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後日談

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「後悔なんてしない。飽きるだなんて、とんでもない。寧ろ、アーシュを知る度に、心は強く惹かれるし、ああやってアーシュが私だけの者だと示さない方が、絶対に後悔する。あの男はアーシュを女として見ていなかったかも知れないけれど、私は違う。アーシュを存分に味わいたいし、私と言う男の想いをその身に嫌と言う程教え込みたいと心底思っているよ。けれど、アーシュは婚前交渉を好まないだろうから、我慢しているだけだ。アーシュが望むなら、いつだって大歓迎だよ」


 ニッコリと微笑む、色気駄々漏れなジーンの発言を前に、アシュリーは全身を真っ赤に染めるしかない。

(ううううっ、嬉しいですが、とても恥ずかしいですっ!!たたたたっ、確かにわたくし、婚前交渉は好みませんが、がっ、我慢させているとは思っていませんでした!)


「まぁだからと言って、無理強いする気は無いよ。今年中に式を挙げるつもりだし、それまでに覚悟をしてくれれば良いだけだから。その代わり、婚姻後は我慢なんてしないし、もっと深くのめり込むだろうから、そんな事は言えなくなると思うけどね?」

「かっ……格好良すぎですわジーン様。そもそもわたくし、ジーン様と前の婚約者とでは、比べ物にならない程ジーン様の方が好きですし、あんなのと一緒になんて出来ません。ジーン様はこれまで、わたくしの為にと色々として下さいました。その……婚前交渉は好みませんが、すっ、少しずつなら進んでいきたい、です……」


 全身真っ赤なままで、ジーンが贈ったジーンの瞳と同じ色の宝石が付いた首飾りを右手でギュッと握り締め、必死に何とか言葉を紡ぐアシュリーの姿が可愛くない訳が無い。

 きっと、自制心の強いジーン以外の男がアシュリーのこの姿を見れば、押し倒していたに違いない程の可愛さだ。

 まぁ、ジーンが他の男とアシュリーを二人切りには絶対にさせないだろうが。

(本当、無自覚って怖いな。自制心を試されてる気分になるよ。でも、だからこそ、この先が楽しみになる。こんなアーシュを詰まらないだなんて、よく言えたものだ。アーシュで詰まらないなら、他の女なんてもっと詰まらないだろうに。煽られ続けるこちらの身にもなって欲しい所だけど、まぁそれも、婚約期間の今だからと割り切って楽しもう。どうせエヴァンス家の鉄壁を破れる者なんて居やしないし、逃げ出す事も不可能なんだから)


「大丈夫。二人の事だから、アーシュのペースに合わせて、少しずつ進んで行くよ」


 ジーンはアシュリーの手を取り口付けを落とすと、丁度エヴァンス邸へと到着し、そのまま家の中へとエスコートする。

 お披露目も済んだ事だし、アシュリーとの幸せな結婚生活を過ごす為にも、現時点でアシュリーの害になりそうな連中がどのように動くか、動き出した場合はどのように嵌めるか、そしてどんな制裁を下すかを、ジーンはアシュリーが寝静まった頃に、エヴァンス家の使用人達と、とことん話し合うのだった。
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