言うように、弱みを握られているのならば、全力を持って王室がその弱みを排除する。だから、本心を話してほしいと」
ルーク様は、王室が嫌いだ。
とりわけ、ローゼリア様が嫌いなんだけど、色々とトラウマのある王室で詰問されて、さぞ心細かったろう。
わたしは心配になって、眦が下がってきた。
その様子を見ていたお父様が、ふと笑みをもらす。
「ルーク様は、毅然とした態度でこうおっしゃったよ。「わたしの婚約者はジーナ・ミラーです。彼女に弱みを握られていることもありません。わたしが彼女を好きだから、このままずっと婚約者でいることを望みます」と。ルーク様はいつも王城で会うと生気のない魂の抜けたような表情をしているんだ。それは、彼の生まれた境遇のこともあり、わたしも心配をしていたが、今日のルーク様は自分の意思をしっかり持った、見事な態度で王様に答えていたよ」
彼女を好きだから。
ルーク様は、わたしのことをそんな風に言ってくださったんだ!
思わずわたしも笑みが溢れる。
「そして、その時を以て、フリーク侯爵家は没落した」
「えっ?」
「もともと、フリーク侯爵家は建国祭の上納金を納めていなかったようだよ。ディヴイス侯爵家からの援助も、英雄の婚約者への支援金も得られないとなったので、侯爵位を手放したんだ。貴族の地位は失くしたくないようだったから、爵位を売って、領地を売って、借金を返したあとで多分爵位を買い戻すのだとは思うけど、噂で聞く借金の金額だと、男爵位を買うのが精一杯じゃないかな。モニカ嬢も、学園への入学は見送るそうだ」
「そうですか……」
没落するのは勝手だと思うけど、学園に入学できないのはかわいそうだと思った。
わたしが眉根を寄せると、お父様が笑って言った。
「ジーナは優しいね。心配しなくても大丈夫だよ。貴族であれば学園には入ることになるから。多分、一、二年遅れての入学になるだけだろう」
わたしはコクリと頷いた。
3
あなたにおすすめの小説
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。
さら
恋愛
私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。
そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。
王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。
私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。
――でも、それは間違いだった。
辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。
やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。
王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。
無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。
裏切りから始まる癒しの恋。
厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる