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3章 旅立ち
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「マリー、ありがとう。でも、私は逃げないわ」
「姫様!」
マリーとジュディの真剣な眼差しが私を射止める。
「私が逃げたらどうなるの?賠償金は払えず、アーサー達捕虜になった者たちは帰ってこないわ。国の為に戦ってくれた国民を、私は裏切れない」
「姫様が行かなくても、敗戦は決まったのです。どんな方法にしろ、賠償金は払うことになります」
「でも、その後は?国民の生活はどうなるの?さっき、マリーが私の本当のお父様お母様の話をしてくれて、ますます意思は固まったわ。賢王であったお父様が治めた国を、私は守りたい」
ジュディは私の肩を掴んだ。
「それでも!姫様が犠牲になることはないはずです。あの親子が責任を取ればいいんだわ!」
「ふふっ、ジュディ、肩を揺らさないで。くらくらしちゃうから」
「姫様!ふざけないでください!」
ジュディの手を肩からはずして、ソファから立ち上がり、窓の側に立つ。
「マリー、さっき、ここから外を眺めていたわね。ここからよく見えるわ。あの木、夜の散歩の時に登ろうとして、怒られたわね。たまに来るアーサーが簡単に登るから、私にも登れるものだと思って、いざ登ろうとしたら登れなくて。あの木の向こうって、私とお母様が最後に暮らした離宮の跡よね。マリーは私の姿をお母様に見せたくて、あそこに連れて行ってくれたのね」
マリーは何も言わずに俯くだけ。
「私、やっぱりランバラルドへ行きます。そして、アーサー達を返して貰います。やっと、私でも役に立てるのだから」
そう言って微笑むと、マリーもジュディも私に抱きついてきて、それから女3人でわんわん泣いた。
泣くだけ泣いて、3人とも目蓋がものすごく腫れて、ブスな女が3人できた頃、マリーが涙を拭いて前を見た。
「かしこまりました。第一王女様。お支度はこのマリーが整えさせていただきます」
そうか。
私は本当は第一王女なのか。
「私の本当の誕生日は、セリーヌお姉様の誕生日なの?」
「はい」
「では、私はもう16歳なのね。立派な大人だわ。これからはしっかりしなくっちゃね」
「姫様は今までも大変しっかりしておいででしたよ」
「…ありがとう」
私は覚悟を決めて、ランバラルドへ向かう準備を始めた。
最初、ランバラルドへはマリーもジュディもついて来ると言ったのだが、丁重にお断りをした。
だって、人質に侍女がついてきてもいいかわからなかったし、二人を巻き添えにしたくなかったから。
二人には、アーサーが帰ってきた時に家で迎えてあげて欲しかったし、私自身、ランバラルドに行った後、どうなるかわからなかったから。
でも、私の乳母と侍女はたいそう頑固で、絶対についてくると言ってきかない。
マリーはともかく、ジュディとは最後、ケンカになってしまって、大変険悪なふんいきになってしまった。
結局、マリーが仲裁してくれて、折衷案としてジュディは一緒に行くものの、私のランバラルドでの生活基盤ができたら、帰国するということで話は決まった。
ほんとは心細かったから、行きだけでもジュディがいてくれて嬉しい。ナイショだけど。
出発は3日後に決まった。
随分と早い出発だけど、私の荷物はとても少なくて、本当は1日あれば支度は終わってしまったが、ちょっともったいぶってみた。
行きの馬車はボナール王国で用意してくれたもので行く。
国王はボロ馬車で行かせようとしたけど、宰相様がそんなことをして七色の乙女でないことがばれたらどうするのかと国王に言い聞かせ、ちゃんとした馬車とそれなりの支度をしてくれた。
…と言っても、ほんとに私は七色の乙女らしいし、してくれた支度のうち、ギラギラしているドレスはどれもセリーヌ様のお古で、一回は袖を通した物だけど。
ドレスとしては高価なものだろうから、体面は保たれるだろうけど。黙っていれば袖を通したことがあるかどうかなんてわからないし。
出発前夜、ちょっぴりおセンチになって、また女3人で泣いてしまった。
マリー。私の第二のお母さん。
私はあなたがいなければ、生きていなかったことでしょう。
落ち着いたら、すぐにジュディを返すから、アーサーと3人で幸せに暮らしてね。
「姫様!」
マリーとジュディの真剣な眼差しが私を射止める。
「私が逃げたらどうなるの?賠償金は払えず、アーサー達捕虜になった者たちは帰ってこないわ。国の為に戦ってくれた国民を、私は裏切れない」
「姫様が行かなくても、敗戦は決まったのです。どんな方法にしろ、賠償金は払うことになります」
「でも、その後は?国民の生活はどうなるの?さっき、マリーが私の本当のお父様お母様の話をしてくれて、ますます意思は固まったわ。賢王であったお父様が治めた国を、私は守りたい」
ジュディは私の肩を掴んだ。
「それでも!姫様が犠牲になることはないはずです。あの親子が責任を取ればいいんだわ!」
「ふふっ、ジュディ、肩を揺らさないで。くらくらしちゃうから」
「姫様!ふざけないでください!」
ジュディの手を肩からはずして、ソファから立ち上がり、窓の側に立つ。
「マリー、さっき、ここから外を眺めていたわね。ここからよく見えるわ。あの木、夜の散歩の時に登ろうとして、怒られたわね。たまに来るアーサーが簡単に登るから、私にも登れるものだと思って、いざ登ろうとしたら登れなくて。あの木の向こうって、私とお母様が最後に暮らした離宮の跡よね。マリーは私の姿をお母様に見せたくて、あそこに連れて行ってくれたのね」
マリーは何も言わずに俯くだけ。
「私、やっぱりランバラルドへ行きます。そして、アーサー達を返して貰います。やっと、私でも役に立てるのだから」
そう言って微笑むと、マリーもジュディも私に抱きついてきて、それから女3人でわんわん泣いた。
泣くだけ泣いて、3人とも目蓋がものすごく腫れて、ブスな女が3人できた頃、マリーが涙を拭いて前を見た。
「かしこまりました。第一王女様。お支度はこのマリーが整えさせていただきます」
そうか。
私は本当は第一王女なのか。
「私の本当の誕生日は、セリーヌお姉様の誕生日なの?」
「はい」
「では、私はもう16歳なのね。立派な大人だわ。これからはしっかりしなくっちゃね」
「姫様は今までも大変しっかりしておいででしたよ」
「…ありがとう」
私は覚悟を決めて、ランバラルドへ向かう準備を始めた。
最初、ランバラルドへはマリーもジュディもついて来ると言ったのだが、丁重にお断りをした。
だって、人質に侍女がついてきてもいいかわからなかったし、二人を巻き添えにしたくなかったから。
二人には、アーサーが帰ってきた時に家で迎えてあげて欲しかったし、私自身、ランバラルドに行った後、どうなるかわからなかったから。
でも、私の乳母と侍女はたいそう頑固で、絶対についてくると言ってきかない。
マリーはともかく、ジュディとは最後、ケンカになってしまって、大変険悪なふんいきになってしまった。
結局、マリーが仲裁してくれて、折衷案としてジュディは一緒に行くものの、私のランバラルドでの生活基盤ができたら、帰国するということで話は決まった。
ほんとは心細かったから、行きだけでもジュディがいてくれて嬉しい。ナイショだけど。
出発は3日後に決まった。
随分と早い出発だけど、私の荷物はとても少なくて、本当は1日あれば支度は終わってしまったが、ちょっともったいぶってみた。
行きの馬車はボナール王国で用意してくれたもので行く。
国王はボロ馬車で行かせようとしたけど、宰相様がそんなことをして七色の乙女でないことがばれたらどうするのかと国王に言い聞かせ、ちゃんとした馬車とそれなりの支度をしてくれた。
…と言っても、ほんとに私は七色の乙女らしいし、してくれた支度のうち、ギラギラしているドレスはどれもセリーヌ様のお古で、一回は袖を通した物だけど。
ドレスとしては高価なものだろうから、体面は保たれるだろうけど。黙っていれば袖を通したことがあるかどうかなんてわからないし。
出発前夜、ちょっぴりおセンチになって、また女3人で泣いてしまった。
マリー。私の第二のお母さん。
私はあなたがいなければ、生きていなかったことでしょう。
落ち着いたら、すぐにジュディを返すから、アーサーと3人で幸せに暮らしてね。
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