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本編

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「リラ、会いたかった!よく顔を見せて欲しい」

「いらっしゃいませ、エドワルド様。あの……どうかなさったのですか?」


 エドワルドはエヴァンス家に辿り着くと、出て来たリラを、直ぐに抱き締める。


「物覚えの悪い貴族や、物忘れの酷い老人が多くて困る。リラは私の唯一の癒しだ」


 愛人だのと言い出すご都合主義の連中を思い出し、エドワルドの胸に、どす黒い感情が過る。

(あいつ等、どうしてくれよう……)


「???わたくしがエドワルド様の癒しになるのなら、嬉しいですよ?」


 キョトンと首を傾げつつも、笑顔でエドワルドを見返すリラが、愛しくてならない。


「リラ、キスして良い?」


 リラの耳元で甘く囁けば、リラは顔を赤く染め、周りを見回し、使用人達が然り気無く視線を外してくれているのに気付き、上目遣いをしながら小声で囁き返してくる。


「ひっ……人前ですから、少しだけですよ……?」


 そう囁いた後に、瞳を閉じるリラ。

 その可愛さに、エドワルドの機嫌が底辺から浮上する。

(可愛過ぎる、可愛過ぎる、可愛過ぎる、可愛過ぎる!!)

 唇を重ねて、ただ押し当てるだけのキスをする。


「……続きは二人切りの時に」


 リラを再度抱き締め、サロンに向かう。


「リラは最近何をしているの?」

「わたくしの方は、概ねいつも通りです。本を読んだり、刺繍を刺したり……。マッド達のドレスは作り終えましたが、夜に侍女達とマッド達を交えて女子会を開いていますわ。兄様の居ない夜は、警備態勢を強化するので出来ませんが、食後二~三時間程経ってから、焼きたてのお菓子を持って、参加しています♪この前はレベッカのお化粧講座に人気が集まり、また開催するそうです」

「女子会……」

「わたくし、王都に親しい女性の友人等一人として居ませんので、マッド達が来てくれて、とっても楽しいです♪兄様が望んだ女性なら兎も角、兄様狙いの女性と仲良く出来る自信は有りませんもの。兄様の中身が好きだと仰るなら未だしも、エヴァンス家の地位やお金、連れ歩くのに見た目が良いからなんて答える女性に、わたくしの大切な兄様を渡したく有りませんわ!」


 過去に何かしら有ったのだろう、リラは笑顔から一転、膨れっ面を見せている。

(家族想いのリラも可愛い!それに、貴族の女性達との交流は、リラが汚されそうだからあまりお勧めしたくない。となると、結婚後も、マッド達にクルルフォーン家にも来て貰った方がまだ良いだろうな)

 いつかはジーンも結婚するだろうが、リラとしては大切な兄を、ちゃんと想ってくれる女性が義姉になって欲しいと思った。
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