幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

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 ミルクを飲んで、目を覚ました菜都美をお風呂に入れる。

 篤志がベビーバスにお湯を入れてくれた。

 温度は38度だ。

 病院で教わったように、ガーゼのハンカチを胸の上に載せて、ゆっくりお湯に沈ませていく。

 菜都美はビックリしたのか、手をばたばたさせて、赤ちゃんらしく泣いた。

 手の上にガーゼを載せると、ガーゼを握って泣き止んだ。

 お湯が気持ちいいのか、口を尖らせて、ゆったり湯に浸かっている。


「めっちゃ気持ちよさそうだな」と篤志が言う。

「本当にな」


 早めに顔を洗い、頭を洗い、身体も洗っていく。

 汚れがちなお尻も洗って、湯から上げると、菜都美を篤志に手渡す。

 篤志は手早く身体を拭って、紙おむつをしてベビー服を着せていく。

 その間に、ベビーバスを洗って片付けていく。

 なんとかできた。初赤ちゃんのお風呂体験。

 お風呂から出て行くと、篤志は髪を柔らかな赤ちゃん専用の櫛で梳かしていた。

 気持ちがいいのか、泣いてはいない。

 その間に、ミルクを作って、篤志から菜都美をもらう。


「なんとかなったな?」

「あっちゃんがいたからできたんだよ?」

「いや、真は立派な母親の顔になっていた」

「え、俺が母親なの?」


 新生児のミルクの量は、まだ少ない。

 菜都美はミルクを飲みながら、うつらうつらしている。


「それにしても、可愛いな」

「俺が父親になるぞ」と篤志が言う。


 戸籍上では、俺が父親だけれど、篤志が父親役で俺が母親役になりそうだ。

 飲み終えた哺乳瓶は、篤志が片付けてくれる。

 その間に、菜都美の背中をさすると可愛いゲップが出た。

 菜都美は眠っている。

 そっと立つと、ベビーラックに寝かす。

 篤志が戻ってきて、俺の手を握る。

 恋人繋ぎで手を繋がれるときは、キスの合図。

 唇に触れた。何度か触れるだけのキスを繰り返すと、篤志の舌が俺の舌と絡まる。

 篤志とは二年ぶりだ。

 卒業式の後、自宅マンションで久しぶりに抱き合ってみたが、ずっとしてなかったので、篤志の分身を受け入れることはできなかった。それは、俺が篤志だけしか愛していなかったという証でもある。

 男同士は、肛門で結ばれる。

 定期的に結ばれていれば、そこは柔らかくなってくるが、初めてや時間をおいた場合には、柔らかくはない。

 結ばれるのに、ローションなどで、柔らかくしてからしか結ばれる事はできない。

 勿論、相手の身体の負担を考えず、強引に進めれば、結ばれる事はできるが、傷を負ってしまうかもしれない。

 篤志は、強引ではなく、初めての時、時間を掛けて、結ばれる身体になるまで待ってくれた。

 でも、離れていた時間が長すぎて、元の身体に戻っている。
もどかしい。早く篤志の熱い分身が欲しい。

 キスも好きだけれど、身体で結ばれたい。

 互いに洋服を脱がせあって、見つめ合う。


「真が欲しい」

「あっちゃんに抱かれたい」


 二人で風呂場に入って、ボディーソープで洗い合う。

 篤志の指が、俺の肛門の周りをマッサージして、指が入ってきた。


「はぁ」

「真のここ、もう俺の事忘れているみたい」

「少しくらい痛くてもいいから、俺の中に来てよ」

「裂けてしまうかもしれないよ」

「いいよ」

「駄目だ、俺は一度だけ抱きたいわけじゃないから、しっかりほぐそう」

「ありがとう」


 篤志は優しい。

 俺の尻に、指が二本入って、ローションで広げている。

 性器でない場所ではないから、最初は気持ちがいいわけではない。

 少しずつ、指が入ってきて、前立腺の裏を擦られると、俺の性器が起ちあがってくる。


「真、イケよ」

「我慢ができない」


 俺はイった。

 ずっと自慰もしていなかったので、濃くて大量な精液が出た。


「はあ、気持ちいい」

「ずっと溜め込んでいたのか?」

「自分でしても、もうイケないから、するのを止めていたんだ」

「俺は真の身体を思い出しながら、自慰はしていたな。でも、真の中じゃないから、気持ちよさは半分以下だ」

「寂しかった?」

「真こそ寂しかったか?」

「寂しかった。寂しかったから、研究に集中していた。ずっとマンションに戻らず、大学で暮らしていた」

「大学の主か?」


 篤志は笑って、俺の肛門に三本の指を入れた。

 さすがに痛いし苦しい。


「辛いか?」

「平気」だと嘘をついた。

 最初に結ばれたときは、弄くるばかりで、なかなか篤志はくれなかったから。


 もう結ばれたいのだ。


「嘘だな?腕も足も震えている」

「それでも」

 それでも欲しい。

 篤志の熱い分身が恋しい。


「分かっている。菜都美が泣くのが早いか、ほぐすのが早いかだな?」

「もう、来て、待てない」

「俺も真が欲しい」


 指が抜けて、その代わりに、勃起した篤志の熱が徐々に体内に入ってくる。

 初めての時のように、身体が半分に裂けてしまいそうだ。

「痛いのだろう?」

 俺は頷いたけど、「来て」と願った。

 篤志はローションを垂らして、ゆっくり入ってくる。


「はぁ、あっちゃんが欲しい」

「俺は、もう真のものだ」


 篤志も苦しそうに、答えた。

 俺は風呂場の壁にしがみつき、篤志は俺の腰を持って、腰を引っ張る。

 尻を突き出したような姿でいる。

 篤志の手が、俺の勃起したペニスを握って刺激を与えてくる。

 急に気持ちよくて、身体から力が抜けてくる。

 その隙に篤志の熱が、一気に奥まで入ってきた。

 篤志のペニスは、俺のよりサイズが大きいから、身体の中心が篤志の物で半分になってしまうような感じがするが半分にはなっていない。

 二年ぶりに篤志と結ばれて、俺は幸せだと思った。

 篤志はモテる。

 小学生の時も中学生の時も高校生の時も大学生の時も、ラブレターをいっぱいもらっていたし、バレンタインの時などは、女の子に囲まれていた。

 だけど、篤志はバレンタインのチョコもラブレターももらった事はなかった。

 学校で呼び出されていたときも、断っていた。


『好きな人がいるから、ごめん』と・・・。


 俺は篤志の好きな人に、ずっと嫉妬していた。

 篤志の好きな人が俺だと知ったのは、大学に入ってからだった。

 ファーストキスも俺も篤志も一緒だ。

 大学に泊まり学会に出す研究をしていた時に、初めて『好きだ』と言われた。

 鈍感な俺は、そんなに研究が好きなのかと思って、『俺も、このロボット好きだ』と答えたのを覚えている。

 落胆した篤志の顔は今でも、鮮明に覚えている。

 篤志の本命が俺だと、きちんと伝えられ、俺は勘違いの返答を返した自分自身に呆れた。

 俺は小学校時代から篤志が好きだったから、やっと両思いになれた事が嬉しくて仕方がなかった。

 男女とか関係なく、篤志という人格が好きだった。

 それが恋とか愛かもと思ったのは、中学から高校生時代だった。

 でも、俺はずっと自分の気持ちを隠していた。

 親友という立場は、何よりも尊いと信じていたから。

 その関係を壊してまで、カミングアウトする勇気は、俺にはなかった。

 両思いになっても、親友の関係は続いている。

 一緒に研究して、レポートを書いて、大学時代はとても充実していた。

 手に触れたら、キスをしたいの合図。

 腰に触れたら、セックスがしたいの合図。

 互いに決めたわけではないけれど、なんとなく決まっていった。

 大学の仮眠室で、初めて結ばれた。

 結ばれるまでに、時間がかかって、俺が少し強引に篤志を迎えた。

 篤志はとても優しく抱くから、少しでも痛そうな顔を見せたら、途中で終えてしまう。

 俺はモヤモヤが残るし、篤志と結ばれたい欲求が強くて、もう待てないと思ったから。

 大学の空き教室。実験室。仮眠室。いろんな場所で結ばれていた。

 けれど、篤志は俺より二つも年上だから、先に卒業していく。

 どんなに追いかけても、この年齢差は埋められない。

 でも、俺は追いかけ続けた。

 就職先を決める時期に、篤志から『来いよ』と連絡が来たときは、凄く嬉しかった。

 篤志の熱を体内にいっぱい受け止めて、一緒にシャワーを浴びて、菜都美を連れてダイニングルームに移動する。

 今はまだ新生児だから、よく眠ってくれるけれど、これから夜泣きや甘えが出てきて、抱き合える時間も少なくなるかもしれない。

 それでも、篤志と暮らせるなら、きっと大丈夫だと思う。


「今日は弁当だが、家事は俺がするから」と篤志が言う。

「俺も手伝うし、頑張るよ」と俺も言った。


 新入社員とカナダから戻って来たばかりの篤志。

 きっと篤志も環境に慣れるのに大変だと思う。

 篤志に推薦してもらった義理も果たさなくては。

 俺は篤志が温めてくれたお弁当を食べながら、頑張ろうと思っていた。

 育児と仕事。

 世のお母さんはしている事だ。

 俺にもできるはずだ。

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