氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
474 / 805
後日談

7

しおりを挟む
「ライちゃんがどこまで使えるのか、ちゃんと見てみたいのと、最低限の護身術は覚えて貰うわよ?店内で剣を振り回す事は難しいし、相手は一応ここのお客だからねぇ。ただしライちゃんに言い寄って来よう物なら、容赦なく断って良いし、手を出して来ようとしたら、腕を捻り上げても良いからぁ♪と言っても、当分お仕事はあたしと一緒だから、心配いらないわよぉ。まぁ、営業時間と外出中だと、あたしは男の振りして、このお店に来る前の喋り方になっちゃうけど、そこはライちゃんに慣れて貰うしかないわねぇ」


 マッドはライラに仕事内容や時間帯を簡単に説明し、娼婦の女性達にも許可を貰って、自分達が使う部屋や彼女達の部屋、浴室等、館内を案内し、元いた店の待合室のような部屋へ戻る。


「で?ライちゃんはここで働けそう?それとも違う所で働く?あたしとしてはここで彼女達を守る仕事の方が良いと思うんだけど、嫌なら他の所に連れてったげる。ただそうなると、飲食店とかの店員だったり、外見で判断されちゃうから、ここよりも身体を触って来ようとする連中も出てくるだろうし、あたしも近くにいられないから、安全とは言えないのよねぇ。まぁ、ちゃんとあたしの紹介だって言って貰うから、あたしを知ってる奴等は手は出して来ないだろうけど、余所者とかだと関係無く来るから、あたしとしてはここで働く方が、良いと思うんだけど……。ライちゃん、貴方はどうしたい?」


 マッドの問いにライラは少し驚く。

(本当に、ボクの身を案じてくれてるんだな。それに選択肢をちゃんとボクに選ばせてくれてる……。普通はここまで面倒を見てくれないだろうけど、この人はちゃんとボクの心も考慮した上で……)

 そう思うと、ライラの胸は嬉しさで一杯になる。

 あの幼馴染みなんて、結局はライラの心を無視し、考慮すらしていなかった。男と扱う振りをして、結局は女と扱うつもりだったのに、マッドの場合は自分と同じ仲間として、ライラを扱ってくれているようだ。

 同じ仲間、と自分で思った事に対して、ライラは心の内が、少しモヤモヤするのを自分でも不思議に思いながらも、マッドに返答する。


「ボクも、ここで働かせて下さい。これから宜しくお願いします」


 ライラは綺麗なお辞儀をして、マッドはホッとする。


「じゃあ、早速簡単な護身術だけ教えとくわねぇ♪あたしの幼馴染みが、女の子達に教えてる技でも有るんだけど、これは力をあまり使わないから、男でも体力温存になるから、とっても使えるのよぅ♪女子供でも使える物なんて、男の使う技じゃないなんて思う男もいるみたいだけど、使える物を使わないなんて、馬鹿のする事よぉ。あたしだって使ってるし、その幼馴染みだって……ああ、その人は男でダンって言うの。そのダンちゃんだって、よく使ってるわよぉ♪」


 楽しそうに話すマッドに、ライラの胸はモヤモヤが先程よりも大きく燻った。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...