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第三章

9   野外レッスン

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 朝、朝食を食べているとお祖父様が、治療の助手を終えたら、運動場に来なさいとおっしゃった。


「はい。運動場で何をするのですか?」

「攻撃魔法を教えてやろう」

「新しい魔術ですね。楽しみにしています」


 フラウムは母が行っている皮膚を柔らかくする魔法を母から伝授された。

 実際に、母の手に魔法をあてて、合格をもらった。

 ナターシャとテリの治療に参加させてもらっている。

 魔術同士が混ざった方が、いい効果がでると説得されて、二人とも受け入れてくれた。

 実際に、酷い怪我などは、数人の魔術師が治療を行うことも多くあるらしい。

 フラウムは皮膚を柔らかくする魔法をマスターした。

 母曰く、フラウムの魔力は柔らかく温かいらしい。

 火傷の傷跡には適しているでしょうと言ってもらえた。

 今日も二人の傷跡を柔らかくした。

 最初があまりにも酷かったので、今の状態がよく見えるけれど、怪我をする前の方が美しかったのは、仕方がないのだろうか?

 鏡の術で、左右対称の顔立ちになった二人だが、まだ、皮膚が引き攣っている。

 普通の傷より、火傷の傷は治りが悪いのだと知った。

 まだ、二人は自分の顔を見ていない。

 もっとよくなるまで、見ない方がいいと思う。


「フラウム、この間、氷の塊を作っていましたね?」

「はい、あまりファベルが我が儘を言うので、氷の塊をあてさせていました」

「他に何が作れますか?」

「火を熾せます。暖炉の火を熾していました」

「他には?」

「湯でしょうか?お風呂の湯を温めていました。湯加減の調節はバッチリです」

「雨は降らせることはできますか?」

「はい、盗賊をやっつけているときに、雷を落としすぎて、林を火事にしてしまいました。それを消火させるために雨を降らせました」


 母は、笑っている。


「今日は思いっきりやっていらっしゃい」

「はい」


 学校で母と別れて、フラウムは運動場に向かった。

 運動場には祖父と最上級生がいた。


「おお、来たか」

「遅くなりました」


 初見の最上級生にもお辞儀をする。


「今、風魔法で、物を巻き上げる魔術を行っている。

「あ、はい」

「そこにある荷物を巻き上げなさい」

「巻き上げるだけですか?攻撃はしないのですか?」

「攻撃をしたいのか?してみてくれ」

「はい」


 荷物は人体に模した人形のようだ。

 最上級者は、場所を空けてくれた。

 フラウムは、ブレスレットに触れると魔力を練って、風魔法で人形を巻き上げ、火魔法で攻撃して、最後に雷を落として仕留めて、飛ばした。


「これこれ、取りに行くのが大変だろう」

「すぐ持ってきます」


 祖父が歩いて行こうとしたので、フラウムは、またブレスレットに触れて、飛ばした人形を転移させた。

 ゴロンと焼け焦げた人形が転がっている。それが燃え上がって、急いで局所的に雨を降らせた。人形は消火された。


「おお、すごいではないか」


 最上級生が人形をのぞき込んで、フラウムの顔を見た。


「では、次は雹を降らせろ」

「寒いですよ」

「局所でいい」

「はい」


 祖父の前だけに、雹を降らせる。


「もうよろしい」

「はい」

「フラウムはひょっとして、実践をしたことがあるな?」

「はい、この間の解剖にやってきた者達と戦いました」

「そうか、わしには教えることはなさそうだ」

「そんな、何か教えてください。あ、そうだ、剣術はしたことがありません」

「剣術は、ここでは教えておらん」

「そうですか、残念です」

「フラウム、少し、見ていろ」

「はい」


 お祖父様は、最上級生に、風魔法と火魔法を教えている。

 初歩的な風魔法は、人形をめがけて巻き上げようとしているし、火魔法は火球を作り人形にぶつけるようだ。

 どうやら、魔法で暮らしていた生活が役に立っているようだ。

 暖炉の火は魔法で熾し、川に水がない次期は雨を降らせて飲み水を作っていた。

 生きるって大変だったものね。修行は無駄ではなかったようだ。

 パン作りが未練よね。やはりパン作りは生きていく中で重要だったわ。

「フラウム、今日は帰っていいぞ」

「はい、ありがとうございます」


 丁寧にお辞儀をして、フラウムは図書館に寄った。

 古代魔法の本を探した。


「探索、古代魔法」


 大量の本を一冊ずつ探すのは大変なので、魔術を使った。

 目の前に、矢印が視える。それを追っていくと、図書室の真っ暗な地下室に続いている。


(地下にあったから、誰も見つけられなかったのね?)


 行っていいものか、迷いながらも階段を降りていった。矢印は一つの扉を指していた。その扉を開けると、暗闇だった。けれど、矢印が、本の在処を教えてくれていた。

 暗い部屋に入って手を伸ばし、本を取ると、矢印は消えた。

 急いで地下室から一階に上がる。

 本は黒い表紙に金の文字で『古代魔法』と書かれていた。

 作者など、何も書かれていない。

 フラウムは貸し出し用の書類に書き込みをして、箱の中に入れて置いた。

 自宅に戻ると、お祖母様がお茶会を開いていた。


「フラウム、いいところに来たわね。着替えていらっしゃい」

「お邪魔したら悪いですわ」

「いらっしゃいな」とお客様が言うので、「着替えてきます」と言って、フラウムは部屋に戻り、本を机に置くと、お化粧をしてドレスに着替えて、お茶会に出た。


 お茶会は皇妃様としていたわね。

 お祖母様が美味しそうなケーキをお皿に取ってくれた。

 果物で飾られたケーキは、ふんわりとしたスポンジのケーキに飾られていて、綺麗で、美味しかった。

 紅茶を一杯飲んで、少しだけ雑談に付き合った。


「では、お祖母様、宿題がありますので、失礼致します」

「あら、残念ね」


 丁寧にお辞儀をして、その場を辞した。


(お祖母様の顔は立てたわよね?)


 素早く部屋に戻って、着替えると、メイクを落とし、先にお風呂に入って、それから、ゆっくりと本を読む。


(これは、召喚魔法かしら?)


 本を読みながら、ノートを出して、用途と呪文を書いていく。


 今日の授業は、ほとんど一日休みなので、昼休憩以外ずっと本を読んで、呪文を書いていた。
 
 試しに呪文を唱えると、白い猫が出てきた。

「あら、可愛いわね」


 頭に名前が浮かび上がってくる。

「貴方の名前は、ミーシャね」


 猫はニャーと鳴いた。

 でも、本には凶暴な虎と書いてある。
 
 不思議に思いながらも、猫がすり寄ってくるので、まあ、いいかと次の呪文を書き写していった。


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