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本編

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 エドワルドは最初の休憩の時に、大きな袋を開け、小袋を二つ取り出し、一つをアレクシスに手渡す。

 そして、その内の一つを開けて早速口に運ぶ。


「ああ、やはり美味いな。男が多いだろうからと、甘さを控えているのかも知れないが、これはこれで美味い」


 周りの兵士達は半信半疑だ。何せ令嬢の作った物、しかも食べてる相手はその婚約者。本当かどうかも分からない。


「美味いな、これ……。前に、王都の有名店の物を献上品として貰い、アナが食べさせてくれたが、私はこれの方が好みだ」


 アレクシスの言葉に、周囲がざわめく。

 美女の手作り、しかも美味い。普通、片方だけならよく聴く事だ。特に、貴族の女性で菓子作りが上手い、と言われる令嬢でも、平民から見れば、あれは作ってるとは言わないよな、と言うレベルだったり、作ってはいるが味は最悪だったりと言う令嬢が多いのだ。

 店レベルに美味い、と言う事は、料理人が作ってる横で見ていて、出来上がりに何かを飾り付けたかその程度、だとは思うが、王都の有名店と同等と言われて気にならない訳が無い。

 兵士と一緒に来ていたアレクシスの近衛三人が、事情を知り、兵士達を睨み付ける。

 近衛達は、先程のエドワルドとアレクシスのやり取りの際、最終手続きや開門の手続き等で、少し離れた場所にいた為、話し声までは聴こえていなかったのだ。


「「「お前達の所為で私達まで……!!」」」

「エドワルド、近衛の三人には分けてやってくれないか?彼等は私と共にいたし、エヴァンス侯爵令嬢には好意的なのだ。勿論、恋愛感情では無いからな?前の王宮主催の夜会の時の立ち回りや、極稀にだが、ジーン殿への届け物だと王宮に来る事が有ったのだが、他の令嬢とは、明らかに違っていたかららしいぞ」


 アレクシスの言葉で、三人は持論を喋り出した。


「そうですよ!あの夜会なんて、公爵に面識が無いからと、顔見知り程度でエヴァンス嬢に紹介しろとか言い出した挙げ句、自分より高位の令嬢に対して、暴言を吐いていただけじゃないですか。しかも馴れ馴れしく名前呼びで!!そんな男に立ち向かうなんて格好良いじゃないですか!」

「令嬢があの男と接触したのは、同期デビューの時だけだと伺いましたが、それであれ程馴れ馴れしければ、ウザったいと思うのも当然ですよ。令嬢に初対面だと言う男の姉も、初対面の令嬢に対し、名前呼びをしていましたから。しかも自分達は名乗らずに。相手に礼儀知らずと言うのは当然です」

「元々エヴァンス侯爵令嬢は、シーズンオフの忙しい時期にですが、極稀に、ジーン殿に着替えや、食べ易い食事を届けに来る事があったんですよ。機嫌が悪いと言うか、いつも見掛けるお顔ですし、話し方も少しキツい令嬢ですが、それでも態々家族だからと、自身で足を運ばれる方です。普通はいませんよ、仲の悪い兄弟に届け物をするなんて。それにいらした時はいつも、態々私達にも声を掛けて下さいました。なので、本当は噂と違い、心の優しい令嬢なのだと思っていました」


 本当は物凄く仲の良い兄妹なのだが、そこはまだ、黙っていた方が良いだろう。

 バラすのなら結婚後だと、エドワルドは口にしなかった。
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