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本編

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「「「兎に角我々は、エヴァンス嬢に悪意は有りませんっ!!」」」


 異口同音で告げる近衛達。

 アレクシスも、彼等の口からリラの悪口を聞いた事は無いと言うので、近衛の三人にはリラの菓子を渡す事にした。


「「「有難う御座います!!」」」


 そして、いそいそと小袋を開け、その中の一つを口に運ぶ。


「……うっまぁっっ!!」

「これは、確かに!」

「~~~っっ!!」

「しかし、令嬢でこれ程美味い菓子を作れるなんて、珍しいな」


 アレクシスの言葉に、エドワルドは笑顔で答える。


「私もそう思っていましたが、リラ嬢はデビュー前から、一人で作れるようになっていたそうですよ。私がどうやって作るのか見てみたいと思わず言ってしまったら、それなら、何かお好きな物を作りましょうかと、手際よく目の前で作って頂きましたよ。出来立ては格別でした」


 まさかの一人で作った物なのかと、兵士達が驚き、美しい令嬢の手作り、そして美味い物と知れて、欲しがらない訳が無い。


「あの……公爵……」

「そのリラ嬢が、他国に赴く私だけでなく、兵士達にもと数日掛けて焼いてくれたと言うのに、まさか、兵士達がリラ嬢の悪口を言い合っていた場面に出会すとはな」


 エドワルドが兵士達に冷たい一瞥を向ける。

 その視線に、リラの悪口を言った覚えのある者達が縮こまる。


「そもそも何故あれ程の悪評があるのかと思う令嬢ですよね。口調はキツいですけど、言ってる事は正論ですから」

「どうせ相手にされなかった男達の恨みや、女性の僻みも入っているのだろう。あれ程の美しい令嬢だ。やっかまれても仕方ないさ」


 まさか、コミュ障の上、男を寄せ付けない為に、エヴァンス家自体が流した噂もあったとは、誰も思っていないだろう。


「そもそも、王宮に勤める者が、噂をそのまま信じる等有り得ない。貴族間でも足を引っ張る為に、嘘の噂を流したりするのはよくある事だ。本当かどうかの裏をきちんと取ってから、真偽を見定めろ。でないと、冤罪や謀叛に荷担する羽目になるぞ」


 エドワルドの言葉に、内心大袈裟なと思う兵士もいたが、アレクシスはエドワルドに同調する。


「昔は、エドワルドが私の地位を狙っている等の謀叛の噂も出ていたからな。しかもその嘘を流したのは私達の母親である前王妃で、それを真に受けた馬鹿貴族達は、エドワルドを打ち倒そう等と馬鹿な事を言い出したから、私がエドワルドと皆の前で、エドワルドにならば、王位を譲っても良いぞと言ったら、エドワルドに要りませんよそんな物、と言い切られてしまったぞ。まぁ、私はエドワルドが王位に全く興味が無い事を知っていたし、謀叛を企みそうな貴族の目星も付いたからな」


 兵士達は、まさか、王妃である母親が、謀叛の疑いを子供に掛けるなんて?!と、思わずエドワルドや近衛達を見るが、エドワルドも近衛達も、ああ有ったなそんな事、と言った顔をしていた。
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