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第八章 家族
第130話 母と名乗る女
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俺、タウ・フォンダンには5人の母親がいることになる。
一人は地球世界で俺を産み、育ててくれた丸山恭子母さんだが、いまのこの体で考えると血の繋がりはない。
もう一人は、この世界でドラゴンに焼かれた俺を助けて息子にしてくれた女医スカーレット・ワイルズで、その骨は敷地の中に埋葬し毎日花を手向けている。
そして、俺を養子にしてくれたエレーヌ・フォンダン母さんと、ソフィアの母であるカトリーヌ・フォンダン、王妃である。
最後の一人は、まったく情報がないのだが、この体を産んでくれた母がいるはずなのだ。
俺の脳の中には、孤児として生活していた記憶はあったが、母親の記憶は皆無だった。
俺は今、20歳になった。
正確な誕生日はわからないが、スカーレット母さんがつけてくれた誕生日を元にしている。
ソフィアも3カ月後には20歳になる。
そろそろ、子供を作ってもいい頃だろう。
そんなとある日のことだった。
俺の母親だという女の人がやってきた。
「あなたが、俺の母親だというんですか?」
「そう。あの日ドラゴンが現れてはぐれてしまったのよ。」
「……。あなたが俺の母親だというのは、どうして分かったんですか?」
「えっ、だってタウという名前が……。」
「タウというのはスカーレット母さんがつけてくれた名前なんですよ。」
「そ、そんな……。」
「アイラ、お引き取りいただいて。」
「はい。」
アイラに連れられてその女性は出て行った。
「お前の母親って、本当に何の手がかりもないのか?」
「浮浪児の仲間から呼ばれていた名前はあるんだけど、それも誰がつけたか分からないしな……。」
「そうか……寂しいのなら、私が抱いてやるからな。」
「それ、ソフィアの前では絶対に言うなよ。」
「当然だろ。私だってそこまで馬鹿じゃないさ。」
「まあ、今更母親だって出てこられてもな……。」
「実はアタイがタウの母親なんだ。お前に吸われた乳首が覚えてるんだ。」
「やめろ、洒落になんねえよ。」
「もし、本物が現れたらどうするんだ?」
「本物か……、まあ、望むことはしてあげるかもな。」
学び舎や孤児たちの活動も軌道にのり、飛空艇による物流の改善は食生活を豊かにしてくれた。
メロンとコメの栽培も順調に推移しており、国民の生活は大幅に改善されてきた。
だから、城の勤務が休みの日は、畳敷きのリギングで、こうしてぼんやり過ごすこともできるようになってきた。
「ヨーゼフ、どうしたの?」
「来客じゃないか。」
ヨーゼフは我が家のセントバーナードだ。メスの方はクララ。
シェルティーのジョゼとインリも尻尾を振ってドアの方に歩いていく。
「いらっしゃいませ。」
対応に出たマリアンヌが来訪者を迎え入れる。
「先生がお見えになりました。」
「先生?」
「お花の手入れを教わっているの。」
「へえ。」
ソフィアが立ち上がるのに併せて俺も立った。
「先生は初めてですわよね。夫のタウです。」
「タウです。よろしくお願いいたします。」
「初めまして、花屋のキキョウでございます。」
キキョウ……。発音が日本の花を思い起こされる。
どことなく漂う和風美人の装いに、少し心がざわついた。
「キキョウ先生は、元々貴族だったのを、花屋さんだったご主人のところに嫁がれたんですって。」
「へえ、そうなんだ。」
貴族の娘が商家に嫁ぐのは珍しいことではない。
挨拶をしている間にミーシャがお茶の用意を済ませ、テーブルにつくタイミングにあわせて紅茶を出してくれた。
「ソフィアさんの温室には、世界中の珍しいお花がありますから、私も楽しみにしておりますのよ。」
【あとがき】
新章に入ります。
一人は地球世界で俺を産み、育ててくれた丸山恭子母さんだが、いまのこの体で考えると血の繋がりはない。
もう一人は、この世界でドラゴンに焼かれた俺を助けて息子にしてくれた女医スカーレット・ワイルズで、その骨は敷地の中に埋葬し毎日花を手向けている。
そして、俺を養子にしてくれたエレーヌ・フォンダン母さんと、ソフィアの母であるカトリーヌ・フォンダン、王妃である。
最後の一人は、まったく情報がないのだが、この体を産んでくれた母がいるはずなのだ。
俺の脳の中には、孤児として生活していた記憶はあったが、母親の記憶は皆無だった。
俺は今、20歳になった。
正確な誕生日はわからないが、スカーレット母さんがつけてくれた誕生日を元にしている。
ソフィアも3カ月後には20歳になる。
そろそろ、子供を作ってもいい頃だろう。
そんなとある日のことだった。
俺の母親だという女の人がやってきた。
「あなたが、俺の母親だというんですか?」
「そう。あの日ドラゴンが現れてはぐれてしまったのよ。」
「……。あなたが俺の母親だというのは、どうして分かったんですか?」
「えっ、だってタウという名前が……。」
「タウというのはスカーレット母さんがつけてくれた名前なんですよ。」
「そ、そんな……。」
「アイラ、お引き取りいただいて。」
「はい。」
アイラに連れられてその女性は出て行った。
「お前の母親って、本当に何の手がかりもないのか?」
「浮浪児の仲間から呼ばれていた名前はあるんだけど、それも誰がつけたか分からないしな……。」
「そうか……寂しいのなら、私が抱いてやるからな。」
「それ、ソフィアの前では絶対に言うなよ。」
「当然だろ。私だってそこまで馬鹿じゃないさ。」
「まあ、今更母親だって出てこられてもな……。」
「実はアタイがタウの母親なんだ。お前に吸われた乳首が覚えてるんだ。」
「やめろ、洒落になんねえよ。」
「もし、本物が現れたらどうするんだ?」
「本物か……、まあ、望むことはしてあげるかもな。」
学び舎や孤児たちの活動も軌道にのり、飛空艇による物流の改善は食生活を豊かにしてくれた。
メロンとコメの栽培も順調に推移しており、国民の生活は大幅に改善されてきた。
だから、城の勤務が休みの日は、畳敷きのリギングで、こうしてぼんやり過ごすこともできるようになってきた。
「ヨーゼフ、どうしたの?」
「来客じゃないか。」
ヨーゼフは我が家のセントバーナードだ。メスの方はクララ。
シェルティーのジョゼとインリも尻尾を振ってドアの方に歩いていく。
「いらっしゃいませ。」
対応に出たマリアンヌが来訪者を迎え入れる。
「先生がお見えになりました。」
「先生?」
「お花の手入れを教わっているの。」
「へえ。」
ソフィアが立ち上がるのに併せて俺も立った。
「先生は初めてですわよね。夫のタウです。」
「タウです。よろしくお願いいたします。」
「初めまして、花屋のキキョウでございます。」
キキョウ……。発音が日本の花を思い起こされる。
どことなく漂う和風美人の装いに、少し心がざわついた。
「キキョウ先生は、元々貴族だったのを、花屋さんだったご主人のところに嫁がれたんですって。」
「へえ、そうなんだ。」
貴族の娘が商家に嫁ぐのは珍しいことではない。
挨拶をしている間にミーシャがお茶の用意を済ませ、テーブルにつくタイミングにあわせて紅茶を出してくれた。
「ソフィアさんの温室には、世界中の珍しいお花がありますから、私も楽しみにしておりますのよ。」
【あとがき】
新章に入ります。
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