幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

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 ノートパソコンは新しく注文したが、特別仕様なので直ぐには届かない。仕方なく篤志が使ってないノートパソコンを貸してくれた。

 わんこを二体作りながら、実家の会社の経理をする。

 お給料は銀行振り込みなので、タイムカードの確認に一度、実家に戻らなくてはならない。

 土曜は会社は休みなので、土日で帰ることになった。

 実家に戻って、タイムカードを確認すると、ノートパソコンに記入する。

 小野田さんに、わんこのボディーが作れるか相談した。

 以前に、そういう仕事があったそうで、作れると言われた。

 大きさと形と重さを会社の工場のパソコンに記入して、完全な設計図を入れておく。

 今回はお試しなので、色はブラックとメタリックブルー、レッドの三色の塗装をお願いした。

 三体のボディーを作るのに、二週間の時間がかかるというので、それでお願いした。
これが成功すれば、この工場の収益も増える。

 俺が仕事をしている間は、篤志は実家に戻って叔母さんに菜都美の姿を見せに行っている。

 篤志が見てくれるので、俺もゆっくりと小野田さんと打ち合わせができる。

 以前作ったボディーを見せてもらったが、なかなかいい仕上がりになっている。

 お願いしますと皆にお願いして、困っていることはないか尋ねるが、今の所、仕事も順調に入ってきて、困っていることはないそうだ。

 怪我だけは気をつけてくださいと伝えて、俺はそのままタイムカードの記録から、今月の給料を出してパソコンに記入していく。

 それを終えると、もう夕方になっていた。

 社員も帰っていく。

 俺も仕事が終わったので、戸締まりをして、篤志の家に訪ねていった。


「こんばんは」


 声を掛けるが、家の中は篤志と叔母さんと叔父さんの話し声が聞こえる。

 俺の声は聞こえないようだ。

 菜都美は寝ているのか、静かだ。

 俺は玄関の中に入って聞き耳を立てる。

 なんだかいつもと雰囲気が違う。

 叔母さんの声は、いつもより大きい。

 今、入ってはいけない雰囲気がする。


「俺の選んだ道に、親だからと口出しして欲しくない」


 篤志の声も普段より低い。

 まるで喧嘩をしているようで、俺はここにいてはいけないような気がしてきた。


「大塚電気株式会社の社長が訪ねてきた。なんの相談もなく会社を辞めたそうだな。社長のお嬢さんと結婚の約束も
していたというじゃないか?」

「約束はしていない。無理矢理、毎日、深夜まで連れ出されて、迷惑だった。深夜だけじゃない。早朝に一緒に朝食
を食べることを強制されていたんだ。毎日パワハラを受けていても我慢しろと言うのか?」

「社長は篤志を社長の後継者にするつもりだったと言っていた。お嬢さんも篤志の事を『愛しています』と言っていたよ。『どんなに尽くしても愛が届かないのはとても辛いことです』と涙を流していた。それほど愛されていたのに、パワハラだというのか?」

「俺が迷惑で嫌がっているのに、強要されるのをパワハラと言うんだよ。俺の気持ちは消して、相手の言うことに従うことで、愛が芽生えると思うのか?」

「社長になれるのなら、それくらい我慢したらいいじゃないか?」


 篤志の溜息が聞こえる。


「父さんは、息子が社長になったと自慢したいだけだろう。迷惑だ。俺はあのお嬢さんも好きでもない」

「一緒に過ごすうちに好きになってくるだろう?」と叔父さんは声を上げた。

「俺はもう次の職場で働いているんだ。俺の人生に口出ししないでくれるか」

「大学まで出してやったのは、父さんだ。口出す権利はある」

「大学卒業までの金額を返したら、なんの文句はないのだな?母さん、振り込むから通帳の番号教えて」

「金を返せとは言っていない」

「じゃ、俺の生き方に文句を言うな。俺は真と結婚したから」

「男同士で、何を考えているんだ?」

「俺は真を愛している。もう学生の頃から付き合っている」

「母さんが、変な本を読んでいるから、影響されたんだ。全部捨てなさい」

「篤志、本気なの?」


 叔母さんは泣き出しそうな声を出した。


「言っておくけど、本に影響されたわけじゃないから、好きになったのが真だったってこと」「イケメンに産んだのに、孫もだけないの?」と叔母さんは言った。

「菜都美を連れて来ているだろう」

「血の繋がりがない子じゃないか」と叔父さんの大きな声がした。


 驚いたのか、菜都美が大きな声で泣き出した。


「んぱんぱんぱんぱ、うぇーん、んぱんぱんぱんぱ」


 菜都美が俺を探している。

 俺は菜都美を取り戻す為に、「お邪魔します」と大きな声を出して、篤志の家の中に入った。


「真、いつから来ていたんだ?」

「菜都美は連れて帰りますから、ご迷惑を掛けました」


 俺は菜都美の荷物をマザーバッグに詰めると、鞄を持ち、泣いている菜都美を抱き上げた。


「真、家まで送る」

「話の途中だろう。俺の事はいいから話し合いをした方がいい」


 そう言って、俺は菜都美を抱いて、玄関を出て行く。

 篤志はすぐに追いかけて、菜都美の鞄を持ってくれる。


「社長が実家に来たみたいだ。迷惑な話だ」

「社長のこと以外にも、やっぱりカミングアウトしてから結婚の申し込みした方がよかったんじゃないか?今夜は戻って来なくてもいいから、家族でいろよ」

「真」

「親孝行は生きているときしかできないんだから」


 玄関の鍵を開けてから、俺は家の中に入った。篤志が付いてくるから、菜都美の荷物を篤志からもらって玄関に置いた。

「ちゃんと認めてもらってくる」

「うん」


 俺は菜都美の手を握って、バイバイをする。

 篤志は、一歩近づいてきて、俺と菜都美を抱きしめた。

「おやすみ」と俺が言うと、篤志も「おやすみ」と告げた。

 篤志が玄関から出てから、玄関の鍵を閉めた。


「菜都美、今夜はあっちゃんはお出かけだよ」

「んぱんぱんぱんぱ、あー、あー、あー」

「そう、あっちゃんね」

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