143 / 187
19章 戴冠
5
しおりを挟む
お城の中に入ると、王の間には誰もおらず、しんと静まり返っていた。
おかしいわ。
国王が座っていれば、いつも周りはザワザワとしていたのに……。
モーリスが私に王座に座るように促した。
「でも、国王は……」
「既に退位の儀を済ませ、居室の方も退出されております」
「え……」
確か、私がボナールに来てから、退位の儀と、私の戴冠式が行われるはずだったのに。
モーリスは言い辛そうに、それでもはっきりとした口調を私に向けた。
「コルビー前国王は、あなたが即位することを認めたくなかったようです。戴冠式には出席しないと。荷物をまとめて王妃様、王女様とともに、早々にお城を後にされました」
そこまで……。
私が目を丸くしていると、横からライリー殿下がモーリスに言う。
「本当は、政権交代を国民に見せたかったんだけどな。まあ、仕方ないさ。戴冠式は国民も多くの者に見てもらえるように配慮を頼む」
ライリー殿下がモーリスと話をしていると、フレッド様とディリオン様はボナール城の女官長と侍従長を呼び、城の中の事を色々と確認を始める。
マリーはマリーで、古巣に戻り、かつての配下の者たちの所在を確認して、何やら忙しくしている。
当然、ジュディやアーサーだって昔のお友達がボナール城にいる訳で……。
ポツンとひとりで王の間に立っていると、コンラッド様が私のところにやってきた。
「あー、シャーロット殿下。疲れているだろうから、部屋で休ませてもらうか」
みんなが忙しくしているのに、休むなんていいのか悩むところだけれど、何もすることがなさそうなので、コンラッド様の言うように、部屋で休ませてもらうことにした。
コンラッド様が城の女官に声をかけ、王の居室に案内してもらう。
護衛の代わりにと、コンラッド様が居室まで付き添ってくれることになった。
「あー、シャーロット殿下。あんたと2人で話す機会もなかったから言ったことはなかったが、終戦直後は悪かったな」
「なんのことですの?」
「影武者とはいえ、オレが人質としてシャーロット殿下をもらい受けることに同意してしまって。オレが率先したわけではないが、やはりあの後もずっと気になっていた」
私はコンラッド様に微笑む。
「コンラッド様が悪い訳ではありませんし、結果的には私には良い方向に向きましたわ。感謝しているくらいですもの」
「そう言ってもらえると助かる」
「それに、この度はランバラルドの民だけでなく、奴隷として買われて行ったボナールの民も助けていただいたと聞いています。本当に、ありがとうございました」
「いや、人として当然のことだ。我らが王子がほっとくはずもない。それに、買い戻した金は、ボナールから賠償金としてもらうことになっているからな」
「それはもちろんでございます」
城の中心部に国王の居室は用意されていた。
ドアを開けると、広々としたスペースがあり、入ってすぐは打ち合わせブースで、ドアを開けると応接間、その次は寝室と、まだドアは続いていた。
女官は腰を折り、「次代の国王は女性ということを含めてお部屋を整えさせていただきました」と部屋を案内してくれた。
「将来の伴侶のお部屋が、お隣になります」
私はほけっと口を開けた。
「はんりょ……」
私はライリー殿下の側妃だけど、元々ボナールを継ぐことを考えて婚姻を結んでいる。
でも、いつだったか、全てが終わったら離縁も視野に入れると言っていたわ。
ライに好きだと言ってもらったのが、遠い昔のように思う。
理由はわからないけれど、やるせない思いを抱き、女官が話すのを聞いていた。
おかしいわ。
国王が座っていれば、いつも周りはザワザワとしていたのに……。
モーリスが私に王座に座るように促した。
「でも、国王は……」
「既に退位の儀を済ませ、居室の方も退出されております」
「え……」
確か、私がボナールに来てから、退位の儀と、私の戴冠式が行われるはずだったのに。
モーリスは言い辛そうに、それでもはっきりとした口調を私に向けた。
「コルビー前国王は、あなたが即位することを認めたくなかったようです。戴冠式には出席しないと。荷物をまとめて王妃様、王女様とともに、早々にお城を後にされました」
そこまで……。
私が目を丸くしていると、横からライリー殿下がモーリスに言う。
「本当は、政権交代を国民に見せたかったんだけどな。まあ、仕方ないさ。戴冠式は国民も多くの者に見てもらえるように配慮を頼む」
ライリー殿下がモーリスと話をしていると、フレッド様とディリオン様はボナール城の女官長と侍従長を呼び、城の中の事を色々と確認を始める。
マリーはマリーで、古巣に戻り、かつての配下の者たちの所在を確認して、何やら忙しくしている。
当然、ジュディやアーサーだって昔のお友達がボナール城にいる訳で……。
ポツンとひとりで王の間に立っていると、コンラッド様が私のところにやってきた。
「あー、シャーロット殿下。疲れているだろうから、部屋で休ませてもらうか」
みんなが忙しくしているのに、休むなんていいのか悩むところだけれど、何もすることがなさそうなので、コンラッド様の言うように、部屋で休ませてもらうことにした。
コンラッド様が城の女官に声をかけ、王の居室に案内してもらう。
護衛の代わりにと、コンラッド様が居室まで付き添ってくれることになった。
「あー、シャーロット殿下。あんたと2人で話す機会もなかったから言ったことはなかったが、終戦直後は悪かったな」
「なんのことですの?」
「影武者とはいえ、オレが人質としてシャーロット殿下をもらい受けることに同意してしまって。オレが率先したわけではないが、やはりあの後もずっと気になっていた」
私はコンラッド様に微笑む。
「コンラッド様が悪い訳ではありませんし、結果的には私には良い方向に向きましたわ。感謝しているくらいですもの」
「そう言ってもらえると助かる」
「それに、この度はランバラルドの民だけでなく、奴隷として買われて行ったボナールの民も助けていただいたと聞いています。本当に、ありがとうございました」
「いや、人として当然のことだ。我らが王子がほっとくはずもない。それに、買い戻した金は、ボナールから賠償金としてもらうことになっているからな」
「それはもちろんでございます」
城の中心部に国王の居室は用意されていた。
ドアを開けると、広々としたスペースがあり、入ってすぐは打ち合わせブースで、ドアを開けると応接間、その次は寝室と、まだドアは続いていた。
女官は腰を折り、「次代の国王は女性ということを含めてお部屋を整えさせていただきました」と部屋を案内してくれた。
「将来の伴侶のお部屋が、お隣になります」
私はほけっと口を開けた。
「はんりょ……」
私はライリー殿下の側妃だけど、元々ボナールを継ぐことを考えて婚姻を結んでいる。
でも、いつだったか、全てが終わったら離縁も視野に入れると言っていたわ。
ライに好きだと言ってもらったのが、遠い昔のように思う。
理由はわからないけれど、やるせない思いを抱き、女官が話すのを聞いていた。
5
あなたにおすすめの小説
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。
恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。
そして、屋敷から出ると決め
計画を実行したら
皮肉にも失敗しそうになっていた。
そんな時彼に出会い。
王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす!
と、そんな時に聖騎士が来た
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
双子として生まれたエレナとエレン。
かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。
だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。
エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。
両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。
そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。
療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。
エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。
だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。
自分がニセモノだと知っている。
だから、この1年限りの恋をしよう。
そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。
※※※※※※※※※※※※※
異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。
現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦)
ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる