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後日談
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「とても興味深い話だが、前王妃にレオンの相手を決める決定権は無い。それに、そんな話は前王妃から聞いた事は一度も無いのだが?お前達が候補者になったと言う証拠はどこに有る?」
国王、アレクシスの冷ややかな声が、その場に響く。
「はっ、ハンナ様が仰っておられました!」
「わたくしも、ハンナ様のお茶会で、婚約者候補にしてあげると言われましたわ!」
「その時、レオン様ともお会いしております!」
「王族のハンナ様からの打診なのです!ハンナ様にお聞きした下さいませ!それで事実が分かりますわ!」
令嬢達の返答に、アレクシスは冷ややかな視線を向けたまま、先程と変わりの無い声で言う。
「前王妃はここには居ない。私は証拠は有るのかと聞いているんだ。私の言う証拠とは、前王妃の署名入りの書面や書類は有るのかと言う事だ。言葉だけではどうとでも言える。本人が居ないのであれば尚更の事だ」
「陛下、私にも発言の許可を下さい」
レオンがエリオールをエスコートしたまま、アレクシス同様の冷ややかな声を上げる。
「ああ、良いぞ」
アレクシスの許可に、レオンは令嬢達に視線を向けるが、その視線は嫌悪感が含まれているのに対し、令嬢達はレオンが助けてくれると思っているのか、その表情は明るい。
「私は勝手に付き纏われていただけで、彼女達を婚約者候補だとは少しも思っていません。婚約者候補を名乗られる事自体が迷惑です。そもそも自身の領地の方角や、領地の特産も知らない令嬢が、王太子妃に相応しいとは思えませんし、中身の無い会話しか出来ない相手に、候補者を名乗る資格は無いと思います。それに、私自身、我が身が可愛いだけの、話の合わない令嬢達と婚約するのは苦痛です。好みでも無いのに、纏わり付いて来られるこちらの身にもなって欲しいです」
「ほう。自身の領地の方角や、特産すら知らないとはな。余程領民に興味が無いと見える。王侯貴族は国民の税で生活していると言うのに。王太子妃候補所か、貴族としても不要ではないか?」
レオンとアレクシスの言葉に、顔色を蒼白に変える令嬢達。
「えっ、ちょっ、待って下さい!どうしてそんな話にっ?!」
「そんな!!だってハンナ様はっっ!!」
「そんな……そんな……」
「ハンナ様……ハンナ様はどこに?!」
「前王妃は心の病を患い療養中だ。医師の見立てでは、もう社交に戻れる状態では無いらしい。話を戻そう。我が息子レオンの、王太子の婚約者候補になったと言う証拠はどこだ。王太子の婚約に関わる事となれば、王家の正式な書面が必要だが、それはどこに有る?」
当然王家からは、そんな書面は出していない。
有るのはエリオールとの書類のみだ。
だからこそ、令嬢達は黙るしか無い。
「この令嬢達の親に言っておく。何があろうと貴殿の娘達に王太子妃の候補に挙がる事は絶対に無い。娘達を教育し直し、貴族として相応しい娘に育て直せ。期限は娘が十八になるまでだ。出来なければ、貴族社会から追放をしろ。国民の血税を貪るだけの、責務を放棄する貴族等要らん。国民有っての国で有り、平民有っての貴族だ。民の居ない国は、国とすら呼べない事を忘れるな」
「「「「御意……」」」」
アレクシスの指示により、令嬢達の親は、娘を制止する事をアレクシスの近衛騎士達によって止められていた。
親達……特に当主となる父親は、娘の馬鹿さ加減に頭痛と胃痛を併発し、青ざめた顔で頭を下げて、娘と妻を連れて、その場を下がる許可を願い、会場を後にした。
国王、アレクシスの冷ややかな声が、その場に響く。
「はっ、ハンナ様が仰っておられました!」
「わたくしも、ハンナ様のお茶会で、婚約者候補にしてあげると言われましたわ!」
「その時、レオン様ともお会いしております!」
「王族のハンナ様からの打診なのです!ハンナ様にお聞きした下さいませ!それで事実が分かりますわ!」
令嬢達の返答に、アレクシスは冷ややかな視線を向けたまま、先程と変わりの無い声で言う。
「前王妃はここには居ない。私は証拠は有るのかと聞いているんだ。私の言う証拠とは、前王妃の署名入りの書面や書類は有るのかと言う事だ。言葉だけではどうとでも言える。本人が居ないのであれば尚更の事だ」
「陛下、私にも発言の許可を下さい」
レオンがエリオールをエスコートしたまま、アレクシス同様の冷ややかな声を上げる。
「ああ、良いぞ」
アレクシスの許可に、レオンは令嬢達に視線を向けるが、その視線は嫌悪感が含まれているのに対し、令嬢達はレオンが助けてくれると思っているのか、その表情は明るい。
「私は勝手に付き纏われていただけで、彼女達を婚約者候補だとは少しも思っていません。婚約者候補を名乗られる事自体が迷惑です。そもそも自身の領地の方角や、領地の特産も知らない令嬢が、王太子妃に相応しいとは思えませんし、中身の無い会話しか出来ない相手に、候補者を名乗る資格は無いと思います。それに、私自身、我が身が可愛いだけの、話の合わない令嬢達と婚約するのは苦痛です。好みでも無いのに、纏わり付いて来られるこちらの身にもなって欲しいです」
「ほう。自身の領地の方角や、特産すら知らないとはな。余程領民に興味が無いと見える。王侯貴族は国民の税で生活していると言うのに。王太子妃候補所か、貴族としても不要ではないか?」
レオンとアレクシスの言葉に、顔色を蒼白に変える令嬢達。
「えっ、ちょっ、待って下さい!どうしてそんな話にっ?!」
「そんな!!だってハンナ様はっっ!!」
「そんな……そんな……」
「ハンナ様……ハンナ様はどこに?!」
「前王妃は心の病を患い療養中だ。医師の見立てでは、もう社交に戻れる状態では無いらしい。話を戻そう。我が息子レオンの、王太子の婚約者候補になったと言う証拠はどこだ。王太子の婚約に関わる事となれば、王家の正式な書面が必要だが、それはどこに有る?」
当然王家からは、そんな書面は出していない。
有るのはエリオールとの書類のみだ。
だからこそ、令嬢達は黙るしか無い。
「この令嬢達の親に言っておく。何があろうと貴殿の娘達に王太子妃の候補に挙がる事は絶対に無い。娘達を教育し直し、貴族として相応しい娘に育て直せ。期限は娘が十八になるまでだ。出来なければ、貴族社会から追放をしろ。国民の血税を貪るだけの、責務を放棄する貴族等要らん。国民有っての国で有り、平民有っての貴族だ。民の居ない国は、国とすら呼べない事を忘れるな」
「「「「御意……」」」」
アレクシスの指示により、令嬢達の親は、娘を制止する事をアレクシスの近衛騎士達によって止められていた。
親達……特に当主となる父親は、娘の馬鹿さ加減に頭痛と胃痛を併発し、青ざめた顔で頭を下げて、娘と妻を連れて、その場を下がる許可を願い、会場を後にした。
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