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第七章 動物の園
第129話 孫はどちらに……
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俺たちは、モルゴンのもう一つの攻撃軸である東の海岸線に向かった。
現代でいえば朝鮮半島の北側である。
「タウ、あれじゃないか?」
「ああ、そうみたいだな。」
俺は、騎馬隊のはるか前方に降り立ち、地上を走って騎馬隊の前面に到達した。
「何のようだ?」
「アルジャバの使いだ、責任者に会いたい。」
「ふん、命乞いか!」
「話がしたいのは責任者だ。他とは話をする気はない。」
「待っていろ。」
10分ほど待たされたが、ひげ面の男が現れた。
「この隊を任されているトルイだ。アルジャバの使いだと聞いたが。」
「アルジャバの第三王子ジャミールの使いだ。ジャミール本人は西の谷の前線に出ているため代理で来た。」
「そうか、王子自ら死地に赴いたか。勇敢な男には敬意を表そう。」
「残念だが、モルゴンの軍は壊滅して敗走中だ。こちらも余計な戦闘は避けたいので、撤退を勧めに来た。」
「そのような与太話を信じると思うか?」
「信じるかどうかはそちらの勝手だが、俺はロマノ帝国への侵攻や各地での奮闘ぶりをこの目で見てきた。モルゴンの奮闘ぶりは賞賛に値する。だが、南への侵略は許さない。」
「ふむ。だが、その話を俺が信じると思うのか?」
「こちらの戦力の一端を見せておこう。」
俺はアイラに促して、バズーカを試射させた。
「その武器で数百の兵は殺せるだろう。だがこちらには5000の兵がおるのだぞ。」
「何千の兵がいても、そちらの攻撃は無力化できるんだ。」
「なに?」
「そうだな、お前の部隊があの岩を超えたら攻撃する。もし気が変わって撤退する気になったら白い布を振ってくれ、そうしたら追撃はしない。」
「自信がありそうだな、わかった。」
俺たちが飛空艇で走り去ると、騎馬隊は前進を開始した。
そして約束の岩を超えたところで上空へ飛び上がり、岩の爆撃とバズーカでの攻撃を開始した。
初撃だけで様子を見ていると、やがて白い布が振られ、騎馬隊は引き返していった。
「冷静に判断のできる男でよかったな。」
「ああ、そうでなければこれほど広大な帝国は築けなかっただろうさ。」
「そういうものか。」
「さあ、国に帰ろうか。」
「王子には会っていかないのか?」
「そのまま帰ると伝えてある。あいつも、前線でまだやることがあるだろうしな。」
俺は国に帰って宰相と陛下に報告をした。
「そうか、友好国は増えなかったか。」
「そうですね。当面は様子見ということですが、アルジャバが打診してくるかもしれませんね。」
「そうしたら、どうするつもりじゃ。」
「相手の出方次第ですね。アルジャバが海までの小国を併合するのなら、まあ、準友好国くらいにしてやってもいいかなと思っています。」
「力で征服していったら?」
「却下ですね。」
「数年前までは、アルジャバもあれほどの脅威だったのにな。」
「まあ、ソフィアの婚約者にタウを選んだワシらの判断が正しかったということじゃな。」
「ところで、ソフィアに子ができた場合、その子は俺の方の孫ですよね。」
「……何をいうか、女王の子なのだからワシじゃろう。」
「いやいや、ソフィアはうちに嫁に出したんですよね。婚姻届けを出したんだから。」
「そこ、揉めるんですか?」
「当然だろ。どっちが正当な爺なのかは重要な問題だぞ。」
「ああ、孫が健やかに育つためには、忙しい宰相の孫なんかより、隠居した国王の方が適任じゃろう。」
「そういう無責任な爺に、大事な孫を渡すわけにはいかないよなタウ。」
「目の行き届いた城で育った方がいいに決まってるじゃろ!」
「制約のない俺の家の方が、のびのびと育つに決まっているでしょ。」
「まだ、妊娠もしてないんですが……。」
【あとがき】
まあ、孫の主導権はどちらにあるのか……。当事者にとっては、重要な問題なのかもしれません。
現代でいえば朝鮮半島の北側である。
「タウ、あれじゃないか?」
「ああ、そうみたいだな。」
俺は、騎馬隊のはるか前方に降り立ち、地上を走って騎馬隊の前面に到達した。
「何のようだ?」
「アルジャバの使いだ、責任者に会いたい。」
「ふん、命乞いか!」
「話がしたいのは責任者だ。他とは話をする気はない。」
「待っていろ。」
10分ほど待たされたが、ひげ面の男が現れた。
「この隊を任されているトルイだ。アルジャバの使いだと聞いたが。」
「アルジャバの第三王子ジャミールの使いだ。ジャミール本人は西の谷の前線に出ているため代理で来た。」
「そうか、王子自ら死地に赴いたか。勇敢な男には敬意を表そう。」
「残念だが、モルゴンの軍は壊滅して敗走中だ。こちらも余計な戦闘は避けたいので、撤退を勧めに来た。」
「そのような与太話を信じると思うか?」
「信じるかどうかはそちらの勝手だが、俺はロマノ帝国への侵攻や各地での奮闘ぶりをこの目で見てきた。モルゴンの奮闘ぶりは賞賛に値する。だが、南への侵略は許さない。」
「ふむ。だが、その話を俺が信じると思うのか?」
「こちらの戦力の一端を見せておこう。」
俺はアイラに促して、バズーカを試射させた。
「その武器で数百の兵は殺せるだろう。だがこちらには5000の兵がおるのだぞ。」
「何千の兵がいても、そちらの攻撃は無力化できるんだ。」
「なに?」
「そうだな、お前の部隊があの岩を超えたら攻撃する。もし気が変わって撤退する気になったら白い布を振ってくれ、そうしたら追撃はしない。」
「自信がありそうだな、わかった。」
俺たちが飛空艇で走り去ると、騎馬隊は前進を開始した。
そして約束の岩を超えたところで上空へ飛び上がり、岩の爆撃とバズーカでの攻撃を開始した。
初撃だけで様子を見ていると、やがて白い布が振られ、騎馬隊は引き返していった。
「冷静に判断のできる男でよかったな。」
「ああ、そうでなければこれほど広大な帝国は築けなかっただろうさ。」
「そういうものか。」
「さあ、国に帰ろうか。」
「王子には会っていかないのか?」
「そのまま帰ると伝えてある。あいつも、前線でまだやることがあるだろうしな。」
俺は国に帰って宰相と陛下に報告をした。
「そうか、友好国は増えなかったか。」
「そうですね。当面は様子見ということですが、アルジャバが打診してくるかもしれませんね。」
「そうしたら、どうするつもりじゃ。」
「相手の出方次第ですね。アルジャバが海までの小国を併合するのなら、まあ、準友好国くらいにしてやってもいいかなと思っています。」
「力で征服していったら?」
「却下ですね。」
「数年前までは、アルジャバもあれほどの脅威だったのにな。」
「まあ、ソフィアの婚約者にタウを選んだワシらの判断が正しかったということじゃな。」
「ところで、ソフィアに子ができた場合、その子は俺の方の孫ですよね。」
「……何をいうか、女王の子なのだからワシじゃろう。」
「いやいや、ソフィアはうちに嫁に出したんですよね。婚姻届けを出したんだから。」
「そこ、揉めるんですか?」
「当然だろ。どっちが正当な爺なのかは重要な問題だぞ。」
「ああ、孫が健やかに育つためには、忙しい宰相の孫なんかより、隠居した国王の方が適任じゃろう。」
「そういう無責任な爺に、大事な孫を渡すわけにはいかないよなタウ。」
「目の行き届いた城で育った方がいいに決まってるじゃろ!」
「制約のない俺の家の方が、のびのびと育つに決まっているでしょ。」
「まだ、妊娠もしてないんですが……。」
【あとがき】
まあ、孫の主導権はどちらにあるのか……。当事者にとっては、重要な問題なのかもしれません。
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