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本編
2 本性
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その後、元婚約者はリリシアーナの妹、フィオナと結婚した。
フィオナは病弱だからと家からは出ない。
当然社交の場にも。
それを良い事に、男は数年経ったある日、夜会でフィオナ以外の女を抱いた。
フィオナは若く可愛らしいが、家からは出ない為、着飾る事は無いので華やかさに欠ける。
社交場の女性と比べれば、話題も乏しく教養も少ない。
身体が弱い為、着飾られて家から連れ出し、見せびらかす事も出来ない。
何せ結婚式を挙げようと、下見に教会へと連れ出しただけで倒れ、医者からは安静にと言われた程だ。
その頃は同情や庇護欲を強く感じていたが、今はそれ程強く感じない。
要は飽きたのだ。
だからたまには、他の女性も味わってみたいと手を出した。
帰宅後、フィオナに女の匂いを指摘されるも、ダンスをしたからだろうと誤魔化すが、フィオナの怒りは収まらない。
フィオナは気付いていたのだ。夫となった男の嘘を。浮気を。
何故なら、男に纏わせていたフィオナの魔力に、変化があったのだから。
そして、フィオナの激しい怒りで、フィオナ自身に掛かっていた幻覚魔法が解けた。
そこに居るフィオナは生身の人間では無く、身体の半分は腐り、ミイラ化した死体で、顔は骨や腐った肉が露出している状態だ。
片目はぽっかりと穴が空いているが、魔力が巡っている所為か、青白い炎が眼孔に浮かび、視線も感じる上、もう片方の目は辛うじて残っているが、濁っていて、生気は感じられないのに動いている。
当然男は彼女の姿に驚き、大きな声で悲鳴を上げるも、身体が縛られているかのように、急に身動きが出来ず、部屋からは逃げられない。
男のあまりの大きな悲鳴に何事かと、父親と家の使用人達がその場に駆け込むと、そこにはミイラ化した娘の姿が有り、逃がさないとばかりに男の後ろからしがみついている。
父親と使用人達に気付いたフィオナは、所々穴の空いたミイラの姿を徐々に人の姿へと戻しながらも喋っている。
「お父様、彼ったら酷いのよ。私と言う妻が居るのに浮気をしたの。絶対に許さないわ。絶対に、逃がさないんだから……」
「お前……その姿は……」
蒼白になりながらも父親が口を開く。
「今頃気付いたの?お姉様が仰っていたじゃない。私は生きてないって。何でお姉様に見破られたのかは未だに分かんないけど。でも安心して?私に嫌悪感を抱かせたお姉様はもう居ないし、お姉様が出て行ってから、前よりももっと力を使いやすくなったの。私はいつまでもこうして居られるのよ。永遠に、若いままで居られるわ。不思議な事にね。だから、誰も決して逃がさないから。死んだって、解放なんか、してあげないんだから。逃げた所で無駄よ。だって皆、長い時間を掛けて、私の魔力が身体に浸透してるから。意識を失えば、死体と同じ。私の思うままに動かせるもの。ああ、彼は別よ?だって、死んだ後の私と散々抱き合ったのだもの。生きたままでも私の思い通りに身体を支配出来るわ」
リリシアーナの元婚約者だった男は、今更ながらに気付く。
リリシアーナは事実を述べていたのだと。
そして自分は死人と結婚し、何度も死体と交わり、挙げ句、支配されていたのだと。
「もう二度と浮気しないように、この屋敷から出さないであげるわ。大丈夫よ。社交はお父様に任せれば良いのだから。貴方は永遠に、ここで私と睦み合えば良いのよ」
男はあまりのおぞましさに、絶叫を上げて気絶した。
だが、気絶した所で状況が変わる筈も無い。
「意識が有ろうと無かろうと、死んだ所で貴方は永遠に私のモノよ、旦那様。貴方が愛して良いのは、抱いて良いのは、妻の私だけなんだから」
フィオナは気絶した夫を抱き寄せ、仄暗い笑顔で嗤った。
フィオナは病弱だからと家からは出ない。
当然社交の場にも。
それを良い事に、男は数年経ったある日、夜会でフィオナ以外の女を抱いた。
フィオナは若く可愛らしいが、家からは出ない為、着飾る事は無いので華やかさに欠ける。
社交場の女性と比べれば、話題も乏しく教養も少ない。
身体が弱い為、着飾られて家から連れ出し、見せびらかす事も出来ない。
何せ結婚式を挙げようと、下見に教会へと連れ出しただけで倒れ、医者からは安静にと言われた程だ。
その頃は同情や庇護欲を強く感じていたが、今はそれ程強く感じない。
要は飽きたのだ。
だからたまには、他の女性も味わってみたいと手を出した。
帰宅後、フィオナに女の匂いを指摘されるも、ダンスをしたからだろうと誤魔化すが、フィオナの怒りは収まらない。
フィオナは気付いていたのだ。夫となった男の嘘を。浮気を。
何故なら、男に纏わせていたフィオナの魔力に、変化があったのだから。
そして、フィオナの激しい怒りで、フィオナ自身に掛かっていた幻覚魔法が解けた。
そこに居るフィオナは生身の人間では無く、身体の半分は腐り、ミイラ化した死体で、顔は骨や腐った肉が露出している状態だ。
片目はぽっかりと穴が空いているが、魔力が巡っている所為か、青白い炎が眼孔に浮かび、視線も感じる上、もう片方の目は辛うじて残っているが、濁っていて、生気は感じられないのに動いている。
当然男は彼女の姿に驚き、大きな声で悲鳴を上げるも、身体が縛られているかのように、急に身動きが出来ず、部屋からは逃げられない。
男のあまりの大きな悲鳴に何事かと、父親と家の使用人達がその場に駆け込むと、そこにはミイラ化した娘の姿が有り、逃がさないとばかりに男の後ろからしがみついている。
父親と使用人達に気付いたフィオナは、所々穴の空いたミイラの姿を徐々に人の姿へと戻しながらも喋っている。
「お父様、彼ったら酷いのよ。私と言う妻が居るのに浮気をしたの。絶対に許さないわ。絶対に、逃がさないんだから……」
「お前……その姿は……」
蒼白になりながらも父親が口を開く。
「今頃気付いたの?お姉様が仰っていたじゃない。私は生きてないって。何でお姉様に見破られたのかは未だに分かんないけど。でも安心して?私に嫌悪感を抱かせたお姉様はもう居ないし、お姉様が出て行ってから、前よりももっと力を使いやすくなったの。私はいつまでもこうして居られるのよ。永遠に、若いままで居られるわ。不思議な事にね。だから、誰も決して逃がさないから。死んだって、解放なんか、してあげないんだから。逃げた所で無駄よ。だって皆、長い時間を掛けて、私の魔力が身体に浸透してるから。意識を失えば、死体と同じ。私の思うままに動かせるもの。ああ、彼は別よ?だって、死んだ後の私と散々抱き合ったのだもの。生きたままでも私の思い通りに身体を支配出来るわ」
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リリシアーナは事実を述べていたのだと。
そして自分は死人と結婚し、何度も死体と交わり、挙げ句、支配されていたのだと。
「もう二度と浮気しないように、この屋敷から出さないであげるわ。大丈夫よ。社交はお父様に任せれば良いのだから。貴方は永遠に、ここで私と睦み合えば良いのよ」
男はあまりのおぞましさに、絶叫を上げて気絶した。
だが、気絶した所で状況が変わる筈も無い。
「意識が有ろうと無かろうと、死んだ所で貴方は永遠に私のモノよ、旦那様。貴方が愛して良いのは、抱いて良いのは、妻の私だけなんだから」
フィオナは気絶した夫を抱き寄せ、仄暗い笑顔で嗤った。
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